第109話 帰還前のすり合わせ
「それで? これからの段取りは? もう決めているのだろう?」
あらかた聞き終わった魔王はレイにこれからの事を聞く。
「もちろん、異世界へ帰ってもらって今まで通りにミッションをクリアしてもらう事になる。」
「という事は…俺たちは今まで通りの生活に戻ればいいって事か?」
「ああそうだ。今まで通りユウタをサポートして欲しい。ミッションをクリアしてお金を稼いで、そのお金でユウタが作る地球の食事を存分に楽しむがよいぞシュー! ニヤニヤ。」
…バレてる。俺のシュークリーム好きが…思いっきり語尾にシュー付けてるし。今まで散々ユウタの部屋で食いまくってるの分かってて言ってるな…
「そうだ! お前創造神なんだから地球の料理を異世界で広めるのを、というか我の国だけでもいいから広めるのを許可してくれればこんなユウタにたかる真似をしなくてもいいのではないか? だから我の国だけでもぜひ頼む。」
「あっ、汚ねえぞ魔王! 何どさくさに紛れて自分の国だけ許可取ろうとしてるんだよ! 俺も、俺の国でも認めてくれよ!」
「そうだよなぁ…美味しいご飯をいつでもどこでも食べたいよな…だが断る!」
レイに断られた…魔王がグーで殴りかかったがよけられた。そして、俺もグーで殴りにかかったがクロスカウンターで返される…なぜ俺には反撃する…がくっ。
「いや、意地悪で言っているのではないんだぞ! いつの時代でもどこの異世界でもいえる事だが、急激な進化はその国ひいては惑星自体に悪影響を及ぼすんだ。今までオレが何千、何万通り試してもいい結果を及ぼした事は1度たりともなかったんだ。
そりゃあ一時的にはいい結果を残す事もあったが…やはりその土地土地や国、星の生態系や法則があるのだ。それを外部の力で無理やり押しつけるようなやり方では無理があるんだ。だから少しづつの歩みでもいいから、進化には惑星の住人だけで気長に見守る事が大切なのさ。」
…いい事言っただろ、オレ? っていう顔がなかったらいい話だったのにな…。
「そのドヤ顔がムカつくが…確かにそうかもしれんな。」
魔王がうなづいて同意した。ついでに俺もうなづいておいた。
「まあ、ユウタの仮想現実で食するのは構わん。お前たちが俺の協力をしてくれているお礼だと思ってくれればな。まあ、もちろん対価はもらうけどな。」
「ムム、本当はもっと好きなだけ思う存分食べたいところだが…諦めるとするか。それなら、あの部屋から外に出るのを許可して欲しいぞ! あの世界は仮想現実なのだろう? それじゃあ我らが外に出たところで何ら害を及ぼすものではないと思うのだがな。」
確かにな…あの部屋から外に出られればお店の食事とか、お菓子が食べ放題になるんじゃないか。
「うーん、それぐらいならなんとか大丈夫かな。だが、すぐにとはいかんぞ。オレにも都合があるしな…。よしその件は何かしらのミッションとしての対価として用意しようかな、まあ近々考えておくよ。」
おおー許可が下りたようだ。言ってみるものだな。よっしゃー! でも、これで楽しみがまた増えたぞ。
「よし、じゃあすぐ帰ろう! 今すぐ帰ろう! ほら、そら、せれ!」
魔王が急かすも…
「いや、今すぐは無理だ。翔太の体から離れるのは次の満月だ。それ以外だと体に負担がかかるからな。」
やはり創造神とはいえ、この世界では借り物の姿だ。色々と制約があるようだ。
「次の満月は3日後だな。それまでに準備があるからオレはこれまでだ。それじゃあ3日後この時間にまた会おう。」
そう言ってレイは病室から静かに消えていった。
「あの、一言よろしいでしょうか。」
うわ、びっくりした。ユウタ(父)が今までひっそりしてたのに、急に話しかけてきた。存在薄いな…あっそうか魂を分割しているから薄くなるって言っていたな、そういえば。
「自分はこちらの世界で初めてレインさん、カミラさんに会ったのですが…何か初めて会った気がしなかったというか、懐かしいとさえ感じました。もちろん異世界で僕の魂の分体とは意思疎通なんてものはできませんし、何が起こっているかも知りません…が、それでも自分は二人に…なんていうか温かさを感じたんです。」
「「………………」」
俺と魔王は黙ってユウタ(父)の話をする。
「先ほどのレイさんとの話合いのなかでも、二人にとって私の分体はかけがえのない存在というのがひしひしと感じられました。自分で言うのもなんですが…これからもどうぞよろしく、ユウタを宜しくお願いします。」
そう言ってユウタ(父)は俺たちに深々と頭を下げた。
「ああ、任せろユウタはどうしようもないムッツリ野郎だが、強い芯を持った優しい男だ。そして何より料理がうまい。どうしようもないムッツリ野郎だけど、これからも俺たち3人で仲良くやっていけると思う…どうしようもないムッツリ野郎だけど。」
「…どうしようもないムッツリ野郎を3回も。そんなにどうしようもないムッツリ野郎なのですか?」
ユウタ(父)は困惑しているようだ。
「気にするなユウタ(父)。そんな事はないぞ、ユウタは優しい心根の持ち主だ。ただ時折自分の気持ちに正直になりすぎて私に対してセクハラに次ぐセクハラを畳み掛けてくる時もあるのだが…良い奴だぞ。
それに…立場の弱い者には下ネタを振りかざし、立場の強い者にも果敢にセクハラをやり遂げる。セクハラの為に生き、セクハラの為に己の立場を悪くすることも厭わない、セクハラ界のセクハラ王だが…良い奴だぞ。」
「…セクハラが7回も。本当にユウタは良い奴なのですか?」
ユウタ(父)は、なおさら困惑しているようだ。
「わかりました、そんなユウタですけどこれから翔太の魂の件も含めてお二人には何のお礼も出来ませんが、せめて異世界へ戻ったらお礼の代わりといっては何ですがこき使ってやってください。それはもうお二人の奴隷のようにこき使ってやってください。」
…自分の魂の分体とはいえ、無茶苦茶言うなこのおっさん。
「何ならカミラさんの為に、自分なら性奴隷になってもいいです。あと、3日間だけですけどカミラさんのナイスバディーの為に…へぶし」
「やめーーーーい」
…セクハラの途中で魔王に殴られてた。俺たち幽体なのに…物理攻撃はできないはずなのに…恐るべし魔王とユウタ(父)。
恐ろしい子!(白目)




