第053話 門出
打ち合わせが済み、マーブルが先に別れを告げて出ていく。
その場に取り残されたザックスとネルビスは、顔を突き合わせた。
最初に口を開いたのはネルビスだった。
「お前はこれからどうするつもりだ?」
「とりあえず、明後日に向けての準備だな。このまま、旅道具の買い出しに行くつもりだぜ。そのあとは、親父から何かアドバイスでも貰おうかと思ってる」
「そうか。俺はこれから馬車の手配などをつけてくる。時間があったら、拠点に寄っていくと良い。団員たちにも挨拶くらいしてやってくれ」
ネルビスの言葉を受けて、ザックスは思い出したように手を打った。
「お、そうだな。お前んとこの奴らには世話になったもんな」
「うむ。酒代は俺が払っておく。今なら、あいつらもまだアジトにいるはずだ」
ネルビスに言われて、ザックスは席を立った。
片手を上げてネルビスに挨拶をする。
ザックスはネルビスと別れ、その足で団員たちのたむろする拠点へと向かった。
「ちーっす」
軽快な声をあげて、ザックスがネルビス団アジト出入り口の引き戸を開けた。
「お、ザックス君じゃないっスか。旦那はまだ出かけてるッスよ?」
いち早く気が付いたのは、ザックスと年齢も近い若手のチャパッツだった。
「いや、今日は挨拶に来たんだ。ネルビスから言われてよ」
「ああ、そうなんスか。それじゃあ、ネルビスさんが遠征に行くって話は聞いたんで?」
「まあな。実は俺も、ディストリアへの遠征に参加することにしたんだ」
ザックスが後ろ手を組みながら壁にもたれかかる。
ザックスの話を聞き、チャパッツが「あっ」と呟いて頭を下げた。
「ということは、無事竜追い人の登録が済んだんスね。おめでとうございます」
「おう。そういや、ネルビス以外の面子は参戦しないのか?」
ザックスが気になって周りを見渡すと、無機質な壁の奥からクローヒゲが顔を覗かせた。
さり気に、話を聞いていたクローヒゲがチャパッツに代わって答える。
「我々は、こちらに残って旦那の分まで仕事しなきゃいけないでやすから。今回は旦那だけで向かうっておっしゃってやした」
「そっか。それなら、仕方ねぇな」
ザックスが残念そうに零す。
するとチャパッツが、少し慌てた様子でザックスに言った。
「ちょっと、待ってて欲しいっス。みんなを呼んでくるっスから」
チャパッツが奥に行く。
奥で団員たちの話し声がしたかと思うと、すぐに副団長のグラッツ、荷物を置いたクローヒゲ、そばかす顔のカッス、水を飲みながらデーブ、そして、最後尾にチャパッツの五人がぞろぞろと出てきた。
「チャパッツから聞きましたよ、ザックスさん。団長と一緒に、今回の遠征にいくのだそうで。頑張ってください」
グラッツがザックスの手を握る。
「おう。ところで、お前らはネルビスがいなくて大丈夫なのか?」
「ええ。旦那が不在の間は、私が責任を持って代理を務めさせていただきます。ですから、ドラガリアは私達に任せて行ってきてください」
「頑張って、くっださいね」
グラッツとデーブがザックスに激励の言葉をかけた。
「おう、あんがとな!」
ザックスがグラッツの手を握り返して、軽く振った。
続けて、カッスが前に出る。
「へへっ、短い間だったけど、世話になったな。気を付けて行って来いよ」
「ああ」
カッスの言葉に、ザックスは鼻をこすって頷いた。
「また戻ってきたら、一緒にウマい飯を食いに行くッスよ」
最後に、チャパッツが後ろから手を振った。
「そうだな。それじゃ、元気でな!」
ネルビス団のメンバーと一通り挨拶をかわすと、ザックスは買い出しに向かった。




