第29話 初めてのお家焼肉
今日の夕飯は焼肉にした。調理する手間はないから焼きながら3人でわいわい食べつつもりなのだが…多分僕が奉行をやる事になるだろう。二人が喧嘩しないように各々に焼肉用プレートを用意して、肉も1人分ずつ分けておいたほうがいいか…。
本当なら僕が焼いていって、配っても良いけど面倒臭いしな。それに僕も食べたい。肉の焼ける匂いと音を聞き続けながらお預け状態なんて我慢できない。口だけは出すけど各々で焼いてもらおう。そのためにプレートを1人ずつ計3つも買ったのだから。
「という訳で今日の夕飯は自分で焼いてもらいます。」
ぶーぶーと不満の声があちらこちらから聞こえるがそれを無視して説明を始める。聞こえなかったら置いていくぞ! 自己責任だ。
「まずはこのペラペラな肉は牛タンといいますけど、これを焼きます。」
ジューッッ、肉が焼ける音! そそるーーーー。3枚ぐらいプレートにおいてじっくりサウンドに聞き入る。
二人もそれに習って牛タンを焼き始める。僕が説明しだしたので一言一句聞き逃すまいと真剣に聞いて見よう見まねで焼いている。
「オモテ面がこれぐらい焼けたら裏も焼いてください。多少縮れますけど。」
牛タンは分厚いのも旨いのだけど、僕は断然に薄切り派だ。薄すぎて物足りなく感じるかもしれないが、やっぱり食べやすいし何枚でも食べれちゃうよね。
両面焼きあがったら別に用意していたネギ塩を乗せて少しレモンを絞って食べる。うま! 味も旨いが噛み応えというか触感も良いよね。さすが焼肉人気No.1の実力者だ!
二人もうまうま言ってる。最初は舌なんて薄気味悪いもの食べるのか…とか文句言ってたのにね。めちゃめちゃ気に入ったみたいだ。異世界人には不思議な触感みたいだ。この二人ならもっと満足感のある分厚い牛タンの方が良いかもしんないな。次は用意してあげようかな。
牛タンはあっという間に無くなってしまった。美味しいんだけど高いのがな…今回は500gで4000円の牛タンを買ったが…しょうがない。二人も全然足りない、もっと食べたいとブーイングが出たが僕だって物足りないが、まだ美味しい肉を用意しているから次の説明をしよう。
「次は牛ハラミです。ちょっと分厚めなので、よく焼いてくださいね。」
ジュージュッッ、肉が焼ける音! そそるーーーー。
プレート全部に隙間なく焼けるだけ焼く。待つ、焼く、待つ、オレ、ニクヤケルマデ、マツ。なぜかカタコトになっちゃうアルヨ。
「このぐらい焼けたら、この小皿にあるタレをつけて食べてください。」
僕の好きな焼肉のタレはエ○ラ ゴールデンのタレだ。中辛が好きだな。甘口も野菜や果物の甘みを感じられて好きだけど最終的には中辛だな。
ハラミをタレに付けて食べる。うまっ! 油は少なめだが肉の味がしっかりしていて食べやすい。何個でも食えるなこれは。1kg3000円で買ったからまあまあ食えるでしょ。
「うまいいいい。小さい肉を食べてるだけなのにうまっ!」
「この液体…タレもうますぎだぞ! この液体だけでも飲めるぞ! 絶対麻薬的な物が入っているだろう!」
二人にも大好評なのだが…カミラさんは旨いものすべてに麻薬的な成分が入ってると思っている節がある。認めろ! 認めるんだ!
1kgの牛ハラミもすぐに無くなってしまった。まあ僕は200g食べたけど二人は400gずつぐらいだから少なかったかな。
だが安心してほしい! 締めはみんな大好きカルビなのだ! 今日は3.5kg購入したぜ! 豪州産で7000円ぐらい。僕が500gで二人には1.5kgずつだ。これだけあれば満足してくれるだろう。
「これはもう焼きまくってください。さっきと同じくらい満遍なく焼いてくださいね。タレもひきつづき中辛で食べてください。」
うおっ、さっきの牛ハラミとは比べものにならないぐらい煙が充満している。やば、窓を全開にして逃がしてはいるけど…大丈夫かな? 火事だと間違われて通報されないか心配になるぐらい煙が…。
そんな心配を他所に焼きあがったカルビにタレをしっかりと付けて食べる。
うまい! こってりとした脂身が体に悪いとはわかっていても暴力的なうまさだ! 柔らかい肉味と噛んだ時の肉汁がああああ、う〜〜〜んご飯とのコンボが止まらない! めちゃめちゃご飯との相性抜群だ!
そのカルビの肉汁と焼肉のタレがからんだご飯がまた旨いんだ! このご飯だけ売ってても買うな僕は…ごめんやっぱりカルビの肉も無いと買わないわ。
二人も夢中だ。夢の中の出来事のように無心に食べ続けている。二人にもご飯の旨さ、万能さに気づいてくれたようで日本人としては嬉しい限りだ。異世界ではお米が無いらしい。厳密にはあるかもしれないが今までの二人の知識にはなかったようだ。
僕はやっぱり脂身が多くてくどいのもあって500g食べたところでギブアップだ。でもものすごく堪能した。大満足だ。僕は箸を置いて二人を見やる。
ガツガツ焼きながら無心に食べている。無心と言っても幸せそうな顔して食べている。見ているこっちも嬉しくなるな。まあ、口元は肉汁の油とかタレでベタベタなんですけど。美男美女がベタベタなんですけど…。
僕のプレートでも二人の肉を焼いてあげて、焼きあがったのから二人の皿にいれてあげてる。肉1.5kgってすごい量だよ、よくこんな量がお腹に入るな…。でも異世界での焼肉ぐらいあるんじゃ無いかと思って聞いてみた。
「こんなに肉の部位を細々(こまごま)と分けたり小さく切ったりしないぞ。どーんと肉の塊で調理している。」
「そうだぞ、我はステーキとして分厚い肉しか食べた事がないぞ。」
一般市民も肉は適当に切り分けてごちゃまぜらしいので、切り分けた場所で味が違うなんて思わなかったそうだ。まあ、肉屋の人は知ってるんじゃ無いかなと思うけどな。
「この焼肉ぐらいなら異世界でも食べられるんじゃないですか? 調理法は焼くだけですし、部位は…食べられる動物、魔物によると思いますけど調べてみては? 一応こちらの動物の部位がどの場所にあるかだけは教えますので。焼肉のタレは制限がかかるかもしれないですから何とも言えないですけどね。」
僕がそう伝えると二人は検討しだした。異世界のあの魔物がいけるんじゃないかとか、知り合いの解体者に頼んでみるとか。副官のフィアに丸投げだとか…。
そうしてわいわい話し合っているうちに二人の肉もすべて消費され、初めてのお家焼肉は大好評まま終わりを迎えたのであった。




