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4話目

4話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

 迎えた休み明け。

 約束通り西谷は放課後部室に来て、三人、前と同じ席位置で作戦会議を始める。

 夕焼け色の混ぜられた室内で第一声を発したのは西谷だった。

「ど、どうですか?何するかとか決まりました?」

 文化祭までおよそ二週間。

 長いように見える二週間だが実際あっという間も良い日数で、彼の声にも若干の焦りが窺える。かく言う俺も部長から相変わらず何も知らされておらず、望むような返事をすることは出来ない。

 大丈夫なんですよねと隣に視線を送る。

 すると、部長は閉じていた口を開いた。

「一応、作戦は決まった」

「ど、どんな?」

 西谷が食いつくと部長は、テーブルに置いていた鞄から一枚の紙を取り出す。

「これを利用しようと思う」

「…それ」

 場に出されたしおりぐらいのサイズの紙と同じものが俺の鞄の中にも入っている。

 ここの文化祭は生徒が決めて行う出し物以外に、生徒会と文化祭実行委員が主導して選挙で決める出し物がある。部長が出した紙はその投票券。

 まさしく今日、パンフレットと共に配布された物である。

 外部も読むパンフレットに記載された物を読むに、18歳から選挙権が与えられた為、こういう似たようなのをする事によって政治に関心を持って貰おうとかそんな感じのが書いてあったが、大抵そういう大人の思惑というのは外れるもので、最終的には形骸化してしまうのが常。投票することで政治関心云々なんて誰も考えておらず、如何に文化祭を盛り上げられるような面白い出し物を選ぶかが本題になってしまった。

「これだ」

 そうにやりと笑って部長が指差したのは三つある出し物案の一つである公開告白。

 これになった場合、実行委員と生徒会が公開告白を演じるわけではなく、多分場を仕切るような立場に就くのだろう。

 四文字を見た西谷の顔が少しばかり固くなる。

「こ、公開…告白…」

 大勢の前で告白しろ、なんて一介の男子高校生からしたら一世一代のイベント。それに伴う勇気を想像するだけで、表情に気を回す余裕なんて失ってしまう。

「彼女の事、好きなんだろ?」

「うっ……や、やります」

 彼が舞台に立つことを覚悟してくれたのは嬉しいが、その物語には一つの欠点がある。

「あの、公開告白そもそも出来るんですか?」

 公開告白をやるためには俺達以外にも他の生徒がそこに投票しなければならない。

 三票は確実ではあるが、全生徒数百人においての三票は結果を変えるには大きく不足。

 大前提が不確定では不確定の極みの告白も一層怪しくなる。最後が不確定だからこそ、今は確実性を大事にしていくべきだろう。

 しかし、俺の心配とはよそに部長は大丈夫だと笑む。

「安心しろ、絶対にこれになる」

「…言い切りますね」

 三つある内の一つは『しない』という折角上げてきた文化祭の熱を冷ますような案の為、実質二択ではある。

 加えて一つは『劇』と俺たちのクラス、あともう一つのクラスと二つあるから選ばれる確率は低そうに思えるが、部長の表情はそういう所を根拠にしているようには見えない。

 今時の学生が好きなイベント、とも考えたが、それとは違うもっと確実な、俺たちには話す気の無いなにか。

「あの、それで…俺はその日まで何をしてれば」

 少し話が逸れてしまいそうになった。西谷の声に話と視線を引き戻される。

「流石に、このままなにもしないで当日を迎えるのももったいないよな」

「やっぱりするんですか、劇の主役」

「それ決めるの、明日って言ったよな?」

「えぇ」

 明日の朝、お互いのクラスでホームルームが行われ主役、脇役、小道具大道具、本格的に配役を決め取り組んでいく予定になっている。

「なら、今日中に彼女をヒロイン役にするよう話に行かないとか…」

 部長は指を当てた顎を少し引き、ふむと呟いた。

 そこまで言ってしまえば、西谷も今回の作戦のおおよその見当が付く。

 公開告白に加えて劇の主役とは補欠の男子高校生には厳しいと思う。実際、察した彼の瞳には戸惑いがあり、出る言葉もかなり弱腰だった。だが、それでも出て貰わなければならない。

「俺が…空間さんと一緒に主役を…こ、公開告白だけじゃ…」

「…いや、西谷はやらなくてもいい」

「え?」

 俺と西谷の驚いた声が被る。

 そうだと思い込んでいたものが崩されたのだ、瓦解によって表情に間抜けが出る。

「やらないんですか?」

 丸くなった目を部長に指せば、あぁと、嘘でも冗談でもないと頭の振りで教えてくる。今、視界の端に写る口をぽかんと開けた西谷の顔はまさしく俺の表情でもあった。

「お前が王子をやって、彼女がヒロインに。良い演出ではあるが、まだ足りない気がする。成功させる為には」

「でも、空間さんはヒロイン役にするんですよね?」

「あぁ」

「他の人に相手役…譲ることになりますけど」

 文化祭は何時か言った通り、新しく仲を作る場ではなく更に仲を深める場。所詮俺止まりの考えの話でしかないが、万が一にも知り合いや友人の男子が成ってしまえば、彼氏彼女の関係に一歩二歩近付いてしまうことも考えられる。せめて説得して、王子役を取っておくことで他の人と仲良くならせないようにすべきではないだろうか。

「それは困るな」

「じゃどうするんですか」

 困る、と言うぐらいなら彼を主役にするべきだろう。煮え切らない言葉に眉を潜める。

「…一人いるよな」

「一人…?」

「西谷と同じクラスで、尚且つこの作戦のことも知っていて、主役に立候補する権利も持った動いても構わない奴が」

 一つ一つ、間を取りながら部長が言う条件を脳が読み込んでいき、最後の立候補する権利も、まで聞き終えた所で俺の頭は一人の人間を弾き出す。

「あ…」

 西谷も遅れながら弾き出しが終わったらしく、部長と彼は揃って目をその条件に合致する人物に向けた。

「初橋、お前だ」

「あー…」

 なるほどと言わんばかりに声を漏らす西谷と、頭に『犯人は』でも付きそうな言葉を放った部長。確かに何ら不都合なく動かせる唯一の人間ではあるが、だが、えぇ…俺…。

 これが、きっと長年の友人が考えたものであれば、一も二もなく頭を縦に振っていたが、出会ってからまだ一週間も経っていない人間の立てた作戦となると、振りの方向は縦から横へ変わっていく。

「…無理です」

 表情も含め全力で断る意思を表すと、西谷はぱしっと両手を合わせ拝むように頭を下げてくる。

「そこをなんとかっ!」

 自分が候補から外れたからか、その声には明るさが取り戻されていた。

「俺からも頼む」

「…もしも俺がやるとして、そしたら結局西谷は何するんですか?文化祭まで何もしないのはもったいないんですよね」

「適当に彼女の手伝いでもしてれば良いんじゃないか?邪魔にならない程度に。それぐらいなら簡単だろ?」

 部長の問いかけに西谷ははい!と元気よく頷く。

「いや…でも。そんな微妙なので行くぐらいなら普通に主役やった方が……」

「それだと色々作戦がな」

 作戦、というのがそもそも何処を目指しているのかも分からない。最初は主役の西谷が同じく主役になった空間さんに公開告白をする、と考えていたが俺が西谷が演じる筈の主役をやってしまうなら、違う事になる。別の作戦を目論んではいるらしいが、俺に教えてくれる感じではない。

 第一、するりと真っ先に頼んできたが西谷は俺がやることに本当に躊躇いはないのだろうか。

「…西谷は、俺が空間さんとなるかもしれないけど良いのか」

 尋ねると、彼の視線は俺の横へ動かされる。

「なにか理由があるんですよね?」

「あぁ、今は言えないが」

 部長が頷いてそう言えば、彼の視線は俺へ。

 俺だけを写した瞳にはあの時と同じ、純粋で真剣な色に染め上げられていた。

「なら…こんな俺でも、一回でもチャンスが貰えるなら」

 西谷は椅子から立ち上がると向かい側に座る俺の前まで歩いてきて、そして深く頭を下げた。

「お願いします」

「………」

 正直な話、俺がわざわざ彼の為にそこまで身を使う必要は一切としてない。別に友人でもなんでもないし、これからも彼と友人になるという予定だってない。打算したって損しか無いのは明白で、だから脳に貯まる言葉は全て否定。

 しかし、脳というのは厄介。

 目に見えぬ無数の人間からの目よりも、目の前にいる一人の人間の目の方が感情を揺さぶらせてくるようになっている。

 真正面から一直線に頭を下げてまでして言われて、無理と突き放す事は出来なかった。

「まぁ…じゃあ……やります」

 渋々了解すると西谷の下に落ちていた顔がパッと上がり、きらんきらん輝いた瞳が本当と、再度尋ねてくる。

 それに頷いて応えれば、西谷の嬉しそうな声が部室に大きく響いた。



 西谷と俺が文化祭での覚悟を決めた作戦会議は終了し、先程部長が言った、彼女をヒロイン役にするための話を二人で部室を出てしに向かう。

 一年生のクラスは二階。

 チア部だしもしかしたらもう部室に行っているかもしれないが、とりあえずまずは教室の方を確認してから部室の方に向かうことで一致した。

 放課後を迎えてから少しばかりの時間が経った。

 秋という季節柄、日は大分傾いていて、小さくなってきたオレンジの明かりでは足りないのか、蛍光灯の白色も廊下を照らしている。

 使った道は部室棟二階にある、普通棟同じく二階に繋がった空中廊下。

 ほとんどの生徒が自分の行くべき場所に行き、開けられた窓からここに届く声はグラウンドからのみ。目の前の車道を駆けるいくつもの車の足音も、時折耳に流れてくる。

 その二つの音に俺と部長の靴音を混じらせ、ついでに俺の声も足した。

「で、どうやって空間さん主役にするんですか」

「他の仲の良さげな女子に頼んでくれって頼んでみる」

「…え、それだけですか?それで、もしならなかったら」

「別に彼女がヒロインにならなくても、成功する確率が少し下がるだけで作戦に変化は…そんなにない」

「そんなに…」

 不穏になる言葉を聞きながらお隣さん目指して廊下をひたすら歩いていく。

 普通棟に着いたら左折し、少し歩けば到着なのだが、俺が先導せずとも部長はまるで彼女のクラスを知っているかのように、迷うことも止まることも、俺に聞くこともせずに隣で足を目的地に向け動かす。

 チア部について色々調べていたっぽいが、それは実は副産物で、元々は彼女の事を調べていたりしていたのだろうか。

 と、憶測止まりの考えをしていると目的の空間さんのクラスに行き着く。

「いるな」

 先に教室の中を覗いた部長が密やかに声を漏らす。

 俺も続いて見てみれば、確かに数人の女子と一緒に空間さんは机を囲んで仲良く談笑を楽しんでいた。他にも、関係はなさそうだが少し距離を離した所に数人のグループがもう一つあった。

「チア部って練習とか無いんですか」

「いや、今日は体育館をバトミントンに譲ってるからだな。なんか、複数の部活で作ったローテーションがあるらしい」

「はあ…それでどんな風に声掛けます?」

 ここまで来て、彼女か残ってくれていたお陰で親しそうな女子も見つけられて、後は話を持ちかけるだけ。

 何かここにも作戦は無いんですかと部長に視線を向けたが、部長もまた俺に視線を返してくる。

「あの中に知り合いとか、そういうのいないのか。隣のクラスだろ」

「誰もいないですよ…」

「じゃあ…どうする」

 まさかの無計画発言がされ、男子二人、隣のクラスと目的のクラスの間の壁で困惑した視線を交わす。

「まさか…何も考えてきてなかったんですか」

「いや話す内容はしっかり考えてきたんだ…だが、まぁそこにいくまでは…別だったな」

 後悔するような口調から読むに冗談とかからかいでもなんでもなく、本当に何の計画もしていなかったらしい。

 いやまぁ普通に誰かしらに声を掛ければ良いだけなのだが、ここで彼女達の談笑が終わるまで待っていたら不審者だし、かといって別場所で待つのも確実性がない。部活が無いなら帰り際、ふらりと何処かに寄って見失ってしまうかもしれない。

 玄関で待ち伏せるのもあの様子じゃ空間さんも一緒に帰るだろう。

 露骨に彼女に聞かせないようにすれば、絶対何か企んでいるとバレる。

 どうするどうすると立ち往生していると、遠くからこちらに向かって駆けてくる人影。

「部長、人来てます」

「あ、あぁ」

 二人して壁にびたっと背中を付け、駆けてくる人に道を譲る。ズボンに覆われた足が世話しなく目の前をばたばたと動き、短い時間、瞳に横顔が写される。

「…あ」

 その横顔が見覚えのあるものだと頭が伝えてきて、無意識に言葉が口から溢れていた。

 そしてそれは目の前を駆けた彼彼女も同じだったようで、ぴたりとその足が俺の前で止まった。

「前に…会ったよね?」

「あぁ、まぁ」

「…何してるの?」

 彼彼女は俺と部長を見ると、最もな質問をしてくる。そして体を横に少し倒して空間さんのクラスをちらっと覗くと、もしかしてと勘付く。

「誰かに用事あったりした?」

「君も、このクラスなのか?」

 部長が期待を潜ませた声で聞けば、彼彼女は頭を真下に振る。

 男子にしては少し長めの髪が、動きに合わせてはらりと揺れた。

「そうですけど…あ、呼んできましょうか?」

「あぁ、頼む!…あ、出来れば空間さん以外で頼めないか!」

「はあ…分かりました…けど…?」

 予想外の救世主に恵まれ、部長もちょっと食いぎみに頭を下げてお願いする。

 彼彼女からすれば妙な注文に不思議そうな表情を浮かべながらも引き受けてくれるらしい。彼彼女は空間さん達のグループに向かってくれる。

 一応呼んでいる立場だし顔ぐらい見せといた方が良いかともう一度壁から顔を出せば、丁度あちらも俺たちの事を話したタイミンクだったのか、数人の女子達の視線とぶつかる。

 不審がらなれないよう控えめに会釈をすれば、一人が席から立ち上がってこっちへ歩いてくる。来るのは空間さんではなく、彼彼女同様にスタジアムで見かけた落ち着いた雰囲気の女子。あの時見えたのは横顔だけだったから記憶に反応が無かったが、真正面から顔を合わせると彼女の事をお前は知っていると記憶が騒ぎ出す。

 ひとまず、空間さんから丸見えになる扉の前で話す訳にも行かず、数歩後ろに下がって、向かってきていた彼女を待つ。

 と、先に出てきたのは彼女ではなく彼彼女。

 じゃあねと手を振って足早に去っていく彼彼女に小さく会釈をして、小さな背中を少しの間見送った。

「ね」

 後ろに運んだ視線が女の子の声に引っ張られる。

 前を向けばもう彼女は来ていて、何の用と少し冷たげな印象の整った表情が尋ねていた。

「…海柱(みばしら)さん」

「覚えてたんだ、私の事」

「まぁ」

 答え合わせも兼ねて呼んでみると、彼女の黒色の瞳がほんの少しだけ丸くなった。

 一時期は親の都合でこの街を離れてはいたが、元々俺も姉もこの街で生まれたのだ。俺が五年になるまでは当たり前ながらここから近くにある小学校にも通っていて、同じクラスだった彼女の名字ぐらいならするりと出てくる。

 俺が彼女の名字を呼んで僅か、部長が後ろから「知り合いいるんじゃないか」と呟いてくるが、一方的に覚えていただけで、彼女が忘れていたら知り合いじゃなかったのだ。だから、さっきの問いにはああ答えるしかなかった。

「私も覚えてるよ。えっと、や…いや、は…だっけ?…八つ橋、だよね?」

「ふっ」

 首をこてんと傾け、真面目な顔して綺麗に外した海柱さんにか、京都名物にかは知らないが、後ろから小馬鹿にするような笑みが聞こえた。

「…初橋」

「そーだ、初橋…初橋。でも、八つ橋の方が良いと思わない?」

 記憶はおぼろげだが昔からこんな、落ち着いたというよりは何処か不思議で掴みにくい雰囲気があった気がする。

 名前に関してはまぁ、あの当時、俺からしても彼女からしても、因縁も親交も皆無なただのクラスメイトの一人でしかなかった。京都名物に負けてしまうのも…仕方ない。

「…あの」

 嫌な笑いを続けていた部長に静かに目を向け、本題を思い出させる。

 部長は咳払い一つしてから、彼女の方に向き直った。

「そうだったな八つ橋。…なぁ、少し手伝ってもらえないか?」

「なにを?」

「出来るならあんまり口外してほしくないんだが、空間さんの事を好きな人がいる」

「部長、それ話して…」

 良いんですかと俺が全てを言い切る前に、部長は続いた筈の言葉を読んで答えを返す。

「どう考えてもこればっかりは嘘の付きようがない。素直に話した方が確実だろ?」

「…はい」

 言われて考えてみれば文化祭のヒロインという、本人からすれば大役をやらせるのに、西谷を隠し、俺達だけしか関係してないと思わせるような適当な嘘は厳しいと分かる。

 違和感も必ず生まれるし、その違和感の結果空間さん本人に俺達二人に心当たりは無いかとそんな話をされよう物なら堪ったものではない。

 部長の言う通り、ここばっかりは素直に話した上で、広がらないよう頼む選択のが安全に思える。

 謝り、止めてしまった話を進めてもらった。

「好きな…人」

「文化祭を使って告白しようと思っててな」

 うーんと何かを考えていた海柱さんの瞳が俺をちらっと捉えてくる。

「それ、八つ橋の事?」

「あ、いや、西谷ってサッカー部の」

 補欠だし、知られていないかと思ったが海柱さんはあーあーその人ならと覚えていると口にする。

「で、手伝ってくれるのか?まぁ無理強いはしないが」

 聞けずにいた肝心な部分を部長は尋ねる。ここまで話して断られるといささか困りものだが、そこばっかりはもう祈るしかない。

「…ううん、やる。任せて」

「そうか、ありがとう。ほら、八つ橋もお礼言っとけ」

「…その、ありがとう」

「どういたしまして。私はそれで、何をすればいいの?他の人にも声掛けた方が良い?あ、もちろんよみには内緒だよね?」

 …目は脳に直結していると聞いたことがある。

 目の色がそのまま思考を表すと考えているのであれば、今の海柱さんの脳はたぶんワクワク一色ということになる。

 表情こそ普通な感じに装っているが、滑らかに繰り出される声の音は明るい旋律を楽しむピアノのように凄い弾んでいるし、足も心意気を表しているのか前に出ていて積極性がひしひし伝わってくる。

「そこら辺は…部長から」

 瞳一杯に詰められた好奇心に耐えられず、海柱さんが歩いた歩数分俺も後ろに下がり、質問の答えについては部長に投げ渡す。

「分かった。部長、作戦名とかは…」

「え、いや作戦名は…」

 真剣さと楽しげが入り交じった声でぐいぐいと海柱さんはあれこれと聞いてくる。

 部長も彼女のその溢れ出るやる気に押され、困ったような表情を浮かべていた。

 今のところ、この人が一番乗り気なんじゃないだろうか。

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