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“あの日”  作者: 一条 幸
2/9

秘密

 秘密とはいってもお互い秘密を知っている。

 知っていながらも触れることは絶対に無い。


 お互いがお互いの秘密を知っていながらその話題に触れた事もなく触れる事すら許されない。


 ここで勘違いしないで欲しいのが

 約束をした訳では無くお互いがそう感じとったのだ。


 お互いが知っている秘密など、もう秘密とは言わないかも知れないが敢えてこの表現をしている。

 この意味も“あの日”を迎えれば全てが分かる。


 まずはここで、2人の秘密について話そうと思う。


 彼の秘密は「浮気」

 私に良い顔をしながらそれ以上の顔を他の女に向けている。

 浮気相手は同じ会社で新入社員の鈴木 美奈(すずき みな)という女だ。


 彼の浮気相手の名や関係性は気づいたら調べ上げていたのだ。理由は分からない。


 然し、彼が浮気している事を考えると

 何か私の中で靄がかかったような気持ちになる。


 この気持ちが調べ上げた原因なのか。

 それすら確かめることは出来ないのだ。



 何故なら私には感情が無いから。

 そう、私の秘密というのは「感情がない事」


 つまり彼の事を好きだとか愛おしく感じる事も無ければ幸せすら分からない。

 無論、辛さや不幸すら分からないのでこれが正に幸せというものなのかも知れない。


 原因はきっと私の生まれ育った環境で自分の意見を言うことは許されず相手を尊重する教育方針。

 従えなければ硬い拳が降りかかる、世間一般でいう虐待だった。


 幼少期の記憶は正確ではない、というか覚えていていないに等しかった。

 私の小さい時の写真も無ければ思い出もない。

 小学校や中学校等の卒業アルバムさえも何処にあるのか分からなかった。


 然し、親から虐待を受けていたことだけは鮮明に覚えていたのだ。

 まるでこの記憶だけを誰かの手によって脳内に埋め込まれたかの様だった。


 つまり私はこの数年間彼に気持ちを欺き続けている事になるが、彼は最近秘密に気づいた様子だった。

 その時期と同時に浮気が発覚したので

 浮気の原因はきっとこれだと思った。


 しかし私は浮気をされても何の感情も沸かないので喧嘩もしなければ、別れ話になる事も無かった。


 彼は一体この状況をどう思っているんだろうか。


そう思いながらも、

 この気持ちは儚く宙に舞ってしまった。


 この関係がいつまで続くのか、

 私はこの頃から考え始めていた。

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