第013話 マーブルの仕事と竜追い人
翡翠竜の角を加工し終えると、マーブルは部屋の片隅に置かれた背負いバッグへ、いくぶん軽くなった角を詰める。
「ところで、ザックス。ネルビスのところへ行く前に、魔力莢の補充はしていくかしら?」
「お、そうだな。わりぃな」
「はい、どうぞ」
マーブルは、角をしまうのと入れ替わりに背負いバッグから魔力莢を二本取り出す。そのまま立ち上がって、ザックスに魔力莢を手渡した。
ザックスはマーブルから二本の魔力莢を受け取ると、すぐに腰の革製ポーチへとしまった。
これで、二本だった残弾は四本になる。
対竜銃器ガン・ソードによる必殺の一撃は、実のところ相当に燃費が悪い。ほぼ満タンの魔力莢を丸々一本消費するほどの高出力で繰り出される一撃は、火力こそ申し分ない。およそ、人類の持ち得る武器において最強の威力を誇る。が、そのたびに魔力莢は交換しなければならず、魔力莢もそう多くを所持できるほど生産が十分にされている訳でもなかった。
「請求はあとでビゴットさんにしておきますわ」
「いつも悪いな、マーブル。助かるぜ」
「どういたしまして。“竜追い人”は、私のお得意様ですから。これくらい、当然ですわ」
マーブルがザックスの肩をポンと叩く。
「なんか、照れるな」
ザックスは頭をぽりぽりと掻いた。
野獣との戦いの度に無駄弾を使い、ビゴットから散々どやされていた日々を思い出す。そのたびに、魔力莢を補充するためマーブルを呼び出しては愚痴を吐き、見習いだからしょうがないと慰められたものだ。
しかし、先ほどマーブルが言った肩書には『見習い』の文言がない。そのさり気ない一言に、ザックスは気恥ずかしさを覚えていた。
「なに照れてるのですわ。翡翠竜を狩ったんだから、ザックスはもう立派な“竜追い人”ですわよ。ビゴットさんはまだまだと言ってたけれど、もっと自信を持っていいと私は思いますわ」
マーブルによいしょされ、ザックスは何だかむず痒いなと感じていたが、思いのほか悪い気はしていない様子。
「それじゃあ、竜追い人さん。荷物持ちはヨロシクね」
「って、お前の狙いはそれかよ」
ザックスに荷物を押し付けると、マーブルは鼻歌交じりにさっさと扉を開けて移動を開始してしまった。
ザックスは手早く背負いバックを拾い上げると、追いかけるようにしてマーブルのあとをついていった。




