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最強竜殺しの弟子   作者: つぶれたアンパンみたいな顔の人
第一章 いざ、竜狩りへ!
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第020話 敵意の理由は

「すましてんじゃねぇぞ、この野郎! ……って、あれ?」


 ザックスが毛布を跳ねのけて起き上がると、そこは白壁で囲まれた広くはない一室だった。マーブルが急に起き上がったザックスに目を白黒させている。


「おい、マーブル。ここどこだ?」


 割と元気そうな様子に、マーブルはとりあえず安堵の表情を見せた。


「よかった。気が付きましたのね、ザックス。ここは、ドラガリア中央にあるシニルク診療所ですわ」


 ザックスがベッドに座ったまま、白壁に開いた四角い吹き曝しを覗く。外は、仄かに朝日が差し始めた頃だった。


「俺は、負けたのか……?」


「ええ……もうすぐ日が昇りますわね。ネルビスさんは、日が昇りきった頃にワイバーン狩りへ赴くそうですわ」


「そっか……」


 ザックスはそれだけつぶやくと、ベッドにぼふりと倒れ込んだ。

 しばらくの間、そのまま二人は沈黙していた。


 ややあって、ザックスが寝ころびながら口を開いた。


「なあ、マーブル。あいつ、何であんなに俺と親父を嫌ってんだろうな」


「そういえば。ザックス、初対面でしょう?」


「ああ。今日、いや昨日か。初めて会った」


 ネルビスの、ザックスに対する尋常ならざる風当たりの強さに、二人は疑問符を浮かべていた。


 白い天井についたシミを眺めながらザックスがぼんやりと考えていると、頭の後ろで手を組み、


「あいつさ、『商売の邪魔をするならば』って言ってたよな。親父、何か邪魔するようなことしてたのかな……」


 ふと、つぶやいた。


 すると、ザックスの言葉にマーブルは、やや気まずそうな気配を漂わせて唸りながら、肘に手を添わせる。


「もしかして、琥珀色の角が過去に出回ったことが、原因なのかもしれないですわね……」


「琥珀色の角って、俺が持ち帰ったアレか?」


「ええ。ザックスは、ネルビスさんの盾に翡翠竜の角が動力として装填されているのをご存知かしら」


「そういや、盾に何かついてたな」


 ネルビスとの試合でザックスは、傍に転がっていた盾をちらりと見ていた。


「あの盾に装填されている翡翠竜の角は、いつもネルビスさんが自前で採って来ているのですわ。私は、それの加工を頼まれることが度々ありますの」


「へぇ。あいつ、自分も狩れるみたいなこと言ってたもんな」


「ビゴットさんが森に籠ってから翡翠竜の角を採ってくる依頼は、主にネルビスさんが請け負っていたと思いますわ。私はその前を知らないのですけれど。そろそろ角の交換時期でしたし、必要な頃だと思っていたからこその提案でもあったのですけれど、あの言い分だともしかしたら……」


 マーブルの考えを受けて、ザックスは得心がいったように頷いた。


「なるほどな。親父が翡翠竜を狩る前は、ネルビスの親父がその仕事を担ってたんだ、きっと。だけど、採って来れる角はあまり質の良い物じゃなかった、と」


「そこに、ビゴットさんが参入して来たわけですのね。ビゴットさんは上質な角を採って来れるから、それを依頼する顧客のほとんどをビゴットさんに取られてしまった」


 マーブルもザックスと同じ結論に至り、同意するように頷く。


「ネルビスさんのお父様は、それが面白くなかったのでしょうね」


「だな。今は親父が商売のための竜狩りをしなくなったから、角が出回らなくなっちまって、再びネルビスのところに顧客が戻ったようだけど」


「でも、ザックスが翡翠竜を狩って、私達があの角を持ってきたから。ビゴットさんが使っていたガン・ソードを携えていたザックスを見て、再びアレを市場に出回らせられるのを警戒したのでしょうね。今のネルビスさんが、仕事を奪われると警戒するのも仕方ないのかも知れないですわ」


「んなこと言ってもなぁ……」


「竜追い人は、命を張って竜を狩るのがお仕事でしょう? そんなに沢山いる訳でもないのに、同業者でいがみ合われても困りますわ」


 ザックスとマーブルは二人で嘆息した。ネルビス一家の恨みを買う原因を作ったのは、ビゴットが過去にしでかした事であると結論付けたまでは良かったのだが。この後、どう対処すればよいのかが問題だった。


「俺は別に、そこんところはあんまり気にしてねぇんだけどな。アイツの態度は気に食わねぇけどよ」


「でしたら、入手方法を教えてあげたらいかがかしら。そうすれば、ネルビスさんも同様の方法で翡翠竜を狩れるし、その方法が定着すれば向こうの懸念も払拭できるんじゃないかしら? ザックスさえ良ければ、だけど」


 手を頭の後ろに組み、難しい顔をしていたザックスは、赤い瞳をマーブルに向ける。


「そんなことで良ければ、全然構わないぜ」


 なら、とザックスは身体を起こした。


 辺りを見回し、ガン・ソードの所在を確かめる。すぐそばの壁に立てかけてあった。


「ザックス、もう動けるのかしら?」

「ああ、問題ねぇよ……っと」


 掛け声とともに跳ね起きて見せる。そしてベッドから飛び降りると、ガン・ソードを拾い上げて、ホルスターを腰に装着した。


「うし。行くぞ、マーブル」


「行くって、これからネルビスさんのところへ?」


「ああ。それと、やっぱり俺もワイバーン狩りに行く」


 マーブルは目を白黒させて瞬きをすると、


「はぁ?」


 素っ頓狂な声をあげた。


「だって、ワイバーンを狩って俺がお前に納品しねぇと、親父に認めてもらえねぇだろ?」


「それはそうですけれど……」


「じゃあ、行くしかねぇだろ。早くしねぇと日が昇り切っちまう。アイツ等に全部持ってかれる前に、交渉に行くぞ!」


 言うが早いか、ザックスは部屋から飛び出して行ってしまった。


「それじゃあ、何のための試験だったのよ……ちょっと、ザックス。待ちなさーい!」


 マーブルは嘆息し、慌ててザックスの後を追っていった。

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