第051話 決意新たにドラガリアへ
協会へ向かう途中だった。
行き交う人々の中に、銀の甲冑を身にまとったネルビスがいた。
眉をしかめて固い表情で歩くネルビス。
何かに悩んでいる様子だった。
マーブルがネルビスを見つけると、隣にいるザックスの裾をつまんでネルビスを指さす。
ザックスもネルビスが居ることに気が付くと、ふたりは近づいて行った。
「おはようございます、ネルビスさん」
「よ、ネルビス」
マーブルが手を振りながら、ザックスは片手をあげてネルビスに声をかける。
声をかけられて、ネルビスが顔をあげた。
「マーブル、それにザックスもか。ちょうど良かった。その調子だと、体調に問題はないようだな」
「ああ、心配かけたな。ところで、朝から浮かない顔してどうしたんだ?」
「この前の件なんだが……実は、お前の名簿登録について、ダンクルーザーに催促されていてな。一応、お前の考えを聞いておこうと思っていたのだ」
「ああ、その件なら。これから登録の手続きをしに行くところだぜ」
「そうか……」
ザックスの返答にネルビスは歯切れ悪く返し、沈黙する。
何か思うところがあるネルビスの態度に、ザックスは不思議に思って顔を覗き込んだ。
「どうした? 登録に行ったらまずかったか?」
「いや、そういうわけでは無い。俺としては、そこまで急いで登録することでもないと思っているんだがな。ダンクルーザーとしては、優先的に手続きを済ませるから是非にと言っていたのだ」
「なら、いいじゃねぇか」
「うむ……。それでは、俺も同行しよう」
そう言って、ネルビスは浮かない顔のままザックスとマーブルの二人の後ろをついて歩く。
マーブルとザックスは顔を見合わせて、首を傾げていた。
ネルビスの手引きもあり、ザックスの登録申請は滞りなく終わった。
「助かったぜ、ネルビス」
「なに、たいしたことではない。さて、登録申請も済んだことだ。ダンクルーザーのあの態度だから、申請が拒否されることはあり得ないだろう。これで、お前も晴れて公式に竜追い人になったというわけだ」
「ああ、よろしく頼むぜ」
ザックスが手を差し出す。
ネルビスは、それを快く握り返した。
「うむ、こちらこそ歓迎する。会員証だが、明日には出来るはずだ」
マーブルが、「良かったですわね」と言ってザックスの肩を小突く。
ザックスは少し照れくさそうに、頭を掻いてはにかんだ。
ふたりの様子を大人しく眺めていたネルビスだが、ひとつ咳ばらいをすると、思案していた要件を切り出した。
「ところで、さっそくで悪いのだが。実は、ダンクルーザーより言伝を預かっていてな。依頼の話だ」
「え、早くね?」
驚くザックスに、ネルビスは罰の悪そうな顔で答える。
「お前が登録を渋っていれば、俺一人で行くつもりだったんだが……。結局、ダンクルーザーの思惑通り登録をしてしまったのだから仕方が無い。お前にも、依頼を伝えなければならなくなった」
ネルビスの言葉に合点がいき、マーブルとザックスは「そういうこと」と頷いた。
とはいえ。ネルビスの態度にザックスは納得したが、ザックスには竜追い人の依頼よりも、先にやっておきたいことがあった。
「つっても、俺はこれからディストリアに行くつもりだったんだけどなぁ」
「ふん、それはちょうど良かったな。依頼の方も、目的地はディストリアだ」
「なんだって?」
ネルビスからの意外な申し出に、ザックスは面をくらう。
ネルビスはそんなザックスを尻目に、ザックスの背後にある建物を指さした。
「詳しいことはそこの酒場で話そう」
「私も一緒に聞いてもよろしくて?」
マーブルが興味深そうにネルビスを見つめる。
「構わん。何なら、一緒にディストリアまで同行したって良い」
「あらそうですの? それでは、わたくしもご一緒させていただきますわ」
ワイバーン討伐作戦では参戦できなかったこともあり、マーブルは嬉しそうに小さく跳ねた。
「まじかよ……」と呟いて頭を掻くザックスだが、マーブルがその手を引く。
「さ、行きますわよ、ザックス」
早くもその気になっているマーブルに引っ張られ、ザックスも渋々ネルビスの後をついて行った。




