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最強竜殺しの弟子   作者: つぶれたアンパンみたいな顔の人
第一章 いざ、竜狩りへ!
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第017話 試験

 工業都市ドラガリアの中央から西へ行ったところには、石の壁で仕切られた円形の一画があった。そこは、ネルビス一家が管理する土地であり、ネルビスが雇った者達の訓練施設として使われている。先ほどの赭色の建物からは、さほど離れていない。


 一画をぐるりと囲う石壁のうち、一か所にだけ人が通れる程度の簡素な扉が備え付けられていた。申し訳程度に鎖と錠前がかけられており、ネルビスは慣れた手つきで解錠し、鎖をほどいた。


 ネルビスが先頭を行き、次いでザックスたちが石壁の内側へ足を踏み入れる。


 敷地内は荒涼たる様で、手入れが施されている様子もない。まさに、空き地といった景色だが、強いて特徴をあげるとすれば、申し訳程度の掘っ立て小屋が入口の脇に設置されているくらいなものだった。この区画に天蓋はなく、日の光がまぶしい。


「殺風景な場所だな。何にもねぇや」


 ザックスが辺りを見回しながら、ぼやく。


「まあな。俺たちが訓練のために剣を振るうためだけの場所だ。資材が小屋の中にあるくらいで、他には何も置いていない」


「なるほど。で、ここなら邪魔も入らずサシでやれるってわけだ」


 ネルビスが敷地の中央へ歩きながら、横顔だけを後方のザックスに向けた。


「まあ、そういうことだ」


 意気揚々と腕のストレッチを始めたザックスの後ろで、ただついてきたマーブルが小屋の方をみやる。小屋の扉にも鎖がかけてあった。


「ねえ、ネルビスさん。私、特にやることも無くてちょっと退屈ですわ。小屋の中に入れさせてもらってもいいかしら?」


 マーブルが小屋を指さしながら話す。


「だめだ。今日はその中の物を使う予定はないし、勝手に触られても困る。退屈なら、そこで眺めていたらいい」


「……そうさせてもらいますわ」


 ネルビスにバッサリと切り捨てられ、観念したようにマーブルはため息をついた。


 二人の列からは外れ、ひとりマーブルは小屋へ寄りかかる。


「ザックスぅー、さっさと入団試験を終わらせてくださいましー」


「入団なんてしねぇよ、アホ!」


 手をひらひらさせて声をかけてくるマーブルに、ザックスは怒鳴り声で返した。


「……ここらで、いいだろう。さて、始めるか」


 先頭を歩いていたネルビスが立ち止まると、ザックスの方へと向き直る。


「へっ、待ちくたびれたぜ。さっさと始めようぜ」


 ザックスは言うと、腰のガン・ソードへ右手を伸ばし、ためらいなくホルスターから引き抜いた。銃口をネルビスへ向け、腰のポーチから魔力莢を取り出して装填する。


 対するネルビスは体の半分以上を覆う大盾を構え、


「ちょっと待て。先に、ひとつ言わなければならないことがある。重要なルールだ」


 ザックスの動きに警戒しながら待ったをかけた。


「んだよ。先に言えよ、そういうことは。なんだ、ルールって?」


 水を差されたザックスが構えを緩めると、不機嫌そうにネルビスを睨む。


「この戦いにおいて、一切の魔力の使用を禁ずる」


「あ? 何言ってんだ、おめぇ?」


 ザックスの武器は魔力を利用した銃器であり、魔力を使わなければただの鈍器に過ぎない。ネルビスは防御の構えを解くことなく、言葉を続けた。


「ワイバーンの住処である“沼地”では、ほとんどの魔力武器が無効となる。貴様の持つそれがビゴットの扱っていたガン・ソードだというなら、そんなものを持って行っても、唯のガラクタでしかないだろう。それでもなお、貴様が戦えるかを見たい」


 ザックスは明後日の方向を見ながら、ビゴットの忠告を思い出した。


「あー、確か親父もそんなこと言ってたな。沼地じゃ不利だとかなんとか……」


「ワイバーンは竜種の中でも、防御力は高くない方だ。魔力も持たない。しかし、それゆえに“沼地”に適合した竜種であり、魔力を使わずに外敵を屠るすべに長けている。そんな奴らの土俵で戦うのだ。貴様に、どんな戦略があるか見せてもらおうじゃないか」


 ザックスは、頭を掻きながら答える。


「いやぁ、戦略っていうか……単に、沼地から引き離して、魔力が使えるところにおびき出したら撃ち落とす。これだけだって、教えられたぜ?」


 ネルビスが盾の奥で、落胆の表情をのぞかせた。


「なんだそれは。つまり、貴様は奴らの前では手も足も出ないと、そういうことか?」


 ザックスはむっとして、ネルビスへ言葉を返す。


「そういう風には言ってねぇだろ」


「じゃあなんだ? 尻尾を巻いて逃げるだけで、奴らが都合よく追ってきて巣から離れてくれるとでも考えているのか? 甘いな。これだから素人は」


 ネルビスが呆れたように鼻で笑った。

 ザックスのこめかみに血管が浮かび上がる。


「てめぇ、人をおちょくってんのか?」


「その通りだよ、間抜け。つまらない逃げ口上を垂れてないで、さっさと来い」


「てんめぇ……」


 ザックスは目を血走らせて、ネルビスを睨みつけた。


 ネルビスは、盾の奥で不敵な笑みを浮かべている。


「おい、ルールはそれだけかよ、ネルビス。他に何か言っとくことはあるか?」


「ルールはそれだけだ。分かったら、さっさと始めるぞ木偶の坊」


「臨むところだ、クソチビ!」


 ザックスはガン・ソードを正面に構え、走り出した。


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