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第040話 爆槍

 路地に入りザックスが振り返ると、三人の男たちが立ちふさがった。ザックスはこの状況など全く意に介していない。


「ここまで来りゃ、一般人に迷惑はかかんねぇだろ。さ、話を聞かせてもらおうか」


 ザックスが言うと、剣山頭の男は背負っていた斧を掴んだ。続いて、オールバックの大男が腰の剣を引き抜き、根暗男がかぎ爪を装着する。


「おいおい、全然話合う気ねぇな、お前ら」


「当たり前だ。舐めた口ききやがって。とっとと武器を置いて降参するなら、半殺しで許してやる」


「まあ、お前らがそう言うなら……ほらよっ!」


 ザックスはガン・ソードを引き抜くと、剣山頭の顔面に向けて投げつけた。


 剣山頭は斧を薙ぎ払い、ガン・ソードを弾く。


 ザックスは、男たちがガン・ソードに引きつけられている間に跳躍していた。


「ばかめっ! こっちは三人いるんだぞ、そんな目くらましが通用すると思ったか!」


 剣山頭の上方から迫るザックスに、オールバックの男が剣を突き出す。続いて根暗男が飛びかかった。


 ザックスは突き出された剣を両手で挟むと、自身の落下を止めて体を捻る。目測を誤った根暗男のかぎ爪がザックスの脇を通り過ぎたところで、ザックスは壁を蹴り、隙だらけの脇腹へ強烈な蹴りを見舞った。


「ぐほぁ!」


 悲鳴をあげ、根暗男が蹴り飛ばされる。


「この野郎、離せ!」


 オールバックの男が剣を振るいザックスを地面へ叩きつけようとするが、ザックスは剣を手放すと、そのまま落下して剣山頭の後頭部へ膝を落とした。


「がっ!」


 剣山頭が前のめりに倒れる。


「ちょこまかと、このっ!」


 オールバックが剣を大きく横なぎに振るうと、ザックスはしゃがんで躱した。


「やっぱり、てめぇら大したことねぇな」


 ザックスはオールバックを下から見上げ、八重歯をむき出して笑う。


 すかさず、大ぶりで隙を見せたオールバックの顎へ向けて掌底を放った。


「ぉごっ!」


 ザックスはオールバックの大男を突き飛ばし、煉瓦造りの壁に叩きつけた。


「てめぇら如きには、こいつを振るうまでもなかったな」


 剣山頭に打ち払われたガン・ソードを拾い上げる。


 そのまま帰ろうと振り返ると、剣山頭が立ち上がった。


「おいおい、なに勝手に帰ろうとしてんだ、クソガキ」


「お、まだやんのか? 思ったよりタフだな、お前ら」


「当たり前だ。俺たちゃ歴戦の竜追い人だぜ。新人とは鍛え方が違うんだよ」


 壁に叩きつけたオールバックの男が、口から血を吐き捨てる。


「ケケっ。骨のある新人だ。狩りがいがあるぜ」


 蹴り飛ばされた根暗男も合流した。


「そういや、そうだったな。まあ、親父の武勇伝を聞く前にのしちまったら、しょうがねぇし。ちょうどいいか」


「その余裕、ビゴットにそっくりだな。本当にムカつく野郎だぜ」


「その口ぶりだとお前ら、親父と面識あんだろ?」


「ああ。俺たちは、新人の頃に行った狩りでビゴットのクソ野郎に狩りを邪魔されたんだ。今でもアレは許せねぇ」


 剣山頭が拳を握り、怒りをあらわにした。続いて、オールバックの男も語りだす。


「横からしゃしゃり出て来たくせに、俺たちに難癖つけて獲物を横取りだ。竜追い人の風上にも置けねぇクソ野郎だ」


「ヒヒっ、横取りされた“重竜胆”は高値がつくって聞くしな。他人の獲物を奪って得た金で食う飯はさぞ旨かっただろうな」


「あん、俺の親父が? 何かの間違いじゃねぇか、それ?」


 男たちの難癖に、ザックスは耳を疑った。


「ビゴット以外に“爆槍”を叩き落とせる奴なんているわけねぇだろが!」


 剣山頭が怒声を飛ばす。


「なんだ、その“爆槍”って」

「こいつだよ」


 オールバックの男が、背負っていた長槍を取り出した。


「こいつは、重竜『ウルサス』を狩るために使う対竜武器だ。どんな分厚い皮膚を持とうと、こいつにかかれば風穴を開けてやれる」


「そんなスゲェ槍には見えねぇけどな。それに、テメェらみたいなのが持ってたとしても宝の持ち腐れだろ」


「なら、てめぇの体で試してみるか?」


 オールバックの男がこめかみに青筋を立てて、爆槍を構えた。


「おいおい、それ人に向けるもんじゃねぇだろ……」


「知るかボケ。後悔ならあの世でしな。テメェをぶっ殺して、その武器をいただくぜ。おい、クラーク、二ドル。例のフォーメーションだ」


「おう、こっちは任せなブランド」


 剣山頭の二ドルが走り出す。


「ケケっ、覚悟しろよ、白髪野郎」


 続いて根暗男のクラークが地を蹴り、煉瓦壁を足場に駆けだした。


「おらぁ!」


 大ぶりで斧を振り回す二ドル。ザックスはその場で跳躍し、薙ぎ払われた斧を躱した。


「ヒヒっ、そこだ!」


 壁を蹴り、クラークがかぎ爪を突き出して飛びかかる。


「バーカ、そんな見え透いた攻撃が当たるわけねぇだろ」


 ザックスは二ドルの頭を踏みつけ、更に跳躍した。


「なにぃ? 俺を踏み台にしたぁ!」


 頭を蹴飛ばされた二ドルが再度地面に突っ伏する。


 飛び出したクラークはザックスの脚下を素通りした。


「馬鹿はテメェだ! その態勢でこの槍はよけられねぇ、死ね!」


 大男のブランドは、爆槍の下端にある石突を地面に叩きつける。石突部分が割れると、白色ダークマターの欠片が飛び散った。


 柄の上方を持った左手で跳躍したザックスを追い、右手で握った下方を動かして素早く位置を微調整。素早い動作でザックスへ狙いを定める。程なくして、槍の筒中で爆発が起こると、穂先が猛烈な勢いで飛び出した。


「面白れぇな、それ!」


 しかし、ザックスは自身へ向けて飛んできた弾丸のごとき爆槍の穂を事もなげに捉えガン・ソードで殴りつけた。


「ヒョッ!!?」


 驚いたのは、根暗男のクラーク。叩き落とされた穂先が煉瓦壁に着地したクラーク目掛けて飛んできたのだ。


 ガッと音を響かせ、爆槍の穂はクラークの首元ギリギリを掠めて壁に突き刺さる。纏っていたローブを刺し貫き、クラークはそのまま磔にされた。


 ザックスは難なく着地すると地面を蹴り、驚きで硬直するブランドの喉元に右手で持ったガン・ソードを突き付けた。


「ば、ばかな! お前、人間か?」


「おう、親父にみっちり鍛えられてるからな。お前らみてぇなのとは鍛え方が違うんだよ」


 ザックスはそう言って、空いている左手でブランドの頬を思い切りぶん殴る。


「べへもっ!」


 ブランドは盛大に壁へ叩きつけられ、気を失った。


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