第15話 それぞれの日常③
今日は金曜日だ。久しぶりに放課後友人と遊びに行く事にした。友人というのはフィギュアオタクの田中コウジの事だが…イケメン橘タケシは部活が忙しくていけないのだ。
コウジと遊びに行くのも久しぶりだ。いつものようにリサイクル店やおもちゃ屋を回ってフィギュアを物色、そしてゲームセンターのフィギュアのプライズ品を物色。すべてフィギュアづくしなのだ。
まあ見る分なら僕も楽しいからいいんだけど…何が尊くて何が尊く無いのかは全くわからないのだが、結局は自分が良いと思ったものを購入するのみなのだ。とか何とか色々と熱く語られたが、全然胸にピンとはこなかった。
散々コウジの趣味に付き合った後、久しぶりのファーストフード店でハンバーガーを貪った。油で揚げたポテトなんぞ体に悪いとは解ってはいるのだけれど体に悪いものほど体が欲するのはどゆこと? 17歳の身にはどんなに体に悪くとも、我慢できないほど欲するのだ、欲望には抗えないだ。ビッグハンバーガーにポテトはサイズはLLで食す。うまし!
久しぶりの夕食をファーストフードで済ませ、少しだけ誘われてコウジの部屋へとあがる。コレクションを自慢したいからだろう。こんなフィギュアを高校生のお前が買えるの? というような際どい18禁フィギュアも数知れず。嫌がる振りをしながらもじっくり観察させてもらった。目の保養にはなったな…サンキュ!
心なしか帰り際にすれ違ったコウジの妹が俺を目を細めて軽蔑の眼差しで見送った。いや、俺は同類ではないぞ! お前の兄とは違うぞ! などとこころの中で反論したが目の保養にはなったな…サンキュ!
散々遊び倒して帰宅してすぐに冷蔵庫を確認すると…昨日購入しておいたシュークリーム10個とプリン10個がなくなっていた。
部屋に入るとシュークリームの包装とプリンの空容器が散乱していた。
はああああああああ
泥棒が入った後か! もし事情を知らないコウジを僕の家に上げていたら警察に届けを出している事だろう。というぐらい散らかして行きやがって。
よし、明日のシュークリームにからしを入れておいてやろう。冷蔵庫の冷やした麦茶の代わりにそうめん用のだし汁を入れておいてやる。
散らかしっぱなしで帰った二人にトラップを仕掛ける事を決意して、しぶしぶ散らかった部屋を片付ける僕であった。
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俺の日常はシンプルだ。国に対して急を要する案件がない限りは自由に過ごしてもいい。とはいえ冒険者ギルドに属しているのでそれなりに忙しい。パーティーを組んではいるが、常にみんなと一緒というわけでもない。各々忙しいからだ。だから今日は1人で近くの村に現れたという魔物退治に来ている。
依頼料はSランクの俺には微々たるものだが、上に立つものにはそれなりの責務もともなってくるので採算は度外視でやらさせてもらっています。偉くなっても謙虚な心を持ち続けないとな。
依頼は村のすぐ近くの森の中にゴブリンが巣を作ったとの報告で日帰りでサクッと巣を潰してきた。もちろん戦闘シーンや村人との交流などの細々した事はカットだ。特にめぼしいエピソードなどないからな。サクッと潰したので村人たちの驚きようや歓迎ぶりもすごかったが、これもいつもの事なので割愛する。
普通の冒険者たちならそのまま村で歓待を受けて帰宅のところを、俺はサクッと潰したので日帰りだ。普通なら2〜4日間の案件だな。俺はサクッと潰したので日帰りだけど。
…しつこい?
王都に戻った時には日が暮れていたので、適当な酒場で食事をしてエールで喉を潤す。今日はユウタの食事がないからしょうがないな。こんな…と言ったら失礼だがこんな味気ない食事で腹を満たす事が非常に残念に思ってしまう。
全くいつから俺はそんな贅沢な舌になっちまったんだ。勇者に選ばれて驕り高ぶっているんじゃないか。そんな自問自答を繰り返した事もあるが…答えの出ない事をいつまでも考え続ける事は何の生産性のない無駄な事だ。
そう思い直し最近では開き直って美味しいものを食べてもいいじゃないか! それが毎日頑張っている俺の特権だ! と思うようにしている。その特権を得る代わりに俺の力の範囲でやれる事はやるという形で還元しているつもりだ。それが報酬の低い魔物討伐とかあまり人が受けたがらない依頼をこなすという結論にも繋がっている。
酒場で腹を満たし、自分の部屋で黄金のカードを胸にかざした。
“ピピピッ♪”
という音と共にカードが淡く光った。
オープンと唱えるとカードには残高が表示された。93000円。
昨日から33000円増えている。今日の仕事はゴブリンの巣を潰しただけだからそのぐらいか…まだ試行錯誤しないと何をしたらいくら増えるとか予測がつかないな…ま、なんにせよ33000円も入ったのだ。これだけあれば2〜3回はユウタの食事を味わえるなとほくそ笑んだ。
今日ユウタの食事が無いのは残念だけど、努力で勝ち取ったデザートは食べて良いとの事なので、今から食べに行くかと急いで扉までスキップしていくのであった。
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我は魔王だ。魔国アルメロ国では一番偉いのだ。魔国は実力主義でもあるので一番偉いというのは一番強いと同義語であるのだ。だから我の1日の仕事というのは…
特にない。
えっいつも何をしてるのかって? 特に何もしていない。だって我を必要とするとのは緊急時だけなのだ。我が手を出さなければならないという事なぞめったにないのだ。
我の強さが周知されているので、我に挑んでくるバカも最近は少なっている。というかほとんどないのだ。だから我の1日の仕事というのは…
特にない。
だが、昨日黄金のカードをもらったからには仕事をしないといけない。仕事をしなければユウタのご飯が食べられなくなってしまうのだ。残高が無くなればユウタの部屋への扉が閉ざされてしまうのだ。それだけはいかん。あの至高の料理の数々が食べられなくなってしまう事態だけは避けなければ…。
そういう思いで我の副官フィアに仕事がないか尋ねたのだが…
「は? 魔王様が仕事をなさりたいという事ですか? カミラ様が? は?」
…なんだろう、そこはかとなくバカにされているような気分なんだけど…。
「そうだ、何か我に手伝えることはないか? ん? 何でもいいぞ。」
「…魔王様に任せられるような力仕事は今のところございませんね。」
「いや、頭を使う仕事でもいけるぞ、政務的な仕事でもできるぞ!」
「…前の惨事をお忘れか! 二度と魔王様には頼むまいというのが政務官就任時に言われる引継ぎ事項にもありますので、魔王様には頑としてお断りします。NO MORE 魔王です。」
…それ、本人の目の前で言っちゃダメなやつじゃない? 本当に我の副官なの? 敵じゃないの?
とりあえず頑として断られたので今日はおとなしく引き下がり寝室のベッドに戻り泣いた。そして泣き疲れそのまま寝てしまい、今日も無駄な1日を過ごした。
その後夕食時に起こされ腹を満たし、自分の部屋で黄金のカードを胸にかざした。
“ピピピッ♪”
という音と共にカードが淡く光った。
オープンと唱えるとカードには残高が表示された。60450円。
…昨日から450円増えている。ていうか450円って何の仕事? 今日は結局1日中寝てたのに? 逆に考えるのだ、寝ているだけで450円もらえるという事は…いや全然食べられないじゃん。このままだと私は23日に1回しかユウタのご飯たべられないじゃん。
どうしよう…。
あれからどんなに悩みに悩んでも結論はでなかったので、しょうがないのでユウタの部屋へと行く事にした。料理は食べられないが冷蔵庫にデザートを用意してくれているのでとりあずそれを食べてから悩むとするか。我は一度寝室から出てもう一度扉をあけてユウタの部屋へと急ぐ。




