表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強竜殺しの弟子   作者: つぶれたアンパンみたいな顔の人
第一章 いざ、竜狩りへ!
7/57

第007話 ザックスの反撃

「はぁ……、はぁ……」


 白髪の後ろ髪を揺らしながら、ザックスは石橋を駆ける。

 早鐘(はやがね)を打つ心臓。大地を揺らす衝撃(しょうげき)翡翠(ひすい)の竜が、壁越しに(せま)っているのを感じる。ザックスは焦燥(しょうそう)を禁じ得なかった。

 大きな衝撃に、ザックスの体が一瞬だけ宙に浮く。多少よろめきながらも、背後の大扉から出来る限り遠ざかろうと必死だった。

 ザックスが橋の中腹(ちゅうふく)まで差し掛かった頃。背後から轟音(ごうおん)が鳴った。石の雨が降り注ぎ、ザックスは橋へと打ちつけられる。


「――――っ!」


 突っ伏して丸くなるザックス。苦悶(くもん)の表情を浮かべながらも頭をかばって、なんとか石の雨をやり過ごした。石雨が止むと、背後から轟雷(ごうらい)のごとき雄叫(おたけ)びが天を(つらぬ)く。

 大扉を突き破った巨大な竜頭が、鎌首(かまくび)をもたげながらザックスを見下ろしていた。


「あのでけぇ扉を頭突きでぶち抜いたってのか? くそったれ……っ!」


 翡翠竜は(うな)り声を上げながら、首を振る。その(さま)は、扉から突き出した首が引き抜けずにもがいているように見えた。


「はん、この間抜けっ! 格好の標的じゃねぇか」


 好機(チャンス)。ザックスは起き上がって腰に(たずさ)えたガン・ソードを引き抜いた。

 指ぬきグローブをはめた手でグリップをしっかりと握る。ガン・ソードを脇に挟み込み、大きな銃口を竜の方へと向けた。


「今度はとっておきをお見舞いしてやるぜ。覚悟しなっ!」


 ザックスはほくそ笑み、銃身の下部から空になった魔力莢を取り外す。それを石畳に投げつけると、腰につけたポーチから替えの魔力莢を取り出した。()めるような動作で素早く装填する。

 グリップを脇にはさみながら、手をトリガー部分へと移した。額にかけたゴーグルをおろし、銃口を竜の額へと向け狙いを(さだ)める。


「くたばりやがれぇぇぇぇっ!」


 ザックスがグリップを引く。銃口へ魔力が集まり紫色に輝きだした。先ほどより、多くのエネルギーを注ぎ込んだ。一回り大きな紫の光は、竜の額へ向けて一直線に駆けだした。

 翡翠竜の瞳が光球を視認するのとほぼ同時。飛び出したエネルギー弾は爆音と共に、紫色の粒子を飛び散らしながら爆ぜた。


「なん、だと……?」


 ザックスの渾身(こんしん)の一撃は、中空で紫色の光鱗(こうりん)をちらつかせて消えていく。対する竜は、引いてダメならとその巨体を大扉へ押し当てて壁を破壊。翡翠色の全身をあらわにした。

 圧倒的な存在。人類の叡智(えいち)を集めて作られた武器をもってさえ傷ひとつ付けられず、堅牢(けんろう)な大扉をもってしても防げないその行軍(ぎょうぐん)。竜こそが、この世界の覇者(はしゃ)たる所以(ゆえん)だった。


『ところで、ザックス。よもや間違うことはねぇと思うが、緑色の竜はもう一種類いる。そいつは翡翠竜といって、長い首と尾を持ち、四足で歩く巨大な竜だ。額に生える二本の角は、市場で高い値がついていてな、良い(かせ)ぎになる。だが、鉄壁の魔力障壁を(あやつ)るそいつは、一筋縄では倒せねぇ。まだお前には荷が重い相手だろうから、もし出会っても絶対に手を出すなよ。警戒心(けいかいしん)が非常に強い翡翠竜は、こちらが手出ししなけりゃ、絶対に(おそ)ってこない。やれない相手じゃあないが、狩るにはそれなりの準備が必要だ』


「……おせぇよ、クソハゲ」


 今さら思い出したビゴットの言葉。ザックスの口から悪態(あくたい)がついて出る。


「なーんか、おかしいと思ってたんだよな。翼竜(よくりゅう)っていう割には四足で走るし、魔力が無いっていう割には魔力障壁が飛び出してくる。アレがこいつ自身の仕業(しわざ)だっていうんなら、ここも沼地なんかじゃねぇよな、きっと」


 ザックスはようやく合点(がてん)がいき、自分が見当違いなところへたどり着いてしまった事に気が付いた。


「しかしまぁ、ここまで来ちまえば大丈夫だろう。あいつの図体(ずうたい)じゃあ、どうやったってこの橋は渡れねぇだろうし」


 森と遺跡を(つな)ぐこの大橋は、人間が渡るために作られたもの。せいぜい人が往来(おうらい)できる程度の広さと頑強(がんきょう)さがあるくらいで、竜が渡ることなど不可能だった。

 ザックスは翡翠竜に見切りをつけると、対岸へ向けて足を()み出した。


「ガアァァァ!」


 だがしかし。こともあろうに、翡翠竜は橋の上に強く前足を踏み出した。

 竜の足元から盛大に亀裂(きれつ)が走ると、石橋は(はし)から(くず)れ始めた。


「あんの馬鹿野郎! 何てことしやがる!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ