5 十六天位と王と国
「まずは何から聞きたい?」
(十六天位ってなんなの?)
一国の王よりも身分が高いと先ほど話していた理由が気になり、その理由だろうーー十六天位について聞くことにする。
「皆には秘密じゃぞ?」
お父さんが汚い笑顔を向けてきたので、死んだ魚のような目を、その汚い笑顔に返す。
すると、お父さんは苦笑しながら髪をわしゃわしゃと触り、どうやら話し始めることにしたようだった。
「十六天位についてだが、正直儂も正確なことは知らんのだ」
(どう言うこと?)
「すまない。正確なことは知らんと言うのは、確証がないと言うことだ。伝承ならあるがとても古く、知っていそうな者に心当たりはあるが聞いても話してくれない。伝承でよければ話すがそれでもいいか?」
(なんとなくでもわかるのなら、全然いいよ)
「それなら、少し短めにだが話そう……むかーし、むかーし」
(お父さん!)
「おっと、こう言うのは嫌だったか?」
(はぁ〜)
お父さんは何故か、呆れている私の様子を見て少し笑った後、次は真面目に十六天位について話し始めた。
「十六天位とはまだ災暦と言われる前の時代から存在するもので、十六と言う通り16人いると言われている」
(ーー言われているって、それも分からないの?)
「......あぁ、分からない。儂が知っているのは自分自身と、後は2年前に大きな戦争を起こした、北の帝国コードヴィルの帝王ただ一人だけ……だ。ーー話の続きをしても?」
(――あっ! ごめんなさい!)
「天位の称号を持つものは神と同等の権限があるものとされ。その称号だけでSSランク。言っておくが王はSランクだ。天位の作り主は、お主は知らんと思うがこの世界では有名なフリークという伝説の人間で、その仲間。四五神と共に作ったとされている……」
あっ、だからお父さんのランクってSSランクなのか......
先日の疑問が解消される。
(フリークって人はすごいの?)
「ん〜……」
その質問にお父さんは少し悩んだ様子で考え込み。
「神を従えておった時点で凄いには違いないが。伝説が真実であれば、片手で世界を崩壊させるだけの力を持っとるらしくてな……」
(流石にそこまでではないってこと?)
「いや、それがわからんのだ……フリークという名の人間が四五神を仲間としていたのは確実だろうが、それ以外のフリークに関する伝承が多すぎておそらくその大半が偽物なのだ……」
(そうなんだ……それじゃぁ四五神って何?)
「ーーこの世界を救ったとされる四柱の神のことだ」
(四柱なのになんで四五神?)
「さぁな。それは儂にもわからんが、四柱の神々の名ならわかるぞ」
そう言うと、一度咳払いをしてから話を続ける。
「一柱目は言わずと知れた。セトこの世界の全ての協会を管理しているセト教の神にして、最強の神とされる人間の神。二柱目に、ルシフェル過去に存在したと言う魔族の神。三柱目に、ケツァルコアトル亜人種の神と言われ。四柱目に、ウロボロス賢人の神だ」
(お父さん……今、ウロボロスって言った……?)
「言ったが......どうした?」
ウロボロスが神様だと聞き、私が考え込んだ様子に気がついたお父さんが心配そうに声をかけてくる。
(私がウロボロスの生まれ変わりだってこと、お爺さんに言ってもいいのかな……?)
「なんと! エルお前はウロボロスの生まれ変わりなのか!?」
(うわぁ!? 心の声ダダ漏れ!!)
今まで考えてたことが、お父さんへ聞かれていたことに気づき焦る。
私がウロボロスの生まれ変わりであることを、お父さんに何故言えなかったかと言うと、その理由は先ほどの四五神の説明で、セトと言う神が人間の神と聞いたからだ。
考えなくてもわかるが、お父さんは人間。
では、人間にとって他の神はどういう存在なのだろうと考えた途端ーー元いた世界のことを考えてしまったのだ。
「ん〜、確かにお前の考える通り他の神に敵意を向ける者もおるが、儂は特に何も思わんぞ、特にウロボロス。私にとっては、信仰はないが私の神の様な者じゃないか!」
(それはどう言う……)
――また心の声を聞かれた!
と思いながら、お父さんの言葉の真意を聞く。
「先ほども言ったが、ウロボロスは賢人の神。すなわち儂の神ではないか!」
(ーーお父さん?)
「なんだ?」
(賢人の意味知ってる?)
「何を当たり前なことを聞いてる? ーーまぁ、いい。あとでウロボロスについて少し聞くが、先にお前が聞きたいことを話そう」
(そうしてください……)
「ーーで、次は何が聞きたい?」
(お父さんと国王......様との関係)
国王と心の中で勝手に呼び捨てにしていたが、よく考えれば問題発言なのかもしれないと思いーー様付けする。
「儂との話だけなら国王で問題ない。それに実際問題お前の実際のランクはSSーーSランクの国王より身分的には高いぞ。まぁ、それを知られれば面倒なことになるので注意が必要だがな。さて、本題の国王との関係だがまずエルよここがどこなのか知らんだろ?」
(アドルエ王国って国じゃないの?)
「ーー儂が聞いとるのは、その何処に今いるのかだ」
確かに言われて見ればここが何処なのか知らなかった。
お爺さんに聞かなかったのもそうだが、この国に来た時、私は眠っていたから、アドルエ王国の何処にいるかまでは知らない。
「ここは、アドルエ王国の王城だ」
(ーーえ、うそ!?)
「正確に言えば、王城地下にいある儂専用の研究室ーー兼、自室だがな」
突然ここが王城と言われても信じることが出来なかった。
何故ならこの部屋は本や訳のわからない道具が散乱して、一見空き巣にでも入られたのではないかと言うような場所だったからだ。そんな部屋がまさか王城だと信じられるわけがないがーー王城ならば、この部屋に国王が来た理由も説明がつく。
「信じてもらえたようだな。それで儂が何故ここにいるかだが、儂は、オイロスーー国王の勉学や武術・魔術の師であり。今はこの国で王専属の参謀をやっているんだ......」
(......どうしたの?)
「そろそろーー何故国王がお前のことを娘の守護騎士にしてくれと言ったのかを話そう」
お父さんが暗い顔でそう言った瞬間ーーあぁ、これは嫌な話を聞くことになるのだろうと、国王の悲痛な表情を思い出し確信する。
誤字脱字わからない表現があれば教えてください。
意見大歓迎です。ありがたく読ませてもらいます。
順次修正して行きます。