第107話 原液カルピスの希釈率は?
「お前の命を捧げられるか?」
「捧げれません!」
自分はきっぱりと言い切った。
「第2部 完!」
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「えええええ、何で? 続きがめっちゃ気になる〜」
俺は素直な感想を述べた。
「…ユウタ(父)小指を立るな、小指を! イラっとするぞ。」
魔王は話と全然違う事にまだ腹を立てていた。
「ユウタ何部作なのだ? この茶番は?」
レイが苛立ちまぎれで聞いていた。
「みなさんお待たせしました。今から第3部を始めたいと思います。」
ユウタ(父)が小指を立てたマイクからそう言うと、じゃあ別に第2部 完にしなくても良かったんじゃないか? とか、マイクにエコーはいるか? などとヤジが飛んだ。
それを聞いたユウタ(父)が言った。
「第3部は…WEBでえええええええ!」
みんなにめちゃめちゃ不評だったので、ユウタ(父)は今すぐに第2部の続きを話し出した。
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「お前の命を捧げられるか?」
「捧げれません!」
自分はきっぱりと言い切った。
「ほう、どうしてだ? 自分の命を犠牲にすれば、この寝たきりで目を覚ます事の無い可愛い可愛い息子が目を覚ますと言っているんだ。地球人だったら素直に自分の命を差し出すものではないのか?」
レイは怒るかと思ったのだが、自分にニタニタと笑いながら問い詰めてきた。
「自分が命を差し出して息子が目を覚ましたとしても、大黒柱である稼ぎ手を失った家族はお金が無くなり路頭に迷う事に成ります。まあ、例え自分が死んでも残された家族が生活していけるほどの財力があったとして断りますけどね。」
「ほう、理由を聞こう?」
「自分が死んでしまったら、家族や目を覚ました息子も悲しみます。それでは結局今の状況と何も変わりはしない。そして…何よりも…自分が生きて息子と会いたいんです。目を覚ました息子と抱き合いたいのです。その為にはいくら強欲だと罵られても、最後まで家族4人一緒に暮せる可能性を探りたいです。」
自分の意見を聞いたレイは笑い出した。
「ぐはははははは、あーはははははhっげぼげぼけほんーー。のどに…唾が…づまっだ。」
…おい、神よ。思いっきり咳き込んでますやん! 本当に神なのか? 意外に人間らしい…というかドジな所があるのだな。
「ドジなところがあるとでも思っているのだろう! いや、これは生身の肉体の勝手が分からないだけだからな! 普段の姿、形ならこんな事は有りえないんだからな!」
何の言い訳だか分からないが分かりましたと答えておいた。そしてさっきむせた事は無かった事にされてレイ君が僕に告げた。
「気に入ったぞユウタとやら。オレも安っぽいヒューマニズムは嫌いな方だ、お前の様に人間らしいその浅はかな考えも好きだ。だが、最後まで話を聞け。お前の命を捧げても死ぬ事はない。正確にはお前の魂を分割したいのだ。」
「分割? 分割しても大丈夫なのですか? 何か寿命が少なくなる的なイメージがあるのですが…。」
「寿命も変わらない。魂を分割すると…本人の希薄化というか存在が薄くなるぐらいだな。あっここにいたの? みたいな。」
「自分は今まで人気街道まっしぐらでチヤホヤされて生きてきましたので、薄まるぐらいなら大歓迎です。むしろ薄めて欲しいぐらいです。何なら原液カルピスの希釈率ぐらい薄めてもらってもかまいません。」
「いや、お前の今まで歩んできた人生もさっき見てきたのだけど…まあまあ地味というか平凡な人生を送ってきてるよね? どこからそんな自信満々に言える程の人生を送っているのか、こっちが困惑するほどなのだが…あと原液カルピスの希釈率がわからないから、そのボケに突っ込めないわ…すまん。」
…神様に気を使わせてしまったようだ。申し訳ない。
「カルピスの希釈目安は5倍くらいらしいです。すみません。」
「どこを謝っているんだ! あとその情報どうでもいいから! 話が進まん!」
「その魂の分割の構想はこうだ。」
彼はその構想を語ってくれた。
まず、何で僕の魂の分割が必要かという事になるのだが、子供である翔太の魂は親である自分の魂の要素を含んでいるので、近しい魂に惹かれやすいという点がある。
だから他の惑星(これは異世界とも言っていたけど)、その異世界へ僕の魂を送り出す事により、子供の魂を呼び寄せて集める。その集まった魂を地球の翔太の体に入れれば元通りに目覚めるとの事。
だいぶ端折って説明をしたが、実際にはそんなに簡単にいくはずもなく、色々とレイ君…というか神様の力を使って微調整を行ってくれるらしい。
まず僕の魂を異世界に慣れさせる為に翔太と同じくらいの年齢で地球と同じ様な生活を送らせてなじませる。ちなみにこの擬似地球は仮想空間のようなもので限られた地域、範囲しかないみたいだ。
僕の魂が仮想空間の中でなじむのを待っている間に、翔太の魂が散ったであろう異世界を探しだして(レイくん次第)異世界を繋げて行き来できる様にする。
ミッションという形にして、クリアするたびに翔太の魂を集める事ができる様にしてくれたようだ。わざわざミッションクリアさせなくてもいいんじゃ無いか? と聞いたら、ミッションという形をとってはいるけど魂を集める儀式だと思えば解りやすいだろ? との事。確かに分かりやすいか。
本当なら複雑な工程、儀式を経なければ集められない魂をミッションクリアというシステムに組み込んだということらしい。ゲームに慣れ親しんだ地球人に優しいシステムだな。
もしミッションがクリアできなかったらどうなるのか聞いてみたのが…ニヤッと口角を上げるだけの笑みを見せられた…頑張れ俺の魂! 負けるな俺の魂! 遠くの星から応援してるぞ! 何も出来んけど…
「正直、まだ理解が及ばない事が大半を占めて混乱していますけど…自分はレイ君を信じて全部任せたいと…いや、ぜひお願いしたい! もちろん対価は払いますので。」
そんな僕の発言にレイ君は。
「そうだな、お前の子供が目覚めた時にその対価をもらうとしよう。その対価は…」
レイ君の対価の提案に驚きつつも了承した。
こうして僕の魂を分離して子供の魂を引き寄せるという、壮大な計画は5年の月日を経て、翔太が目覚めた事でやっと実を結ぶ事になったのだ。
といってもまだ計画の初期段階なので完全体には程遠いのだが…事故当時の絶望しかない時期に比べれば翔太が目覚めた事がどれだけ私たち家族に光を…力を与えてくれたか計り知れない。
まだまだ道半ばですが、レイ君には感謝として僕の操を捧げたいと思います。
「いらん!」
…断られました。
完




