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最強竜殺しの弟子   作者: つぶれたアンパンみたいな顔の人
第一章 いざ、竜狩りへ!
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第030話 反撃の狼煙

 左右を見回し、どうしたことかと狼狽える傷持ちのワイバーンに、ネルビスは不敵な笑みを浮かべて言葉を投げかける。


「そうか、貴様はまだ見たことが無かったか、我らの対竜ネット捕縛術を。我々人間も、進化を続けているのだ。知恵を持っているのは貴様らだけではないんだよ、間抜け」


「グゥギュルルルル」


 鋭い牙をかみ合わせて、ワイバーンの黄色い双眸がネルビスらを睨みつけた。


「ここからは、我々の反撃だ。行くぞ、ザックス!」

「おう!」


 ザックスはガン・ソードを正面に構える。

 傷持ちワイバーンに向かって正面から突進していく二人。


 ワイバーンは、二人まとめて踏みつぶそうと片足を持ち上げ、鋭い爪を振り下ろした。


 ザックスらは咄嗟に左右へ飛び、踏みしだく足を躱す。


「ふんっ!」

「うらぁっ!」


 ネルビスが剣を水平に、ザックスがガン・ソードを袈裟懸けに振った。


 ネルビスの剣がワイバーンの太い足を切り裂き、赤い線を描く。同時に、ザックスの打ち付けたガン・ソードが脇腹の深緑色をした鱗を叩き割り、陥没させた。


「ギィイイアアアァァア」


 ワイバーンは金切り声を上げると、翼を広げ、地面を這わせ黒い粉塵を上げながら尻尾を左右に振る。

 ネルビスは盾でその攻撃を受けるが、衝撃までは受け止めきれずに弾き飛ばされた。


 次いで、ザックスに棘尾が襲い掛かる。


「ザックス、気を付けろ! 奴の棘尾は毒を持つ。下手に触れると動けなくなるぞ!」


 ネルビスは弾き飛ばされた勢いで地を滑りながら、警告した。


「んなくそぉ!」


 ザックスはガン・ソードを下段で構え振り上げるようにして、迫る尻尾を打ち上げる。


 棘尾の先から紫色をした毒の飛沫が飛ぶが、ザックスには触れずに地へ落ちた。


 尻尾の威力をガン・ソードのスイングで受け止めるたザックスは、辛うじてその場に踏みとどまった。


 ワイバーンが広げた翼をはためかせて、地を蹴る。

 猛烈な疾風がザックスとネルビスを襲った。


 ネルビスは盾を眼前に持ち上げ、猛風を凌ぐ。


「こんの野郎、待ちやがれ!」


 風に晒されながらも、ザックスはガン・ソードのトリガーに指をかけた。紫色の光が銃口に集まっていく。が、その光は常ほどの光を湛えていない。


「くそ、出力が上がらねぇ……だが、この距離ならっ!」


 風に抗い、ザックスは飛び上がろうとするワイバーンに向けて飛びかかった。


 銃口をワイバーンの下腹部に押し付ける。


「くらえ、魔弾の射手(マジック・バレット)!」


 ドンッと音がし、紫色の光が銃口から溢れる。


「グェ」


 ワイバーンは短く悲鳴を上げて翼の動きを止めるとバランスを崩した。


 鱗が割れ、黒煙が立ち上り、黒い弾痕がワイバーンの下腹部に残った。


「このダークマターに囲まれた環境でなお、その威力を誇るか……大した出力だな」


 ネルビスは目を見張り、驚きの念を隠せずにいた。


 だがしかし。傷持ちのワイバーンは、わずかに腹を焦がして束の間その動きを止めただけ。再び金切り声を上げると、翼を持ち上げて大きく振るう。


「ちっ! 浅かったか!」


 ザックスは羽ばたきによる疾風で吹き飛ばされ、地面を転がった。


「奴め、空に逃げたか……あれでは、俺もお前も手出し出来ないな」


 ネルビスが空を見上げると、腹に黒いあざを残したワイバーンは上空で旋回し始めた。


「ちっくしょう、もう少しだったのに。こんな場所でなけりゃ、あれで決まりだったろ」


 ザックスが空の魔力莢を取り外し、再装填しながら悔しそうに悪態を吐いた。


「ぼやいても始まるまい。それより、ワイバーンはまだまだ居るぞ。気を抜くなよ、ザックス」


 ザックスが振り返ってみれば、目の前には一頭のワイバーンが。背中越しで忠告したネルビスの眼前にも一頭のワイバーンが立ちふさがっており、二人は挟み撃ちにあった形だ。


「わあってるよ。ネルビス、そっちは任せた。ヘマすんじゃねぇぞ」


「それはこちらの台詞だ。力技とはいえ、ちょっとは魔力が使えたからといって調子にのるな」


「んだとコラ。誰が調子に乗ってるって? テメェこそ、仲間と群れなきゃ奴を狩れなかったくせに」


「馬鹿を言え。有利な状況で、数の利を捨てて戦う必要があったか? 貴様はそんな単純なことも分からんのか?」


 ネルビスとザックスは、同時に振り向き、互いに牙を剥き合った。


「テメェ、この期に及んでケンカ売ってんのか?」

「脳足りん貴様の戯言を指摘してるのだ、馬鹿めが」


「グギャィアアア」


 挟み撃ちされている状況などお構いなしに言い争いを始めた二人を見て、二頭のワイバーンが金切り声を上げた。大地を踏み鳴らしながら、二頭のワイバーンが突進してきた。


「うっせぇな!」

「少し黙っていろ!」


 ザックスが、振り向きざまに突進してきたワイバーンの頭をガン・ソードで強打する。


 ネルビスも、振り向きざまに突進してきたワイバーンの頭へ鋼鉄剣を振り抜いた。


「ガゲッ!」


 二頭のワイバーンは頭を弾かれ、それぞれが黒い大地に頬を擦り付けながら脇を滑る。


 すぐさま、ザックスとネルビスの二人は、同時にそれぞれ反対方向へと駆け出した。


 互いに、弾き飛ばした竜の頭部に迫る。


 ザックスは横向きで口を開けている竜の眼前に滑り込むと、銃口を口腔へねじ込みトリガーを引いた。紫色の光弾を二発叩き込む。


 一方、ネルビスはザックスが滑り込むタイミングと同時に飛び上がり、竜の目玉へと鋼鉄剣を差し込んだ。


「ギャァアァァアアア」


 二頭の竜は苦悶の叫びを上げると、目を剥いて同時に息絶えた。


「おい、ネルビス。俺の方が仕留めるのにちょっと早かったろ!」


「ふん、俺は一撃で仕留めたのに、貴様は二発も要したではないか。早いだけで倍の手数がかかっているくせに、デカい口を叩くんじゃあない!」


「なんだとぉ?」


 ザックスは拳をわなわなと震わせて、離れたネルビスを睨みつけた。


「だいたい、貴様は魔力量に物をいわせて無駄遣いしずぎだ。そんなことでは、この数のワイバーンを相手にできんだろう。すぐに魔力莢を使い果たし、奴らの餌になるぞ」


 ネルビスは毅然としながら、ワイバーンの元を離れてザックスへと近づいた。ザックスの視線など、まるでお構いなしといった様子だった。


「言わせておけば、てめぇ――」

「ザックス、後ろだ!」

「あぁ?」


 ザックスが振り向くと、別なワイバーンが突進してきており、すぐ側まで迫っていた。


 鎌首を振り上げ、大きな頭が突進力を加えて振り抜かれる。


 ザックスはガン・ソードを構える間もなく、容赦のない力で弾き飛ばされた。


 中空を舞うザックスの全身を衝撃が伝い、外へと発散される。ネルビスとの戦いで見せた受け身技により、全ての衝撃は霧散していた。


 このとき、空中で回転しているザックスは自身を狙う気配に気がついた。攻撃の方向を察知すると、ガン・ソードを振りタイミングをあわせて振りかざす。


 バチンっと破裂音を鳴らして、ガン・ソードは動きを止めた。


 ザックスが弾き飛ばされたところに、空中で様子をうかがっていた傷持ちが待ち構えていたのだ。


 間一髪のところで、尾撃を受け止めることに成功する。が、受け止めた棘尾から紫色の飛沫が噴き出した。


「なっ!」


 ザックスは咄嗟に顔を左腕で庇う。多くの飛沫は衣服に付着したが、防ぎきれなかった数滴の毒が左側の顔や手首に小さな斑点を作った。


「ギュウゥゥギィア!」


 傷持ちが声を発し、尻尾に力が込められる。


 さしものザックスも空中ではこれ以上なす術がなく、ワイバーンの尾撃に翻弄されるまま、地面へ向けて払い飛ばされてしまった。


 強烈に叩きつけられ、黒い大地にわずかな亀裂が走る。


「がはっ!」


 ザックスは背中で受け身を取るも、叩きつけられた衝撃で口から息を吐き出した。


「ザックス!」


 ネルビスが叫び、ザックスが落とされた地点へ向かおうとする。だが、ザックスを頭突きで打ち上げたワイバーンが行く手を遮るように翼を広げてネルビスを睨んだ。


「くっ……邪魔だ、そこを退け!」


 ネルビスは行く手を阻むワイバーンへ盾を向けて、猛烈な勢いで突進していった。

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