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第039話 因縁?

「協会本部で、いったい何をお話しして来たんですの、ザックス?」


 外で待っていたマーブルが、ドラゴンビジネス協会から出てきたザックスの横に並び声をかけた。


「まー、何か面白いもんを見せてもらったぜ。なんちゃらアイっていう、竜の居所が分かるアイテムなんだと」


「星杖『ドラゴン・アイ』ですわね。式典で何度かお目にかかったことがありますわ」


「式典?」


 色とりどりに塗装された煉瓦造りの街並みを歩きながら、ザックスは疑問とともにマーブルへ視線を向ける。


「ええ。四年に一度行われる一大行事『ドラゴンレース』の優勝賞品ですもの。もしかして、ザックスはご存知ありませんの?」


「いや、知らねぇな」


 ザックスは頭の後ろに手を組みながら、街並みに視線を戻す。竜狩りのため修行ばかりだったザックスは、その手の世事に疎かった。


「あら、そうなんですの? 『ドラゴンレース』は、ここドラガリアだけでなく、主な貿易相手の『ディストリア』、国家として古くから竜狩り部隊を擁する『ミリタリア』の三国共同の行事ですわ。次の開催はまだ二年後ですけれど、今回のドラゴンレースは前回優勝国であるドラガリアが主催となって『ドラゴン・アイ』の返還式と、レースの開催を行う事になっているのですわ」


「返還式? 誰かに返すのか?」


「ええ。星杖『ドラゴン・アイ』は竜神『ヨルムンガルド』のものですから。もちろん竜神様は実在しませんから建前だけではありますけれど、それを返還するのが、レースの前に行われる返還式という儀式ですの。そのすぐ後にレースの開会式が行われ、レースが始まるという段取りですわ」


「へぇ。そんなことやってたんだな」


「他人事ですわね。もしかしたら、ザックスがこのレースに参加することになるかも知れないのですわよ?」


「へ、俺?」


 ザックスが、後頭部から手を降ろして驚きの声を上げる。


「そうですわ。レースに参加するのは、各国を代表する二名の竜追い人ですの。ドラガリアからは、多分ネルビスさんが抜擢されるとは思いますけれど……もう一名の枠に、もしかしたらザックスが入れるかもしれませんわ」


「いや俺、まだ竜追い人の登録もしてねぇんだぜ?」


 マーブルの期待に満ちた青色の眼差しを受け、ザックスが慌てて手を振った。


「え、先ほど協会本部で登録してこなかったんですの?」


「ああ。何となく、まだ気になることがあってな」


「気になること?」


 マーブルが怪訝そうにザックスの顔を覗いた。


「親父がな。公式の竜追い人として登録してないんだと」


「え、そうなんですの?」


 マーブルは驚きに目を丸くして口に手をあてた。


「てっきり、ビゴットさんも公式の竜追い人だと思っていましたわ。でも、いったいどうして登録しないのかしら?」


「さあな。俺もそこんとこ聞いておきたくて、とりあえず保留にしといたんだ」


 ザックスはふと顔をあげて、立ち止まった。


 入口へ案内される際に、ネルビスが登録所の場所へ連れていこうとしたが、ザックスは何となく釈然としない気持ちであったため、すぐの登録を断っていた。


 ネルビスは「登録は急ぎの事でもない。ゆっくり考えると良い」とだけ言い、素直に引き下がった。ダンクルーザーとのやりとりもあってか、ザックスは嫌にあっさりと引き下がったなと、不思議に思っていたところだった。


「おい、そこのお前。ビゴットの後継者だろ?」


 ふいに、ザックスの背後から声がした。


 ザックスとマーブルが振り返ると、中年の男性が三人。


 ガタイの良い軽装の男たちがザックスを睨みつけていた。


「ああ、何だおめぇら? ガン飛ばしてんじゃねぇよ」


 ザックスが怪訝な顔で睨み返す。


「もしかして、あなた達……ネクストステージではありませんこと?」


 マーブルが先頭に立つ剣山頭の男を見て、呟いた。


「ネクストステージ?」


「ええ。いわゆる“新人狩り”でちょっと名の知れたゴロツキのような連中ですわ。公式に認められた新人の竜追い人から武器を奪い、それを使って竜を狩るという悪質な竜追い人と聞き及んでおりますわ。もしかして、ザックスの武器を狙って……」


 ザックスの問いに、マーブルが答えた。マーブルの頬に、僅かな冷や汗が垂れる。


 剣山頭の男が顎をしゃくりながら、


「おう、新人のくせに俺たちの事を知ってんのか。それなら、話は早えな」


 路地裏の方を親指でさしながら、ザックスに言う。


「ここじゃなんだ。ちょっと向こうで話をしようか、ザックス君?」


 ザックスはちらりとマーブルを見やり、耳打ちする。


「マーブル、お前は先に帰ってろよ。こいつらは俺が片付けておく」


「大丈夫なんですの? 彼らは、曲がりなりにも竜追い人ですわ。それも、三人も相手に……」


「ま、何とかなんだろ。こいつら、見かけほど強そうに見えねぇしな」


 ザックスが、今度は剣山男たちに聞こえる程度の声量で言い放った。


「ぁんだと?」


 ニヒルな笑みを浮かべるザックスに対し、剣山頭は青筋を額に浮かべて先ほどまでの不敵な笑みを崩す。


「いや、カッコイイねぇ。ザックス君って言ったっけ。昼間から女をはべらせて歩いてるだけあって、随分と余裕がある。さすが、ビゴットの後継者ってことかな」


 剣山頭の後ろに立つ、オールバックの大男がしゃしゃり出てきた。身長はザックスよりもわずかに高く、やや見下すような目でザックスを見つめている。


 ザックスは赤い瞳でオールバックの男を睨むと、向き直った。


「おめぇら、親父のこと知ってんのか?」


「ケケっ。知ってるも何も、ビゴットは竜追い人の間じゃ有名人だからな。その腰の武器を見りゃあ、一目瞭然だぜ」


 前髪の長い根暗そうな男が笑った。


「まさか、あいつに子供が居たとは思わなかったが……今日はツいてるな。こんなレアもんが手に入るなんてよぅ。ケケケ……」


「何言ってんだ。黙ってくれてやる訳ねぇだろ、干物野郎」


「ひ、ひものやろう……?」


 ザックスの言葉に、根暗そうな男が眉尻をピクピクさせて苛立ちを露わにした。


「てめぇら雑魚どものくだらねぇ話は聞く気ねぇけどよ、何か親父のこと知ってそうだな。ちょっと教えてくれねぇか、親父の武勇伝ってやつをさ」


「なんだ、お前。ビゴットのガキの癖に、自分の親父のことも知らねぇのか?」


「まあな。親父、あんまりそういう話をしてくれなかったんだ。竜の狩り方とこいつの扱い方は嫌程教わったんだけどな」


 ザックスはガン・ソードの柄頭をポンと叩く。


「だから、ちょっと聞いてみてぇんだよ、そういう話。あっちで話そうぜ?」


 言って、ザックスは路地裏を指さした。


「なんだ、テメェ……調子にのってんじゃねぇぞ」


「おいおい、俺は暇人なおめぇらと仲良く世間話しようって言ってんだぜ? そもそも、お前らから誘ったんじゃねぇか」


「良い度胸してんなコラ」


 言い合いながら、四人はぞろぞろと路地裏へと向かっていく。


「ザックス、何であんなに楽しそうにしてるのかしら……」


 マーブルは呆れながら、彼らの後ろ姿を眺めていた。


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