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第101話 僕が目覚めた日

 今の僕は俺なのか私なのかも


 うえもしたもみぎもひだりも


 そんざいしてる? していない?


 ぜんぶわからない。


 なにもわからない。






 全てが無になったかのように真っ白な何も無い空間だ。






 いつもの真っ暗な暗闇なら薄っすらいるのがわかるぐらいの存在、クロちゃんが感じられたのに…この真っ白な空間には誰もいない…僕しか存在していない。



 浮かんでいるような気がする…僕という存在を肯定するものは何もない…体も何もないのに僕の意識だけが空間に浮いているような感じだ。


 見えないだけでなく音もない世界。それが僕をより一層孤独に駆り立てる。


 まるで僕という存在は初めから居なかったかのような感じが、僕をより一層不安にさせるのだ。





 どちらだろう?


 拒絶されているにしろ、拒絶しているにしろ感じる気持ちは1つだ。


 僕は居ても居なくてもいい存在?


 誰にも必要とされていない存在?




 僕は…誰だったのか思い出せない。あと少しで思い出せるような気が…


 

“まだ思い出せないかい?”


 えっ君は誰? 僕を知っているの? ここはどこ?


“まだまだ時間はかかりそうだね”


 ねえ待って、教えてよ。僕の事を教えてよ。


“ほら、もうすぐ目が覚めるよ”


 今まで真っ白だった空間が闇に包まれた。

 どんどん闇に。

 どんどん深い闇に。

 どんどん暗闇に支配されていく。





 いつまでも続くかと思われた落下の途中で、目の前が明るくなって光が差し込んできた。なんとなくここが終着のような気がすると、不思議と安心感が湧き出てきた。


 僕は死んでいない。生きている。そんな安心感が落ちていく先の、下の方から感じられる。


 ああ…僕は…




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はっ」


 僕は目を覚ました。先ほどと変わらない真っ白な空間だが、天井の蛍光灯の明るさによる白だ。最初はぼんやりとしか見えていなかった視界が、目が慣れたからだろう。次第にくっきりはっきりと見えてくる。


 僕はその天井の蛍光灯をぼーっと眺め続けた。


 ずっと規則正しい機械音が聞こえる。この場所からは見えないのだが、たぶん僕に繋がっている生命維持装置の機械音なのだろう。


 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ


 ずーっと天井を見続けながら、飽きもせずその音を聞き続けた。


 どれぐらい経ったのだろうか、部屋の扉が開く音がして誰かが入ってきたようだ。僕の近くにきて何か布が擦れるような音や雑音が聞こえた。


 ふと、音が途切れたと思ったら彼女と目があった。


 彼女と言っても60歳近い年配の看護師さんのようだ。目を見開いて、とても驚いた顔をした後、何度も僕の顔を覗き込んで慌ただしく部屋の外に出て行った。


 その後すぐに白衣を着た年配の男の人…たぶんお医者さんだと思うのだが、その男性が僕の目にライトの光を当てたり、布団をはがして診察をしたりした。


 その後も何か声をかけられたのだが…僕は…なんだか瞼が重くなり…言っている事が理解できずに寝てしまった。


「《《翔太》》さん聞こえますか? 《《翔太》》さん?」


「しょう…た?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 僕は今、ものすごい混乱している。困惑? どっちだ…まあいいや。とにかく…頭の中が冷静ではいられないのだ。


 僕が目覚めた次の日、ものすごく慌ただしかった。


 どうやら僕は目が覚めただけらしい。見える事と聞くことは出来るのだが…体を動かす事やしゃべる事が出来ない。


 目が覚めた時からおかしいと思ってた。自分の意志で体を動かす事も口を動かす事も出来ないのだから…どういう状況かは分からなかったけど、久しぶりに起きたから動けないのかな~ぐらいの軽い気持ちで考えていた。起きたら治っているだろうぐらいの軽さで。


 朝一の確認事項で僕の担当医である先生から説明があった。


 もちろん、見える事と聞こえる事を確認されてからなのだが…。


 どうやら僕は12歳の時…今から5年前の小学生の時に交通事故により意識を失っていたらしい。5年間一度も目覚める事なく病院のベットに寝かされていたのだという…


 もうこの時点で情報量が多すぎて僕の頭は混乱だらけだ。


 えっ5年間…小学校6年生からずっと? 交通事故で? 病院でずっと目覚める事なく意識不明?


 これだけでも僕の脳みそはヒートアップしっぱなしだというのに、朝一の面会で僕の両親と申し出た40歳ぐらいの年配の男性と女性、そして妹だという3人が面会を許されて部屋に通されたようだ。


 目が覚めた僕の様子を見て、両親は大粒の涙を流して僕のベッドにすがった。妹は僕を見ても戸惑っているように見えた。僕が事故で意識を失った時にはまだ小さかったようだからあまり覚えていないのだろう。妹と目を合わせて、そんな事をぼんやり考えていた。


 あまりの両親の取り乱しぶりに先生はとりあえず今日はこのぐらいでといって、両親を落ち着かせてまた明日以降ゆっくりという事で帰ってもらった。


 その時に気づいたのだが、部屋の隅に見た目は16歳ぐらいの男性? 銀色のメンズマッシュで左目だけが髪で隠れている全身真っ白な制服のようなスーツを着ている見るからに怪しい奴が居た。


 その人は僕をじっと観察するように見ていただけで特に何も言わずに両親と一緒に帰っていた。僕の兄弟とも紹介されなかったので…、家族ではないと思うのだが…幽霊じゃないよね? みんな見えてたよね? 一体誰だったのだろうかと不思議に思った。


 でも彼には何か…言葉に言い表せないのだけど…何故か惹かれるものがあった。


 これは恋だろうか? いや絶対に違う!


 話がそれた。実は今日、両親と妹と会ったことで僕の混乱が余計に深まった。


 僕は全く思い出せなかったのだ。両親だと紹介された人の顔も名前も、一緒に過ごしたという思い出も何も思い出せなかった。


 僕は薄情な人間なんだろうか?


 血のつながった肉親でさえ思い出すことが出来ないだなんて…


 それよりも何よりも、僕を一番混乱に陥れた事があった。


 それは…


 僕の名前が翔太しょうたと呼ばれている事だ!


 僕はユウタじゃなかったのか?


 ずっと三ツ俣優太(ユウタ)だと思って生きてきたのに…三ツ俣翔太しょうた、それが僕の本当の名前らしい。


 ………信じられない。


 何がどうなっているのか僕には、何が何だか全く分からなくなってしまった。


 あまりにも複雑に絡みあう難解な真実の洪水に僕の脳みそは溺れてしまい、軽い頭痛を感じながら、今日何度目かの眠気の為に瞼を閉じた。


ーーーーーーーーーーーーーー

すみません何が何だか分かりにくいと思いますけど、

これからこの物語の核心と今までの伏線を全て回収していきますので

見捨てないで読んでください。


だいたい110話ぐらいまでには説明し終わりますので。



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