第057話 新天地を目指して
明くる日、ザックスが約束のドラガリア正門前に行くと、馬車の横でたむろするネルビスとマーブルがいた。
「よお。どうやら、俺が最後みたいだな」
ザックスはふたりに軽く挨拶をし、背負っていた旅用の荷物を馬車に積み込む。
「それじゃあ、出発だな。目的地はディストリアだ」
ザックスが言うと、マーブルがザックスの側に寄って来た。
「お母さまが見つかるといいですわね」
マーブルがザックスの肩に手を置いた。
それを尻目に、ネルビスはザックスに一言申す。
「ところでザックス、協会には寄って来たか?」
「あ……」
ザックスは忘れ物を思い出し、頭に手をやる。
ネルビスはひとつため息をついて、自身の鎧の隙間に手を刺し込んだ。
「そんなことだろうと思った。案ずるな、お前の会員証は俺が預かっておいた」
ネルビスは懐からザックスの会員証を取り出す。
そのまま、会員証をザックスに投げ渡した。
「ザックス、任務のことも一緒に忘れてないだろうな」
ネルビスの嫌味も一緒に飛んでくる。
ザックスは口を尖らせてネルビスへ言葉を返した。
「分かってるよ。火竜『アラネーア』の討伐だろ? どんな竜が相手でも、俺がぶっ飛ばしてやっから、心配すんな」
「ふん。そう言って一人突っ走って勝手に食われないかが心配なんだよ、お前は」
「あんだと、この野郎!」
「今度はワイバーン狩りの時のようなヘマはしてほしくないものだな」
「っ変わらず陰湿な野郎だよな。あんときのことまだ根に持ってんのかよ」
「なんだ、覚えてたのか。忘れっぽいお前のことだから、頭の中からすっかり抜け落ちてるのかと思っていたのだが」
「さっきからバカにしてんのかテメェ?」
「馬鹿に馬鹿と言って何が悪い」
ネルビスの言葉にカチンと来て、ザックスがネルビスに掴みかかろうと手を伸ばした。
「喧しいですわ! まったく、どうしてあなた達はそうやってすぐ!」
マーブルが一喝した。
ザックスとネルビスは驚いてマーブルを見る。
目を吊り上げ、腰に手をあてたマーブルが二人を睨みつけていた。
「まったく、あなた達のすべきことは、荷物の護衛をしながら次の目的地に着くことでしょうに。道中で襲われる前から仲間に襲い掛かってどうするんですの?」
ザックスとネルビスは互いに額を突き合わせて、睨み合う。
「こいつが仲間?」
「ふん、とりあえず協力者ではあるか」
二人の様子をみて、マーブルは頭に手をあてて肩を落とす。
「……はぁ、先が思いやられますわ」
こうして、ザックスは晴れてひとりの竜追い人となった。
ザックスは空を見上げて、ふと思う。
ビゴットの契約――俺が他の連中と活動することで、たぶん、それは果たされる。
ダンクルーザーの思惑――いまだに何を考えてるか分からない奴だけど、今回の遠征には何か意味があるのかもしれない。
今朝の天気は、雲と青空が半々だった。
(もしかしたら、近いうちに雨が降るかもな)
ザックスは、今後どう転ぶかも分からない朝の空に見切りをつける。
そうして、自分の本当の親を求めて旅路につくのだった。
ここまでで一区切りです。
続きは考えてはありますが、また書きためが出来たら投稿していこうかと思います。
評価して頂けると執筆意欲がわきますので、よろしくお願いします。




