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第10話 スマホの機能

「ユウタの持っておる、そのガラス板のような物はなんだ? いつも持っておるようだが。」

 食後の雑談タイム中にカミラさんが僕のスマホを指し示し聞いてきた。


「これはスマートフォンといって多機能端末といった感じですかね、主に遠くに離れた人と話す事ができる電話という機能や、写真や、動画、音楽を聴いたりもできますよ。」

「遠くの人としゃべれる? 電話というのはどんなに離れていれもしゃべれるのか?」


「ええ、相手も電話機能の付いた道具さえ持っていれば使えますよ。地球限定ですけどね。異世界では遠くの人に連絡をとりたい時はどうするんですか?」

「我のアルメロ国なんかでは魔法を用いた手紙の伝達方法はあるが…あと近場ならテレパシーで相手に直接伝える事もできるぞ。」

「俺たちのメルニーク王国では緊急の場合は鳥の使い魔をよく使うな。」


 へ〜高度な技術なのかアナログなのかよくわからないな…。そうだスマホついでに2人のことを写真や動画で収めてみよう。前々からやってみたかったんだよな。カミラさんは黙っていればものすごい美人だし。僕はスマホの動画撮影アプリを立ち上げてカミラさんに声をかける。


「カミラさんちょっとそこでくるっと1回転して何でもいいので決めゼリフを言ってください。」


 何のことかわからないままカミラさんはすっくと立ち上がりきれいに1回転したのち、

「カツ丼こそ至高の食べ物だ!」

 といい顔いい声いいポーズのトリプルアクセルを決めた!


「はい、ありがとうございます。じゃあ見てみましょう。」

 僕は今撮った動画を再生する。


 スマホの画面いっぱいにカミラさんがくるりと回転して

「cam.:.:@ujlhpe@ea;rz!」

 といい顔いい声いいポーズのトリプルアクセルを決めた!


「ん?」

「おお、すごいなこれどうなってるのだ? 先ほどの我がここに記憶されているのか?」

「えええすごい! 俺も俺もこの中に映してくれ、ユウタ!」


 あれ? 二人は興奮気味だが違和感に気付いていない? 僕はもう一度カミラさんの動画を再生する。

「cam.:.:@ujlhpe@ea;rz!」

 やっぱりだ。ちょっと何言ってるのかわからない。


「カミラさん、レインさん今このスマホから聞こえた声何って言ってるか聞こえましたか?」

「もちろん、カツ丼こそ至高の食べ物だ!って言ってるぞ。」

「俺も聞こえてるぞ。」

 二人はいぶかしげに僕を見ながら答えてくれた。


 もしかして…僕はスマホに向かって

「やつは四天王最弱!」

 と叫んで録画をしてみた。そしてその動画を二人に見てもらった。

 


「やつは四天王最弱!」

 動画からそう日本語で聞こえてくるが二人は首を傾げている。


「?何って言ってるかわからないぞ」

「俺もだユウタが言ってる言葉がわからない。」


「ひょっとして…カミラさんやレインさんは何語でしゃべっていますか?」

「我やレインはフレニス大陸の共通言語フレニス語でしゃべっているぞ。ユウタは?」


「僕は日本国の日本語でしゃべっています。」

「なんだと、我はてっきり異世界でもフレニス語が標準だと思っておったぞ。」

「そうか、そういう事か。俺たちがユウタと会話出来ていたのもこの部屋で言語変換されていたからなんだ。」


「そうなんです、僕の予測ですけどこのスマホの機械を通すとそれが適用されない。つまり生身の命のこもった言葉にしか適用されないんではないでしょうか?」

「なるほどな、それならつじつまは合うな。」

「……なるほどね。」


「どした?魔王そんな顔して。」

「いや、やはりこの部屋が特殊というか特別な空間すぎるのだなと思ってな。実は今日ユウタに教えてもらった唐揚げのレシピを城の料理人に伝えようとしたら…頭が真っ白になって思い出せなくなった。認識阻害魔法をかけられたようにその言葉だけすっぽりと抜け落ちてしまっていたんだ。もちろんその後に思い出すことはできたのだが、伝えることはできなかった。」

「そんな事がありうるんですか?」


「俺も思い当たるな…推測だが思うにユウタの世界と俺たちの住む世界、お互いに影響を及ぼされないようになっているんじゃないか?」

 レインさんが考察を話し出した。


「つまり俺たちの世界を変えてしまうような革新的な技術や芸術、食事に至るまで持ち出せないようになっているとか? だって考えてもみろよ、地球のものを俺たちの世界へ持ち込めば色々な物が破壊されちまう事になるかもしれないぞ。」


 レインさんの考察を聞いて確かにと思うところがある。小説などの異世界物の定番、地球の砂糖や塩を持ち込んだりするけど精製技術や品質なんか段違いな場合が多い。こちらの世界から持ち込めば持ち込むほど、需要と供給が壊れそれをかてとしてる人たちに被害がこうむることにもなるし、そのまま地球産が供給され続けてしまえば砂糖など収穫方法、精製方法などが廃れ逆に文化が衰退したりしてしまう可能性もある。


「ようするに異物を排除する仕組みになっているんだな。ユウタ達の文化しかり、我たちの世界の文化も。」

「それならば色々な事のつじつまがあうな。」

カミラさんもレインさんもいつもの夕飯を食べるときなふざけた感じではなく、国の政務に携わる大人の顔になっていた。


「それじゃあ尚更わけがわからないですね。僕の部屋が皆さんの世界と繋がっている意味が…」

 僕は最大の疑問を口にだして言葉にしてみた。


 しばらく黙って考えてはみたが、


「まあ、今そんな答えのない事を考えてもしょうがない!」

「そうだな我もおいしいご飯が食べられれば不満はない!」

「…作らされる僕には不満しかないですけどね。」


「そんな事いうなよユウタ! 異世界に来れたら俺が大人のいいお店を紹介してやるか…」

「絶対ですよ、絶対大人のお店を紹介してくださいよ! レインさんのおごりで!」

 僕はめっちゃ食いついた。その提案は僕の理性を振り払い煩悩を100%むき出しにさせた。レインさんは軽く言ったつもりだったのだが僕のあまりにも必死すぎる食いつきにちょっと引き気味だ。


「ユウタも男じゃな。そうだなユウタか異世界にきたら我が直々に相手をしてやってもいいぞ。この魔王自らなふふふっ」

カミラさんは髪を揺らし、つり気味のパープルの目で物憂げに僕を挑発してきた。


 僕は辛抱たまらずカミラさんに告げた。

「いえ、カミラさんはタイプじゃないんでちょっと…」


 確かにカミラさんはものすんごい美人でグラマラスなんだけど…普段のがっつく姿をみているから何か家族というか欲情しないんだよな…残念な感じが醸し出されているので。


 そう素直に伝えると…


 カミラさんは憤慨して自身の最大最強第10界火魔法デフォルノスフィアを連呼する声が響き渡ったが魔法が発動する事はなくその日は解散となったのである。

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