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第11話 お金がありません

「二人にご飯を作るのは今日が最後になりました。」

 そう言って僕は今日の夕飯のチキンライスのオムライスを食べまくっている二人に告げた。

 

 二人は揃ってきょとんとした顔で今までオムライスを一心不乱に頬張っていた口を止めた。


 僕の宣言がよく飲み込めていないようだ。ついでにオムライスも飲み込めていない…全然うまくないな。いや、チキンライスのオムライスはシンプルだけどケチャップの酸味が効いてうまいけどもね。…ややこしいな。


「ば?」

「だんて? ぎぎばぢがい?」


 状況が理解できていない二人は口にチキンライスを頬張ったまま聞き返すもんだから濁音が多い。あと飛び散ってきちゃない。


「二人にご飯を作るのは今日が最後になりました。」

 同じ事を二回一オクターブ上げて言ってみた。


 魔王と勇者は目を見開いてお互いアイコンタクトを取った後、目の前のオムライスをやっつけるが如く、がむしゃらに口に放り込み咀嚼の速度をあげた。ムシャムシャぐらいだったのがムシャシャシャシャーぐらいだ。

 そして僕も目の前のチキンライスオムライスをじっくり味わって咀嚼する。


 すると、初めに食べ終わったカミラさんが急いで飲み干したコップを机にドンと音を立てて振り下ろし、僕を問い詰めた

「なぜだ! なぜ今日で最後なんて言うのだ? 我は毎日この時間だけが楽しみで生きているのだぞ!」

「いや、そんな大げさな…前も言いましたけど魔王さんなら毎日こんな庶民のものより美味しいもの食べてるんじゃあ…。」


「大げさではない! 我は我はユウタの食事を食べるためならメルニーク王国に攻め込んで勇者の首を打ち取っても良いとでさえ思っているのだぞ! それぐらい楽しみにしているのだぞ!」


 ええええ〜その勇者はすぐそこにいますけど…目の前でオムライスを頬張っている人があなたが首を取ろうとしている本人なんですけど…本人を目の前に何言ってるのこの魔王さんは…レインさんもびっくりして固まってるし。


「わかった、我の身体か? 我のこのダイナマイトセクシーな身体が目当てなのだろう! まったく男というものは…わかった。脱ぐぞ、ユウタの前で脱いでやるからしかと焼き付けるのだ!」


 そういってカミラさんは椅子から立ち上がり上着に手をかけた。


 僕はそれをじっと見つめる…


 カミラさんの一挙手一投足を見逃すまいとアリーナ席でじっくりと見つめる…


 カミラさんは脱ごうとした仕草を途中で止めぷるぷるしている。たぶん初心うぶな僕が「カ、カミラさん何してるんですか、こ、こんなところで脱がないでくださいよ。止めてください。」「めるな! 我の身体が目当てなんだろう!」的なラブコメでありがちなドタバタを予想していたのだろう。そんな展開なぞくそくらえな僕はカミラさんを間近でじっと見つめる…


 カミラさんは羞恥心で、ぷるぷるとナイスバディを震わせていたが…

「うっうん、などと我が取り乱してはいかんな。ユウタ、理由をじっくり聞こうか?」

と服装を綺麗に整え、なかったことに尽力した。


 初心うぶだなカミラさん。128歳っと言っていたが初心うぶだな。

 男なれしていないのに擦れた感じをだそうとしている感じがひしひしと伝わって来る。耳年増か! しかし魔王であるカミラさんの照れた顔はめちゃめちゃカワイイかったので許す!


 …意外にSな僕?


 と、ここでカミラさんに遅れる事1分、食べ終わった勇者レインさんが飲み干したコップを机にドンと音を立てて振り下ろし僕に叫ぶ。


「ユウタ…やっぱりお前は…わかった俺が一肌脱ごう! 魔王、気に病む事はない! ユウタは男色だんしょくなんだ! ここは俺に任せろ!」

などと言い出し勇者は潔く自分のズボンをずりさげる。


「はい、ダウト!」

 僕は強制的に勇者を部屋から排除した。

 

 排除した勇者はすぐにベランダから戻ってきた…ズボンをさげたまま。早く履けよ、また送り返すぞコラ。


 もちろん男色ではない事を二人には何度も言い聞かせたよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「それでいったいどういう事なんだ? 理由を聞かせてくれよユウタ。」


 僕は改めてレインさんとカミラさんを前に説明する。

「実は…お恥ずかしい話なんですが、お金がないんです。」

「「は?」」


「二人が毎日毎日夕飯をたかってきて、その二人が思いのほか遠慮なしに食べまくるので、僕の生活費がとうとう尽きました。」

「「ぐさっ」」


「僕がお二人の分の食事を作らされるだけではななく、食材を購入するために身銭を切りまくって生活が困窮していたのです。まさに今3重苦なのです。」

「ぐさっぐさっぐさっ…何か、すまんかった。」

「それは二重苦じゃないのか? 残りの一重苦はどこに?」


 二人は全く予想していなかった僕の話に驚いて謝ってくれた。

「確かにそうだな、ユウタは平民だって言ってたし余裕があるわけじゃないよな。すまなかった。」

「では、ユウタはどうやってお金を得ているのだ? 自分は学生だろう?」


「訳あって両親と離れて暮らしていますが、月々仕送りをしてもらっています。」

「そうなのか。訳ありか…」

「我が良い事を思いついたぞ! 仕送りを増やしてもらえばいいのだ! 名案だろ?」

 …魔王さんや、そういうところだぞ! 残念なところはそういうところだぞ!


「いえ、これ以上増やしてもらう事はできません。何しろ訳ありなんで。」

「そうなのか。訳ありか…」

「えええええ何でだ〜〜名案だと思ったのに。」

 …魔王さんや、しつこいぞ! 名案どころか愚案すぎるぞ!


パ〜ン!

「よし! 俺に名案がある、ちょっと聞いてくれるか?」

 そう力強く手を打って宣言してくれた勇者レインさん。


 わざわざ立ち上がってポーズをつけてまで宣言してくれたのだから愚案じゃないことを祈るばかりです。しょうもない案だと、また強制送還しますよ。

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