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最強竜殺しの弟子   作者: つぶれたアンパンみたいな顔の人
第一章 いざ、竜狩りへ!
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第031話 窮地

「痛ってぇな、こんちくしょう」


 ザックスは、ガン・ソードを杖代わりにして立ち上がる。すると、


「ギィイイィ」「ギャア」「グゥゥ」


 三頭のワイバーンが、ザックスを取り囲んでいた。


「ちっ……アイツ、まんまとコイツ等が固まっているところへ俺を落としやがったな」


 ザックスがこめかみについた毒を袖で拭いながら、悪態を吐く。

 そこで、ザックスは違和感を覚えた。


「なんだ……どうなってやがんだ?」


 ザックスは左目あたりを触ろうと腕を持ち上げるが、左手は手首からだらりと垂れて動かなかった。


「まさか、あの時に触れた毒か!」


 棘尾を受け止めた際、僅かに触れた毒が、ザックスの目と左手首を麻痺させていた。


 左目を開けられず、左手でガン・ソードを握ることも出来ない。そのうえ、三頭のワイバーンに囲まれているこの状況。


「おいおい、マジかよ……」


 呟き、ザックスは戦慄した。


 開いている右眼には、のそりと歩みながら、大口を開けてザックスへと迫るワイバーンの姿が映し出されていた。


「へっ……こいつは、流石にやべぇな。だがよ」


 ザックスは左わきにガン・ソードを挟み、開いた右手で魔力莢を交換する。


 こんな状況に立たされてなお、シニカルな笑みを浮かべて、ワイバーンをひと睨みした。


「簡単に食われてやるザックス様じゃねぇぜ? 俺を食えるもんなら、食ってみやがれ!」


「ガアァァア!」


 ワイバーンの口が、頭上から落ちてくる。


 ザックスは右手にガン・ソードを持ち直し、左斜め前方へ素早く飛んだ。


 ガチンと歯音を鳴らし、ザックスの居た場所でワイバーンが空を食う。


「こっちだ、木偶の坊!」


 すれ違いざまに、ザックスはガン・ソードを片手で薙ぐ。


 同時に身体を捻って回転力も加え、渾身の力で側頭部を打ち付けた。


「ギィ!」


 短い悲鳴を上げて、ワイバーンがよろめく。


 ザックスが着地すると、大きな影がザックスの背後から覆いかぶさった。すばやく振り向くと、そこには別のワイバーンが足を持ち上げ、ザックスを踏みつぶさんとする姿があった。


「ガァ!」


 ワイバーンの発声と共に、巨大な足が落とされる。


 ザックスはガン・ソードの銃口を向けるも、弾くことは叶わず、そのまま下敷きとなった。


 だが、ガン・ソードが突っ張り棒の役割を果たし、辛うじてザックスが押しつぶされることは無かった。


「その足をどけやがれっ!」


 ガン・ソードを脇に抱えて押し倒された状態でザックスは、トリガーグリップを引き下げる。


 足と銃口の狭間から紫色の光が漏れ出すと、指にかけたトリガーを引いた。


 爆発と共にザックスを押さえつける足は上空へと押し返され、ワイバーンはバランスを崩す。


 態勢を立て直そうとザックスが身体を起き上がらせた矢先。三頭目のワイバーンの牙が襲い掛かった。


「次から次へと、オラァ!」


 ガン・ソードを持ち上げ、襲い来るワイバーンの口の中へ乱暴に放り込む。


 ザックスをかみ砕こうとした牙はガン・ソードに阻まれガチンと音を立てて動きを止めた。


 そのまま、ザックスがトリガーを引こうとしたその時だった。


「ぐぁっ!」


 背後から爪が襲い掛かり、ザックスの脇腹が穿たれた。


 ザックスがガン・ソードから手を放すと、ワイバーンに突き立てられた爪によって黒い大地に押し倒されてしまった。


「この……くそっ……!」


 ザックスは、自身を押し倒したワイバーンを下から睨みつける。


 ワイバーンは首をぶるぶると振るい、両翼を広げていた。最初に側頭部を強打したワイバーンだ。


 ゴトっと、硬いものが地面に落下した。先ほど咥えさせたガン・ソードが、ザックスの脇に横たわっている。


 ズンッと、それを踏みつけるようにワイバーンの足が乗せられた。そして、三頭のワイバーンの顔が、ザックスを覗き込む。


 鎌首をもたげて、口を半開きにしながら息巻いているワイバーンたち。


 ザックスは身動きが取れず、その凶悪な顔を眺めていることしかできない。


 絶体絶命。


「くそったれ……こんなところで……!」


 ザックスが恨み言をこぼし、ザックスを地面に押しつけるワイバーンが口を開いた。


 ワイバーンの表情には、特別な感情など一切なかった。

 単に、獲物である人間を食す。それだけ。


 この世界は、食うか食われるか。

 ただそれだけの単純な摂理が、彼らの掟だった。


 開けた口がゆっくりと迫り、ザックスは死を覚悟する。


「ゴァ……」


 口を開いたまま、ワイバーンの顔が視界から消えた。

 そのすぐ後、ザックスの横に目を剥いたワイバーンの首が落ちた。

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