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巫の血脈  作者: 櫟木 惺
第9章 空蝉の修羅
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第45話 降臨する力

 遥か上空の暗闇で、采希(さいき)の声に応えるように小さな光がきらりと光った。

 いつかと同じように大きな光の柱が音を立てて降りてくる。

 同時に周囲には龍神(ナーガ)の声が響いた。


《采希、巫女からの届け物だ。受け取れ》

「──届け物?」


 光の柱から、何かが采希に向かって飛び出してきた。


《采希さま!!》

「琥珀? 琥珀……お前……また『様』呼びになってるぞ」


 采希の胸に嬉しそうに飛び込んで来た小さな童子姿の琥珀を受け止めながら、采希は本当に嬉しそうに笑った。


《巫女が、大急ぎで浄化して下さいました。そのためここにはおいでになれませんが、眷属の方々をお貸し下さいました》

「……眷属?」

《また相見(あいまみ)えたのぅ、采希》


 声に釣られ、采希が後ろの上方を振り返ると、マントを羽織った武将と(うちぎ)姿の姫君が浮かんでいた。


「おあっ! お……上総介(かずさのすけ)殿、五月(さつき)姫!」

《マスターが采希に協力するようにと。『上手に使え』、だそうです》


 光の粒子を伴って、采希の眼の前に青銀の猫が現れる。

 シェンの口元から、何かがきらりと光って采希の手に降りて来た。


「──これ……紫水晶(アメシスト)?」


 采希の手の中で煌く細長い水晶は、その片方の先端が小さな剣を見立てたように加工され、柄の部分には銀の装飾が施されていた。



 光の柱が現れ、その場の空気が清浄になったのを嫌がってか、ビルの屋上床からぼこぼこと不浄な霊が湧き出してくる。


《雑魚が、邪魔であるな。琉斗(りゅうと)とやら、身体を借り受けたい。よいか?》


 武将の御仁が嬉しそうに琉斗を誘う。

 琉斗がにやりと笑った。


「もちろん。光栄だ」


 再び、琉斗と那岐(なぎ)が同時に走り出した。



 采希は静かに浮かぶ五月姫──瀧夜叉(たきやしゃ)姫を見上げた。


(確か、瀧夜叉姫にもこの陰陽師の系統は鬼門だって言ってたのに。あきら、それが分かっていて、どうして送り込んで来たんだ?)


 瀧夜叉姫が榛冴に目線をやり、ふっと微笑む。

 采希の手の中にいた龍の姫が、ふわりと浮かんだ。


《采希、榛冴(はるひ)になら五月姫様の力が使える。私も榛冴の所に行く》

「──は? え? そうなの?」


 瀧夜叉姫がこくりと頷く。

 瀧夜叉姫の力と言う事は呪術系か、と采希は考えた。

 だとすると瀧夜叉姫は地龍が操られている呪を解くことができるのだろうか。それよりも、怖がりな榛冴に瀧夜叉姫を預けても大丈夫だろうか……と考えながら、采希は器用に肩の上に降りて来たシェンを見る。


《榛冴さんならおそらく問題ありません。問題となるのは、その後ですね》


 シェンの言葉に嫌そうに頭を掻いた采希に、ちょっと瀧夜叉姫に怯えたような榛冴から声が掛けられる。


「采希兄さん、僕が五月姫さまと一緒に、黒龍を抑えるから。兄さんたちは、あの男をお願い」


 狩衣(かりぎぬ)姿の男は印を次々に結びながら、何かを唱えている。

 采希は長い詠唱を続ける男の呪が届く前に、周囲を白虎と龍神の防護壁で覆うように指示を出した。


《榛冴さん、これを!》


 シェンの尾がひゅるりと何かを放り投げた。

 くるくると回転しながら榛冴へと向かったのは、一本の扇。

 器用に扇を受け止めた榛冴の斜め上で、瀧夜叉姫が礼をするように頭を下げた。




「さて、これからどうするかだな」


 師父と呼ばれていた狩衣の男が繰り出す式神の攻撃を、龍神と白虎の結界で護るにも限度がある。

 結界の外で暴れている那岐には朱雀、琉斗には白狼と武将がついているので心配はないが、おそらく二人の攻撃は男には通用せず、そして結界で防御しているだけでは倒せない。そう感じた采希がシェンに視線を向けると、シェンが同意するように頷いた。


《おそらく、采希さんの感じた通りです。攻撃に関しては大した威力はありませんが、防御に関しましては一流のようですので》

「……物理攻撃も弾き返しそうな防護壁に見える」

《紅蓮でも難しいと思われます。ですが琥珀の矢であれば、息の根を止められますよ》

「いや、死なせたい訳じゃないんだ。それよりもこの先の長い時間をかけて後悔させたい」


 ヒトを騙して富と地位を得た愚者に、采希は冷たい視線を投げる。


 榛冴と瀧夜叉姫の呪で地龍はその動きを止められたが、深緑だった体躯は今も黒く染まったままだった。地龍に施された呪詛はまだ解けていない。

 何が一番効果的か。采希が思案顔で俯くと、シェンは采希の肩から降りながら言った。


《──そうですね。マスターからは完膚無きまでに叩き潰せ、と言われておりますが》

「……その『叩き潰せ』は、物理的にじゃないよな?」

《あの紛い物の力を、だとは思われます》


 自信のなさそうなシェンの言葉に、采希は溜息と共に天を仰いだ。


「あのなシェン、あいつの力だけを根こそぎ消したい。それは可能か?」

《采希さんにならば、造作もございません》


 采希の頭上に漂っていた琥珀が困ったように首を振った。


《しかし、シェン様、私の矢は恐らくあの式神たちに阻まれると思われます。先にあの男の動きを縛らないことには──》

《そうですね。なので、榛冴さんと凱斗さんに手伝って頂きたいのですが》

「え? 俺? 何をすればいいんだ?」

「……怖くないことなら、いいけど」


 申し訳なさそうに告げるシェンに、二人が同意を示した。

 全く違う反応を横目で見ながら、采希はシェンに問い掛ける。


「具体的には?」

《マスターからの伝言は『四神と十二天将を呼び出せ』です》

(──んげっ……!)


 采希の顔が歪んだまま強張る。その様子を確認したシェンが采希の肩の上で笑ったように見えた。


《なにも、十二天将全てを呼び出すわけではありません。幸いここには『白虎』と『朱雀』がいますので、残るは『青龍』と『玄武』です。ナーガ様には防護壁の維持に尽力いただきますので、四神さえ揃えば、あとは十二天将の主神である『貴人(きじん)』においでいただけば充分だとの事です。それで、あの防護壁はおそらく破れます》


 シェンの説明を聞いた采希が、思わずほっと胸を撫で下ろす。


「よかった……『騰蛇(とうだ)』とか出てきたらどうしようかと……。いや、よくないか。十二天将なんて、俺、呼び出したことないぞ。そもそも、俺なんかの呼び掛けに応えてくれんのかって……」


 ごもごもと呟く采希に、榛冴がそっと袖を引いた。


「……采希兄さん、『とうだ』って何?」

「あ? ああ、炎を纏った羽のある蛇」


 榛冴の眼が見開かれる。大きくぶんぶんと首を横に振った。


「ちょ……それは怖い、無理!」

「だから、それは来ないって」

《榛冴さんには、『青龍』と『玄武』、二体を降ろさせてもらいたいのですが──》

「はああ? ちょ、はあああ?」

《榛冴さんの器でしたら、充分に余裕があります》

「余裕とか、そういう事じゃないと思うけど! 大体、どうして僕が四神のうち二体も? 凱斗兄さんは?」

《凱斗さんには、『貴人』をお願いしたいと思っております。これは凱斗さんであってもかなり負担を強いることになると、マスターが──》

「いいよ」


 凱斗がシェンに、あっさりと頷く。

 そのあまりに軽い承諾に、榛冴が凱斗に噛みついた。


「凱斗兄さん! 分かってんの? 天の四神だよ? 凱斗兄さんには十二天将の一番偉い神様だよ? そんなのを身体に降ろすんだよ? 平気なの?」

「今さら何言ってんだ。榛冴だって、これまで何度もお稲荷様に入ってもらってたじゃん」


 榛冴が、その一言でぐっと詰まって黙り込む。


「あ~、シェン、俺の身体や力が使えるなら、使っていい。多少苦しいのは何とかなるような気がするしな。それに──いや、とにかく俺は構わないから」





 式神以外の雑霊を那岐と琉斗が一掃し、龍神の結界の中に全員が戻って来る。

 肩で息をしながら那岐が采希に尋ねた。


「──で、采希兄さん、この後は?」

「お疲れさん、那岐。今から榛冴と凱斗に頑張ってもらうから、お前たちは少し休め」


 采希がシェンの方を見る。眼が合うと、シェンはこくりと頷いた。

 ここまで詳細な指示を受けて来ているという事は、先見(さきみ)の巫女の力は本当に戻っているのだろうと采希は思う。

 自分たちのせいで失われた巫女の力が戻ったことが、心から嬉しかった。


 榛冴の正面に立ち、采希はじっと従兄弟の眼を覗き込む。


「──榛冴、お前なら大丈夫だ」


 そう告げながら、采希は榛冴の両肩に手を乗せる。


「采希兄さん……」


 それでもかなり怖いのだろう、榛冴は手の平に爪が喰い込むほど強く拳を握っていた。


「じゃ、いくぞ」


《東の守護神、青龍。北の守護神、玄武。()く参られよ》


 采希の頭の中に、少し反響したような巫女の声が響く。その声に併せて采希は同時に声を上げる。

 さっきポケットにねじ込んだ小さな紫水晶の剣が、振動しているのが分かった。

 一拍おいて、榛冴の身体がびくんと跳ねる。

 肩に手を置いている采希にまで、その衝撃が伝わって来た。


 ──大きな大きな、力。ただでさえ強大な四神の力を二体分、その身に降ろしながら、榛冴が唇を噛みしめて耐える。

 榛冴の負担を自分に少し肩代わりできないかと采希が考えていると、那岐が采希の手に自分の手を重ねた。


「──大丈夫、ハル。僕と兄さんがついてる」


 幼い頃の愛称で呼び掛けた那岐の背から、朱金の翼が生えているように見えた。

 那岐の中にいる朱雀の翼か、と采希が思っていると、自分の腕も白と銀の縞模様の毛皮を纏っているように見える。

 白虎と朱雀がそれぞれ、榛冴を手伝うために力を貸してくれているのだと思った。

 榛冴の身体の緊張が徐々に和らいでいく。


《次は、凱斗さんですね》


 真剣な眼差しで弟の神降ろしを見つめていた凱斗が、その言葉に弾かれたようにシェンに視線を向けた。


「……わかった。采希、俺のことは護ってくれないの?」

「ちょっと取り込み中だな」


 采希が笑いながら答えると、琉斗が面倒くさそうに片眉を上げた。


「よし、わかった。兄貴、俺に任せろ」


 一人だけ手持ち無沙汰だった琉斗が、凱斗を後ろから羽交い絞めにする。


「は? お前、何してくれてんの? そうじゃなくて! ちょっとぉ、ハル、那岐、采希~!」

「黙れ、凱斗! みんな忙しいんだ、大人しくしてろ!」


 琉斗に力ずくで羽交い絞めにされ、慌てた様子の凱斗に采希が笑っていると、再び頭の中に声が響いた。


天乙貴人(てんおつきじん)、参られよ!》


 采希が声に従って言霊(ことだま)を紡ぐと、采希の中からずるりと力が引き出された気がした。

 榛冴に降りて来たそれとは全く違う、強大で圧倒的な力。

 あまりの衝撃に、凱斗の身体が大きく反り返る。

 (すんで)の所で凱斗の頭突きを躱した琉斗が、両脚を踏ん張って転倒を避ける。

 凱斗の眼からは光が失われ、狂ったようにその身体が暴れようとしているのが分かった。


「琉斗、よく止めた! 褒めてやる!」


 奇しくも、琉斗の冗談交じりの羽交い絞めが功を奏した格好になった。

 采希は落ち着いた榛冴から離れ、凱斗の前に立った。


「そのまま抑えてろ!」


 天乙貴人を降ろした事による衝撃でその手から零れ落ち、元の形に戻った金剛杵を采希は拾い上げて、凱斗の手に握らせる。

 その間、数発の拳を喰らったが、采希は金剛杵を握らせたその手を自分の両手で包み込んで凱斗に呼び掛けた。


「凱斗、聞こえるか?」


 凱斗が一瞬、その動きと呼吸を止め、ゆっくりと息を吐き出す。


「…………采希……?」

「そう、俺だよ。大丈夫、落ち着け。力を抜くんだ」


 凱斗が素直に頷き、もう一度ゆっくりと息を吸い込んで吐き出す。その呼吸は泣きそうに震えていた。


「……俺……あ……」

「うん、大丈夫。意識を取り戻したなら、もう自分をコントロールできるな? 貴人の力に逆らわずに、ゆったり力を抜くんだ」

「力を……」


 凱斗の眼に光が戻り、采希を見返す。

 その身体から、ごうっと音を立てて金色の炎が上がった。


「琉斗、もう離していいぞ」

「……もう平気なのか?」

「ああ。よく抑えてくれたな、上出来だ」


 思わず笑顔になった采希に、琉斗も嬉しそうに笑った。



「采希兄さん、那岐兄さん、行くよ」


 榛冴の号令に合わせ、龍神(ナーガ)が作っていた結界から四神が飛び出す。

 師父と呼ばれていた男の周りを四神が囲み、小さな結界を作って男を封じ込めた。

 何処かから供給されていた力の潮流が止められた男が、慌てた様子をみせる。


「──くっ……このような結界など、逆に利用してくれる!」

「そんな訳には、いかねぇな」


 ゆっくりとした足取りで、凱斗が男に近付く。金剛杵は再びその姿を、錫杖に変えていた。

 歩くたびに錫杖の先端の光の輪が、りんと音を立てる。


「よくも俺をダシにして大事な家族を捕らえようとか、そんなふざけた真似をしてくれたな」


 その声音は至って穏やかだが、眼が全然笑っていない。


「そんなに警戒しなくていいんじゃね? お前ら、俺をバカにしてたじゃねえか。何だっけ? 『宝の持ち腐れ』『役立たず』。それから……『見掛け倒し』だったか?」


 俯きがちに男を睨みつけ、錫杖を鳴らしながら近付く。

 自分ならこんな状態の凱斗とは対峙したくない、と苦笑しながら、采希は弓に変化した琥珀を構える。

 狩衣姿の男はそれでも能力者だ。凱斗が纏った力に気付き、一瞬眼が泳ぐ。


「お、逃げようってのか? 本気で俺から逃げられると思ってんのか?」


 男の頬が歪み、宙に浮かんだ身体がぐらりと傾ぐ。


「天乙貴人、(ばく)!!」


 凱斗の声に応えた力が、光の触手のように凱斗の持つ錫杖から繰り出され、男の身体に何重にも巻き付いた。


「采希、行け!」


 凱斗のその合図で采希は一気に弓を引き絞る。



「ナーガ、あいつの中から力だけを消し去りたい。──力を貸してくれ」


 采希の言葉に応え、矢が金色に輝く。

 解き放たれた矢は真っすぐに男の胸を貫いた。

 男の放った式神たちが次々に霧散していく。

 硬直した男の身体から、黒と紫の煙のようなモノが立ちのぼり、男の身体ががっくりと力無く屋上に倒れ込んだ。


「まだ終わっていない! 采希兄さん、地龍さまを!」


 榛冴の叫びに、采希は慌てて再び弓を構える。


「琥珀、瀧夜叉、サーガラの解呪だ!」

《承知いたしました》


 今度の矢は、真っ白な光を纏う。

 矢は地龍の前で弾けるように細かい粒子となり、地龍の全身を包み込んでその身体に吸い込まれた。


(──終わった……のか?)


 大きく息を吐き、采希は両腕をだらりと下げて天を仰ぐ。


 空には満点の星が、輝いていた。



 * * * * * *



「どうして瀧夜叉──五月姫はあの陰陽師の呪に対抗できたんだ? 苦手だったんじゃなかったのか?」


 采希は手の平に乗せた、小さな剣を模った紫水晶に語り掛ける。

 縁側に降り注ぐ太陽光を受け、鮮やかに煌いている。


《あの系統はな、今でも苦手だと思うぞ。でもあいつは、(くだん)の陰陽師の血筋ではないからな》

「ああ、やっぱり違ってたのか。本人は子孫だと信じてたみたいだけど」

《紛い物でよかったな。真の力を持つような相手なら、恐らくお前でも勝てなかっただろうな。──どうやら、まだ後ろに何かの組織が絡んでいるようだし》

「まだ、他にいるのか?」

《瀧夜叉と三郎の感じた手応えでは、奴らにあの巨大なドームごと次元をずらす程の技術(うで)はないそうだ。采希の力の方が上だと言っていたぞ》


 采希は石を乗せていない方の手の平を見つめる。


(──俺の力なんて……)


 自分ひとりでは凱斗を救い出す事など困難だったであろうことは自覚していた。

 たくさんの助けがあったから乗り切れた、と采希は思っていた。


(俺の、縁……か)


 自分の世界には、家族や数少ない親しい者たちがいればそれでいいと思っていた。

 でもこれからも自分たちが無事に暮らしていくには、色んな人と縁を結んでいかなければならないのではないか、とふと思い、心から憂鬱な気分になる。



「俺、こんなに何度も助けてもらって、あきらにどうお礼をしたらいいのか分からない。それと、ロキ達あきらの眷属のみんなにも」

《お礼はいらないだろう。友達だからな。三郎たちも、お前が気に入ったから力を貸したんだ》


 相変わらずの真っすぐな言い方に、思わず笑みが零れた。


「友達なのは事実だけど、感謝の気持ちは示したいだろ。一度、ちゃんと会わないか? 前に言ってたあきらの叔父さんにも教えてほしい事があるし、どこに住んでるのか、教えてくれ」

《あー、(れい)さんは人見知りだからな、良ければ私が教えるぞ》

「お前が自分で『教えるのは苦手』って言ったんじゃねぇか」

《……そうだった。それに、来ても多分会えない》

「…………え?」


 思いがけない返答に、ちょっと腰を浮かせる。

 反動で足が縁側の縁に掛かって滑り落ちそうになった。


《あ、いや、采希に会いたくない訳ではなくてだな、むしろすぐにでも会いたいんだが……私には分かったんだ。お前と私は、この現世(うつしよ)の身体で出会うことはない》

「──あきら? 言っている意味がよく……」


 戸惑う采希の眼に、こちらを見て呆然と固まっている凱斗と那岐が映った。


「今のって──」

先見(さきみ)の巫女の予言、に聞こえたな」


 ぽそりと呟いた凱斗と那岐を、采希は思いっきり睨みつけた。


「あきら、今のは先見の予言か?」

《──ああ》

「ロキが言ってた。未来は確定じゃない、あるのは可能性の未来だってな」

《…………》


「待ってろ。絶対、お前に会いに行く」

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