第21話 あっさり黒幕
「グライツ将軍準備が整いました。」
「うむ、それでは各自持ち場で待機し合図を待つがよい。この革命こそが我ら王国の正義だと皆に伝えよ。」
「はっ、失礼します。」
部下が退室するのを見送り、窓から見える王の住居である御殿へと目をやる。
長い時間をかけ実行した王都魔物襲撃計画。密かに魔物を集め、王都を瞬時に四方から取り囲み逃げ場を塞いだ。外部からの供給を断ってじわじわと物資を干上がらせ、王都中の人間達を疑心暗鬼にして恐怖の渦に叩き落とす予定だったのに…まさかの計画に支障が出ることになった。
昨日、王都を取り囲んだ一万匹以上の魔物の群れが一瞬にして広域魔法、それもかなり高度な魔法術式により瞬殺されてしまった。あっという間の出来事に、人族はもちろん我もあっけにとられてしまった。
恐怖にすくみ上った後にすぐに捜索したが何の手がかりも得られず仕舞いだった。人の成した事なのか、それともそれより上位の存在の仕業なのか…わからぬまま。
しかし長年進めてきた計画を中止する事はできん。今日プラン2の実力行使による武力制圧にて王城を乗っ取り、我が権力を手にし、じわじわと国を内側から支配して我々魔族が乗っ取る計画だ。
我が乗り移っておるこのグライツ将軍の異変に気付いた唯一の存在、第一王女レイラは王城を乗っ取った後にたっぷり可愛がってやろう。散々弄んでやったら国民の不満を逸らすための道具として始末をしてやればよい、ふふふふ。
「昨日は想定外の邪魔が入ったが、王国の…人族の抹殺という結果は変わらぬ。魔王様に我ら魔族の勝利を美酒と共に捧げようぞ、ぐわはははははは。」
我がこの先の展望に心を躍らせ高笑いした絶頂時にそいつらは現れた。
「ほれ、コイツが黒幕で間違いないだろう?」
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僕は王女を背中に担いだまま黒幕を退治しに行く事になった。手がかりはゼロかと思われたが、王女様を気絶させる前に「グライツ将軍」と名前が出たので、あっこれはフリだなと思って探しに行く事にした。
どうやって将軍を探しに行こうかと思ったら、カミラさんが
「めっちゃ邪悪な雰囲気があそこの塔から出まくってるから、辿っていけばすぐ分かるぞ! 我すごいだろ!」
とドヤ顔してきたのでスナメリのような顔をしておいたよ。あのイルカみたいなの、わからない人は検索してみてね。
レインさんも
「そうだな、こっちにでかい邪悪な塊があるからそっちに行ってみようぜ。」
どうやら勇者も邪悪な気配を読めるようだ。すごいな…必須科目なのか? 異世界の…
僕も負けじと
「こっちからものすごい加齢臭がするよ!」
と言ってみたがそっちにはいないと即否定されて二人についていく事になった。確かにこっちに加齢臭の臭いがしたのにな…
ということで来ました、立派な部屋の前に。もちろん僕たちは隠蔽されているので誰にも見えていません。すると部屋の中から高笑いが聞こえてくるではありませんか。
高笑い=悪役と相場は決まっているので当たりですかね。後は静かに部屋の中に入り高笑い中のおっさんを観察してみよう。
そうしたらおっさんがいきなり…
「昨日は想定外の邪魔が入ったが、王国の…人族の抹殺という結果は変わらぬ。魔王様に我ら魔族の勝利を美酒と共に捧げようぞ、ぐわはははははは。」
と、誰もいないのにでっかい独り言で自分は魔族と暴露したのです。何で一人の時に声に出して言うのか、小一時間ほど説教してやりたいところですがカミラさんが、
「ほれ、コイツが黒幕で間違いないだろう?」
「そうだな、じゃあちゃっちゃと片付けますか。」
レインさんが剣を手におっさんに近寄りました。もちろんカミラさんが声を出した時点で僕たちの隠蔽魔法は解けておっさんに認識されています。めっちゃ驚いた顔してますけど。
「だ、誰だお前達は? いつの間に…気配などなかったのに。」
「はいはい、そういうのはいいから殺すよ。」
レインさんがものすんごい軽い感じでいなす。もうちょっと理由を聞いたり、今どんな気持ちなのかとかのやり取りがあってもいいんじゃないかな? レインさんが軽〜い感じで剣を振り下ろそうとしたら…
「ちょ、ちょっと待ってください。グライツ将軍を殺さないでください。」
僕の背中におぶられているレイラ王女が目を覚まし、レインさんを制止した。
「殺さないでくれって…グライツ将軍意識乗っ取られてるから、まとめて殺した方が手っ取り早くね?」
「し、しかし乗っ取られる前のグライツ将軍は善良な忠臣だったのです。とてもこのような狼藉を働くような者ではなかったのです。どうかお願いします。」
そう言ってレイラ王女は懇願する。
「この世界の事は分からんが、我達の知るところではない。ただ黒幕を滅するのみだ。」
カミラさんがそう言うとレイラ王女はうなだれた。
「でえええええいいいい。」
奇声が聞こえたと思ったらレインさんに黒い霧のようなものが降りかかった。黒い膜がレインさんを包み込む。
「人間ごときが甘くみおおって、我が貴様達のような虫けらにやられるわけがなかろうが! こうなってはレイラ王女にはここで死んでもうしかないな。まあ、多少早まっただけだ悪く思うなよ。」
「殺そうとしておいて、悪く思うなよって頭悪くない?」
「ユウタ…頭悪くないって? 悪すぎるだろ顔も。もっと悪役ぽい気の利いた台詞はないのか?」
カミラさんも僕の意見に同意してくれたようだ。
「仲間がやられておるのに余裕だな、ガキとくそ女もその黒魔法にかかった男と一緒に苦しむがよい! でえええええい。」
魔族のおっさんが僕とカミラさんに先ほどの黒い霧を噴射した。その霧が僕とカミラさんに覆いかぶさらんと襲い掛かる…寸前に
ピシュアアアアアンンンンーーーーーーー
一筋の閃光が走ったかと思ったら黒い霧は一瞬で霧散した。
「で、結局なんだったんだよこの黒いの。何でもないんだけど。」
レインさんが無傷でしれっと現れた。
「な、なに我の黒魔法をそんなにあっさり…ば、馬鹿な一度覆われれば意識を失い、体が溶け出して苦痛で死に至らしめるというのに…」
魔族のおっさんめっちゃ動揺してるんだけど…まあ入った時から格が違うかなって思ってた。ズブの素人でも魔族のおっさん格下に見えたもん、二人に比べたら。
「はい、じゃああんまり長いこと待たしちゃったら悪いんでサクッとトドメを刺すから動かないで。動くと余計に苦しむ事になるからね。」
…レインさん頼りになるんだが、この軽さが逆に怖いな。
「ま、待て! この体はその小娘が言う通りグライツ将軍を借りているだけなのだぞ。いいのかこんな王国の見本のような善良な者を殺すなんて! ただ魔が差して魔族に取り憑かれているだけで、この者自身には罪はないのだぞ。この人殺し!」
「…自分で言う? ってかそんなに言うならグライツ将軍の体から出て行ってあげればいいんじゃないの?」
「で、出て行ったら殺すだろ? それに一度繋がった者は切り離せないの…ぐぎゃあああああ。」
魔族がしゃべっている途中でレインさんは刀でグライツ将軍を切りつけた。すると絶叫と共にグライツ将軍の体から黒い霧が湧き出てたと思ったらすぐに消滅した。
「魔剣夜霧だ。物理的なダメージを負わさずに霊的な存在だけを消滅させる一撃必殺の剣だ。グライツ将軍とやらはしばらくしたら目を覚ますだろう。これでいいんだろうお姫さん?」
「はい、ありがとうございました。ぽっ」
お姫様はレインに照れながらお礼を言った。そして自らの口から惚れた効果音を言っちゃってますやん…
…何か納得いかないな。姫様をここまでおぶってきたの僕なのに…最後にレインさんが姫様の心まで奪っていったかのようなキメセリフ…何か納得いかないな。
こう僕の胸の中に先ほどの魔族の黒いモヤモヤの霧のようなものが湧いて出てきている感じだ。今奇声を発したら僕にも黒魔法が出るんじゃね? というぐらいどす黒いもやもやとした感情が渦巻く。などとしょうもない事を考えていたら
“ピロ〜ン”
“mission3 clear おめでとうございます。報酬としてカミラさんに40000円、レオンさん40000円、ユウタさんに10000円を進呈。10秒後に部屋へ帰還します。”
と告げられた。こうして1日で2つのmissionをこなした僕たちは事後処理を全部丸投げをして僕の部屋へと戻っていったのであった。その後フリス王都がどうなったかは僕たちには知る由もなかった。




