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巫の血脈  作者: 櫟木 惺
第14章 昏迷の霊媒師
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第74話 融合する力

 どくんと音を立てるように、力が采希(さいき)の中で湧き上がった。静かに身体の中が力で満たされていく。

 意識が途切れる直前に琉斗(りゅうと)が開放してくれた力を確認し、采希はゆっくりと眼を開けた。


「……(れい)さん、ここの護りは置いていきます。俺──」


 にっと笑った黎が、早く行け、と言うように手をひらひらと振る。

 それを視界の隅で確認し、采希は一瞬で屋敷の玄関の内部に跳んだ。


 左腕を身体の前に上げると、手首に付けていた銀のバングルから白銀色の和弓が現れる。


《采希さん、紅蓮の気配はあの辺りです》


 弓と化した琥珀が示したのは、階段脇の中空だった。采希の目線より僅かに上の空間が歪んで見える。


《采希!》


 ふわりと采希の上方に三郎がやってきた。

 申し訳なさそうなその表情に、采希はちょっと笑ってみせる。


「三郎さん、黎さんの所に行ってくれ。もうそろそろ、現れる頃合いだ」

《……承知した。すまぬ……》


 榛冴が地中から引き摺り出したのは、廓にいた女性たち。さらに降霊によって引き寄せられ、放置された数多の霊だった。

 琉斗と那岐(なぎ)が廓の女性たちの悪意の念を切り離し、今は榛冴(はるひ)に降りた神様たちと炎駒がその女性たちの浄化作業に入っているはずだ。


 山神によって抑えられていた降霊されたままの霊たちは、浄化の光に惹かれて活性化するはず、と言うのが黎の見解だった。

 自分の地を削られて穢された事に怒った山神がこの屋敷に邪霊も全て縛り付け、そのために巫女は浄化することが出来なかった、と采希は聞いていた。あまりの規模に、幼い巫女の能力では足りなかった。


 その山神も榛冴と他の神様の説得で怒りの呪縛を解いている。

 采希には廓以外の呼び寄せられた霊たちがざわざわと動き出す気配を感じていた。

 屋敷正面の黎と裏手に陣取った那岐だけではおそらく対処しきれない。降霊でどれほどの霊を喚んでいたのか、采希に視える気配だけでも数百はくだらない。


(さっさと片付けて、俺も行かないと……)


「琥珀、行くぞ」


 ゆっくりと頭上に掲げた両腕を降ろすと、左右に引かれた弓と弦の間に金色の矢が現れる。


「なうまく さまんだ ばざら だん かん」


 一見、何もない空間に見えるその場所に、金色の矢が吸い込まれて消えていった。突如、空間が捻じれ始める。


「ロキ! 聴こえるか?」


 微かに応える声を目掛けて、充分に自分の気を纏わせた第二矢を放つ。白狼(ロキ)に采希の『気』が届いた気配がした。

 采希がゆっくりと、周囲の風景を歪ませながら蠢く空間に近付く。嫌がるように空間が後退りしたように見えた。


「……俺の力が、欲しいんじゃなかったのか? ほら、何で逃げるんだよ」


 嘲るように笑いながら近付くと、采希を避けるように空間が捩れる。

 内部では白狼が暴れているのだろう。采希の眼の前の空間が徐々に黒く変化していった。

 右手を頭上に掲げると、手の周りでばちばちと音をたて、放電が始まった。


「紅蓮! 切り裂け!」


 空間の内部で紅蓮の斬撃が飛ぶ。同時に采希は右手から雷光を空間に向けて放った。




「琉斗! ……琉斗?」


 歪む空間の入口から無理やり内部に侵入すると、白狼の大きな身体に包まれるようにして、琉斗が眼を閉じたまま微笑んでいた。身体を丸め、眠っているようだ。

 安定した脈拍と呼吸を確認し、采希は琉斗の身体を白狼の背に乗せる。


「ロキ、ありがとな。お前は琉斗を連れて屋敷の外まで行ってくれ。黎さんと陽那(ひな)が待っている。紅蓮、俺の中においで。少し休むんだ」

《采希──》

「うん、俺はこいつを片付けてから戻る」


 すっと眼を細め、迷いながらも頷いた白狼が一跳びで空間の外に出る。


「さて──お前が何者かは知らないけどな。俺の身内を傷付けようとした代償は大きいぞ」


 周囲の気配が、怯えたそれに変わる。

 ごく微かに、下卑た視線を感じた。


《采希さん、いかがなさいますか?》


 琥珀の呟きに、采希はちょっと首を傾げる。

 いかがするも何も、こんな醜悪な念は助けようとも思わなかった。浄化などしてやるつもりは欠片もない。

 手前勝手で強欲で、自分では努力もせずに余所から与えられるのが当然と思っている、そんな性質を感じた。


「こんなヤツ、消滅させるに決まってるだろ。欲望のままに力のある霊を騙し討ちで取り込んで、ここまで大きくなった。でも、そのほとんどはまだ消えていないな。一番古いのは、リズか。それで味を占めて魂喰いを繰り返したのか」

《……そのようですね》


 内部に入り込んだことで、采希にはこの醜悪な念の正体が視えた。それは半分は陽那のおかげだった。

 相手の力を取り込むタイプの邪念。

 どんどん膨れ上がり、既に巨大化していても可怪しくはなかった。だがこの邪念は小心者で小狡い性質らしく、また、移動するという概念が無いためこの場に留まっていただけだった。

 元々居たはずの場所から百年ほどで数十mほどズレている、と瀧夜叉姫は言っていた。そうでなければ、この屋敷どころか山ひとつ呑み込まれていたらしい。


『──采希さん、その()()()だけを消すことは可能ですか? リズさんや他の巻き込まれた霊魂は助けてあげたいと思うんですけど』

「分かってる。陽那、そのまま瀧夜叉の眼と繋いでいてくれ」


 采希には琥珀の通訳なしで瀧夜叉と意思疎通は出来なかったが、陽那にはそれが出来るようになっていた。

 あまりに濃い悪意の念の内部で、采希にはぼんやりとしか分からなかった囚われた魂たちが、瀧夜叉には視えている。

 その中に、ビスクドールの中の少女の魂の欠片があった。


(囚われている魂たちをどうやって切り離すかだな。粘着性のある触手でがんじがらめにされているみたいに見える……)


 下手に手を出せば、喰われた者たちも一緒に傷付けてしまう。

 絡めとられている触手から解放できればいいのは分かっているが、采希には難しかった。


「黎さん、このままだとかなり難しいんですけど、何かいい方法ってありますか?」

『お前でも()()()だけを消滅させるのは無理か?』

「俺だと全部まとめて消しちゃいそうですね」

『…………ちょっと、待ってろ』



 突然、お預けに我慢が出来なくなったように魂喰いから触手が伸ばされる。不思議なことに、それは采希の身体に触れる前にどろりと溶けるように消えた。

 苛立った触手が一斉に采希に向かってくる。


《無駄ですよ。お前はもう、彼に触れることは出来ません》


 何が起こったのか把握できない采希の前に、薄く大きく広げられた光を背負った背中が見えた。暗い空間で、そこだけが光を放っている。

 その姿を認めた采希は思わずぎゅっと眉を寄せた。


「あきらの後ろにいた、光のお姉さん? なんでここにいるんだ? 出番はまだなんじゃないか?」

《そのおかしな呼び方を容認した覚えはありませんが。……黎の要請です》

「……名前、呼んでもいいのか?」

《……今だけはいいでしょう》

「じゃ、ミシェール、こいつに取り込まれた魂を取り戻したい。この胸糞悪い()()()だけを消したいんだ。手伝ってくれるか?」


 口をすっと横に引いて微笑むその顔は、巫女以上に中性的だった。


凱斗(かいと)を呼びなさい》

「…………え? 凱斗?」


 呼んだらどうなると言うのだろうと、采希は首を傾げた。


「まさかここに、凱斗が来れるのか?」

『うん、行くから。だから早く呼んでくれ、采希!』


 ここにいないはずの凱斗の声に、マジか、と采希は一瞬呆けた。

 だが確かに、邪霊だけを消し去るなら凱斗以上の適任はいないのも事実だった。


「あー……凱斗、ここに来てくれ」


 視界が光で溢れる。一瞬で現れた光の中に、凱斗がいた。

 いつものようににんまりと笑った凱斗が、采希の両手を握る。凱斗には、真っ暗な空間に采希がぽつりと立っているように見えていた。


「俺にはここで何が起こっているのか視えないけどさ、お前に俺の力を貸してやるよ。──琥珀、采希の身体の中に入ってくれ」


 驚いて動けない采希の左手に、琥珀がすうっと吸い込まれた。


「……一体、どういう?」

「俺の力は【邪気】を消せるんだろ? だから俺の力をお前の中の()()()移す。今ならお前の力はこの魂喰いにだけ作用するはずだ。スルトがそう言ってた」


 何を言われているのか采希にはよく理解できなかったが、采希の中に吸い込まれた琥珀が肯定しているのを感じた。

 試しに、奥深くで蠢いている触手の塊に掌を向けてみる。

 ふっと息を吐きながら気を放つと、団子状になっていた触手が蒸発するように消えた。

 淡い光を放つ魂魄と思われるものが開放され、ふわりと浮き上がった。


「……何これ、すげぇな」

「だろ? さっすが俺」

「いや凄いのは、…………うん、凄いな凱斗」


 ふと采希は、どうして自分が凱斗の力を使えているのか疑問に思った。『力の受け渡し』は基本的に出来ないはずだった。

 琥珀を通しているせいか、と一瞬思ったが、琥珀からも困惑している気配がする。


「ミ…………あー、シェリー、これはあんたの力のか?」


 名前を呼びかけた采希に、ミシェールは口に指を当ててみせる。凱斗の前で名を呼んではいけないと判断した采希は、巫女が幼い頃に呼んでいた呼び名を声に出した。


《凱斗だけでは力をうまく放出することが出来ない。采希だけでは邪気にのみ干渉することが出来ない。いい組み合わせですね》

「……そうだな」

《ここが片付かない事には私の仕事が終わりませんので。今回は特別です》

「んじゃ、さっさと片付けようぜ。黎さんと那岐がかなり苦戦しているみたいだしな」


(──マジか。あの二人が苦戦するって……)


 相手の霊力がどうの、と言う事情ではないのだろうと采希は思った。おそらくは、その数が問題なのだろう。


「──了解。凱斗、一気に行くぞ」



 * * * * * *



「ちょっとぉ……凱斗兄さんはまだなの? かなり辛いんですけど……」


 榛冴が悲鳴のような声を上げる。


「もうちょっと、頑張って榛冴」

「無理だよぉ。神様の力の制御なんて……無理……」


 那岐の後ろで膝を付いていた榛冴の頸が、がくんと下がる。


「ハル!!」


 那岐は慌てて振り返り、そっと肩に手を掛けた。

 伝わってくるのは榛冴に降ろされた山神様の怒りだった。

 山神はその怒りによって霊を呪縛していた檻を解いてくれたが、長く守ってきたこの地を穢されてしまった事に対しては、まだ許していなかった。

 結果的には山神が邪霊をこの地に留めたせいで、ここまで酷い事になったのだが、神様には最初に穢された事実だけで充分らしい。

 神様に理不尽を説いても無駄だ、と祖母から教えられている。だからこの地の全ての邪霊を殲滅させるまで、山神の怒りは収まりそうにないと那岐は気付いていた。


「ダキニ様! 榛冴の代わりに僕が引き受けます! 僕に降ろして!!」


 那岐は空に向かって大声で叫ぶ。

 自分は巫覡(シャーマン)には向いていないと分かっていたが、それでも榛冴にこれ以上苦しい思いをさせたくなかった。




『──采希が呼んでる。悪い、那岐。ここは任せた。俺、ちょっくら行ってくるわ』


 そう言って凱斗が文字通り消えてから、まだ十分ほどしか経過していない。炎駒も凱斗と共に姿を消していた。


(凱斗兄さんの力で、やっとこの場の力の均衡が保たれていたんだ。僕の力じゃ……)


 那岐の声が届いたのか、榛冴の胸元の笛から管狐(くだぎつね)が飛び出して来た。


《朱雀を、呼びなさい。那岐、あなたへの守護契約を申し出ています》


 管狐から聞こえた荼枳尼天(ダキニてん)の声に、那岐は眼を見開く。


「……契約? どうして……」

《朱雀があなたを認めているという事です》

「でも朱雀は、小春ちゃんの……」

《問題ありません。四神は多次元同時存在体ですので》


 きゅっと唇を噛み、那岐は顔を上げた。

 迷っている暇はない。


「朱雀さん、もう一度、僕に力を貸して。──南の守護神、朱雀! ()く、参られよ! 契約を!」


 那岐の声に応え、朱雀が頭上に現れる。これまでとは違い、那岐は朱雀との間に気脈が循環するのを感じた。

 手を差し伸べた那岐の中に吸い込まれるように入ってくる。

 瞬間、那岐の全身が朱金の炎を噴き出す。

 同時に炎駒の背に乗った凱斗が姿を現わした。


「お待たせ、那岐、榛冴! よく持ち堪えたな、えらいえらい。んじゃ、全部まとめて地中から追い出そう。行くぞ、スルト!」



 * * * * * *



「黎さん!」


 炎駒の紅い気を纏ったままの采希が、黎の眼の前に立った。


「待ってたぞ。廓のお姉さま方や隠密衆がこの地から切り離されたのが分かって、降霊されたまま放置された連中が活気づいている。予想通りだが、数が多すぎだな。それと、こちらの言葉には耳を貸す気がないらしい」


 屋敷の方に両手を向け、奴らの動きを抑えながら黎は荒く息をついた。


「聞く気がない? 瀧夜叉の言霊(ことだま)でも無理ですか?」

「おそらくな。聞く気がないなら、奴らを集中させて一か所に集められれば何とかなりそうなんだがな」

「一か所に……」


 黎の言わんとしている事は分かった。采希でも、各々勝手に暴れ回っている大量の霊魂を一体ずつ浄化するのは、困難だと思った。


(何か、誘蛾灯みたいな物があれば──……あ! ここに、あるじゃねぇか。問答無用で霊が欲しがる餌が)


「黎さん、俺に名案があるんですけど」

「おう、却下だな」

「…………せめて、言わせて下さい」

「ダメだ。お前が囮になるとか言うんだろ? 許可できねぇな」


 黎ならそう言うだろうと思っていた。以前に彼の姪である巫女にも囮の提案をして怒られている。


「囮じゃなくて、俺が誘導するんだ。──正確には、俺と那岐だけど」


 そう言い終わると同時に采希は天に向かって大きな気の塊を放つ。

 屋敷の上空に向かった巨大な気は、空中で弾け、細かい光の粒子となって屋敷に降り注いだ。

 黎が全力で抑えていた念たちが一気に沈静化する。

 身体に残っていた炎駒の力で、念たちを一時的に麻痺状態にした。


「……采希、いい手だが、この方法ではキリがないぞ。数分もすればまた活性化する」

「分かってます、時間稼ぎです。ひとまず黎さん、話を聞いて。──みんなも、聞いてくれ」


 ゆっくりと深呼吸して、采希は声を風に乗せる。

 屋敷の裏手で今頃は一息ついているであろう凱斗たちにも届くように。




「まず、俺の力を開放する。那岐は俺を手伝ってくれ。お前の力が一番俺の力と馴染んでいるからな。ほとんどの念や霊は俺に引き寄せられて来るはずだ。そしたら邪念を寄せ付けない凱斗と、人の念が効かない琉斗には、俺と那岐を念からガードしてもらう。榛冴と陽那は神様たちのお手伝いを頼みたい」


 黎が考え込むように首を捻る。


「……全ての念や邪霊を采希と那岐に集めて浄化するのか。そこで凱斗と琉斗が浄化を望まない連中を弾くんだな。なら、そいつらの殲滅は任せろ。あとは琉斗だが……」

《心配には及びません。琉斗が覚醒状態になればよろしいのですね?》

「ああ。呼びつけて悪かったな」


 黎の隣にミシェールが浮かぶと、二人が揃って陽那の隣で横になっていた琉斗を見る。


「陽那、琉斗の様子は──」

「問題ない。完全復活だ」


 首を回しながら起き上がる琉斗に、黎が呆れたような視線を投げる。


「……どんな体力だ。──采希、勝算は?」


 まだ少し納得していないような、憮然とした表情で采希を横目で見る黎に、采希はにやりと笑ってみせる。


「負けるつもりは、ないですね」





「采希兄さん、お待たせ!」


 那岐が凱斗と榛冴と共に屋敷の裏から走って来た。


「大まかな作戦はさっき聞いたけどさ、本当に大丈夫なの、采希兄さん?」


 不安そうな榛冴の頭に采希は軽く手を乗せる。そのままゆっくりと気を流し込んだ。

 蒼褪めていた榛冴の顔に、赤みが戻る。


「大丈夫。──よくがんばったな、榛冴。あともう少しだけ、陽那と一緒によろしく頼む」


 凱斗が小さく声を上げ、そちらを見た陽那と榛冴が同時に息を飲んだ。

 琉斗の身体から青白い炎が噴き出している。

 ミシェールが強制的に覚醒させた琉斗は、以前、采希と那岐が見た時よりも大きな青い炎を纏っていた。


 黎が、隣に浮かぶミシェールに尋ねる。


「琉斗のあの気配は何なんだ? うちの八咫烏に覚えがあるらしいが」

青龍(・・)です。黎、あなたでも気付きませんでしたか》

「そう簡単に四神にはお目に掛かれないだろう。──何でまた、青龍が?」

《以前、巫女が榛冴に青龍と玄武を降ろしたことがありましたね。あの時の気配を琉斗が覚えていたようです。力を求めて、無意識に青龍から力を引き出していたのでしょうね》


 黎の目元が驚きに歪む。


「無断で青龍の力を使ったってことか? 大丈夫なのか?」

《こんな強引な事をされたのは何百年振りらしく、青龍としては怒りより興味を覚えたようですよ》


 黎は頭を掻きながら、琉斗を見つめる。


(琉斗の能力は『他の力を自分に移して使える』ってことなのか? いや、そう断定するにはまだ早い)


 琉斗が青龍の力を纏ったのであれば、人の念を受けなかった事にも得心がいった。


 それにしても、と黎は自分の周りに視線を薙ぐ。


 凱斗の中に在る圧倒的な神力や、榛冴の持つ神々の降りる()の大きさ、霊能力者としても一流で体術に長ける那岐、そして彼らを凌駕する能力を持った自分の姪をも抑え込む力を秘めた采希。


 ぶるりと黎の身体が震えた。

 思わず口元に笑みが浮かぶ。

 本当によくここまで揃ったものだ、と思った。


(こいつらが揃えば、ほとんどの怪異に対応出来るだろうな。まるで、誰かが意図的に集めたかのようだ)



「……琉斗」

「おう」

「覚醒って……何だか、お前だけ、ずるいぞ」

「……何を言ってるんだ、凱斗」

「ねえ、おねーさん、俺もこんな風にしてくんない?」

《あなたはそのままで最強です、凱斗》

「え~~……」

「いいから、行くぞ、兄貴」


 まだ不満気な凱斗を、琉斗が指示された場所まで引き摺って行く。


「采希さん、さっき五月姫さまから示された位置からなるべくズレないようにお願いします」

「了解。榛冴、今度は凱斗がいないから、神様たちを抑えるのはしんどいと思うけど──」

「大丈夫。ここにはみんないるから。采希兄さん、那岐兄さん、がんばってね。──じゃ、みんな、用意はいい?」


 瀧夜叉や地龍の姫、白虎が榛冴の後ろに陣取る。

 それを確認した榛冴が芝生に座り込んで結跏趺坐(けっかふざ)を組んだ。


「──采希兄さん」

「……行こうか、那岐」

「うん」

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