第112話 いつもの日常に…
「にゃ〜っ」
はっ!
…あれ? 何をしてる途中だったけ? 確か…マルス村を発展させるために菜種油を作ったんだけど…食材がないし深夜で遅いから明日改めて村長にデモンストレーションに出かけるとして、
僕の部屋に戻ってきたんだったけ?
行動中にいきなりド忘れしちゃう事あるよね? あれ、何やってるんだったけ?って…老いも若きも関係ないと思うけど。
そんな事を考えている時も、黒猫のクロちゃんは僕の足回りをうろちょろしていた。
「ん、クロちゃんお腹空いたのか? ミルク飲む?」
そう、子供に話しかけるような口調でクロちゃんに話しかけたら…
「我もお腹が空いたのだ〜何か食べるぞ!」
「俺もだ。ユウタ何か作ってくれ!」
「うわっ! 二人ともいたんですか! びっくりするじゃないですか。」
猫に話しかけたのを見られたのが恥ずかしいのと、いつもなら二人が居ない時間だったのでびっくりした。
「どうしたんですか? こんな時間に二人が揃うのも珍しいですね。」
二人は一度見合ってからこちらを見てニヨニヨしている…何か気持ち悪いな。
「…二人とも何ですかそのニヨニヨした顔は。気持ち悪いんで止めてもらっていいですか。」
「まあ、そう言うなよユウタ…ニヨニヨ。」
「久しぶりにユウタのご飯が食べたいぞ! 出してくれ今すぐ…ニヨニヨ!」
僕の嫌そうな顔もなんのその、ニヨニヨと口にしなが要求した。
「久しぶりって…今日の夕飯に焼きそばをてんこ盛りのたらふく食べたばかりじゃないですか! どんだけ食べるんですか。」
「いや、それはもう15日前ぐらい…ふっがが」
「ばか、魔王のばか。しっ!」
…何かじゃれ合う二人をみてイラっとした。嫉妬とかでは全然なくて、なんか僕が置いてけ堀りにされたように感じてイラっとしたので怒りながら言った。
「わかりました。こんな時間ですから簡単にできる冷凍うどんだけなら出しますよ、プンプン!」
今時さとう珠緒でさえ言わなくなったプンプンを言っておいた。
そして夕飯の焼きそばを出した後のうどん! 麺類に麺類をかぶせてやったぜ。ぐへへへ。まぁ作るのが簡単だからなんですけどね。
自分は冷凍うどんをチンして生卵にしょうゆを垂らして二人に出した。
ずぞぞぞぞぞ〜〜〜
ずぞぞぞぞぞ〜〜〜
「「おかわり」」
いや、一瞬! 一息で飲み込まないで!
「あまり急いで食べると消化に悪いので、もっと味わって食べてくださいよ。っていうかもう遅いのであと2杯ずつですからね。」
はーいと子供のような返事をしながらニヨニヨして僕を見ている。
…一体なんなんだ? まさか僕の背中にバカという張り紙が貼ってあるのかと思い素早く振り向いたり、おでこに肉と書かれていないか鏡で確認したりした。
…だんだん人間不信になってくるわ。食べ終わった後に聞いてみた。
「で、何で僕を見てニヨニヨしてるんですか? いくら僕がアイドル顔負けのイケメン&ルックスの持ち主だからといって、妬みで裸にひんむいて荒縄で縛ってやろうなんて考えているんじゃないでしょうね?」
「いや、すごい被害妄想…あと縄で縛る趣味はない。」
「お前わ我らを何だと思っているのか、逆に小一時間ユウタを問い詰めたいぞ。」
こんな調子で、夜遅いのにみんなとわいわい楽しくおしゃべりをした。それなのにふいに僕の頬を涙が伝った…
「あれ? えっえええ何で?」
おかしいな。楽しいはずなのに涙が出るなんて。
「ちょっと待ってください。これは…違うんです。楽しいはずなのに、ふと楽しいな…と思っただけなのに涙が…えええええ?」
僕が唐突に泣き出した事で、どうせ二人は僕を見てニヨニヨしてからかってくるんだろうと身構えて言い訳をしたのだが…
「ユウタ…」
そう言ってカミラさんは僕をハグしてくれた。急な出来事にドギマギしてしまった。
「お前の魂がちょっと長めの旅をしていたのだ。心と体が繋がって安定した事による安心感が体に現れただけだろう。なに、恥ずかしい事ではないぞ。」
僕はちょっと何言っているか分からなかったのだが、頷いておいた。そう言ったカミラさんはレインさんと替わって、レインさんも僕にハグしてくれた。
「お前と同じように俺たちもお前の事を思っている。俺たちは言うなれば盟友だな。」
僕の目の前でレインさんはイケメンスマイルでニカッと笑う。
…惚れてまうやろ〜〜〜〜。男だっていい! このがっちりとした逞しい肉体に抱きしめられてこの笑顔、男の僕でも惚れて…まわない!
そんなケはないんで。
とりあえずレインさんにはごめんないと謝っておいた。
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あれからすぐにユウタはいきなり糸が切れたように寝てしまった。俺たちは心配して駆け寄ったが…
『心配しなくてもいいにゃ〜。今異世界から帰ってきたばかりで、心と体の微妙なズレが生じただけにゃ〜』
そういって黒猫がミルクを舐める。
「おいレイ、猫の依り代だからといってにゃーにゃー猫語を話さなくてもいいんじゃないか?」
確かに。魔王が黒猫を持ち上げて突っ込む。
『や、やめてにゃー。僕は男の子だからおちんちんを見られるのは恥ずかしいにゃ!』
そんなもん見るか! と言って魔王は猫を放り投げた。
俺はあっと思ったが。飛ばされた猫はありえない軌道を描いて床に着地した。黒い子猫に見えてやはり創造神だったようだ。
『ひどい事するにゃ、本当に猫だったらモザイクがかかるようなグロい惨状になるところだったにゃ。』
「だから猫語は止めろというのに、気持ち悪い。」
「いや、魔王よ。黒猫がそのまましゃべってた方が気持ち悪くないか? にゃーをつけた方が良くないか?」
俺はそう進言してみた。
『ほらにゃ、多数決でこれからも猫語を使うにゃ!』
「ぐぬぬぬぬぬ」
魔王は納得がいかないようだが、この不毛な争いは早々と終止符を打った方が良いと悟り、しぶしぶその提案に従ったようだ。
「じゃあ、こうしよう。いっその事、俺たちも猫語でしゃべ…あうち!」
魔王に思いっきり殴られた。いや、俺の趣味じゃないけど魔王の猫語を聞いてみたかったな〜と思って。あと、絶対にユウタこういうの好きだろうと思ったんだ! ユウタのためなんだ! なっ魔王! と説得してみた。
…………………
…………………
ダメでした。




