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幻想師エルの波乱な先憂  作者: 狸ノ腹
エルの誕生
4/11

3 不思議な不思議な錦鯉

[災暦(さいれき)1482年 6月25日 20:00]


(お爺さん、お爺さん)

「何だ、我が子よ?」

(我が子ってところにツッコミたいところだけど、私ってやっぱり魔術使えないの?)


 疑問があった。

 それは魔術適性や魔術を扱うための知力が異常なほどにあるが、魔力保有量が0なため。私にはやはり魔術は使えないのだろうか。

 と、言った疑問だ。


「そうなるな。ただ、方法がないわけじゃないぞ」

(ーーおぉ! さすが、お爺さん!)


 お爺さんのことを見て目を輝かせながら、やったと喜ぶ。

 私は一度でもいいから魔術を使ってみたかった。別に野蛮なことに使いたいわけではなく、一度でいいから超能力のような力を、自分自身で使ってみたいと思っていたからだ。


「だが、エルよ。その方法を教えるに当たって条件がある」


 お爺さんの言葉に嫌な予感がしたので、顔を顰める。


(条件とは何でしょう……)

「お爺さんではなくーーパパと呼べ! お父さんでもいいが、やっぱりパパって呼んでくれ!」

(…………)

「なぜ黙る!?」

(ねぇ、お爺さん。今あなた何歳?)

「97だが、それがどうかしたか?」

(…………)


 97歳のお爺さんが、パパと呼んで欲しいと目を輝かせている光景を見て複雑な気持ちになりつつ、再びお爺さんのことを見てーー


(お父さんでいいですか......?)


 お爺さん。改めーーお父さんの条件を飲むことにした。

 お父さんは自分のことを「お父さん」と呼ばれ、とても嬉しそうに顔を緩め。

 その後すぐ、咳払いをして真剣な表情になった。


「ーーそれでは約束どうり。儂もお前に、魔力がなくても魔術を使える方法を教えてやろう。ちょっと待っとれよ……」


 お父さんはそう言うと、部屋にある木の引き出しをいくつか開けて何かを探し始め、半透明な水色をしたクリスタルの様なものを取り出した。


(それは何?)

「これは魔石の一つで水石と言い。その中でも、魔力純度が高いものだ。通常魔力があれば」

(――それを魔力の代わりにすればいいってことね)

「…………」


 何となく言わんとすることがわかりーー口にするとお父さんが黙り込み。


(ーーっちょ?! お父さん?!)


 しゃがんで、しょげだした。


「せっかく説明しようとしたのに…… 聞いたんなら最後まで黙って聞けよ……」

(す、すいません……)


 確かに聞いておきながら、途中で言うのは確かにダメだなと思い。すぐに謝罪する。

 するとお父さんは立ち上がり再度咳払いをした後、説明の続きをし始めた。


「お前の言う通り、魔石の魔力を使う事で魔力が無くても魔術を扱うことができる。ただし、どんな魔石でもいいわけじゃ無く」

(――純度が高いものじゃないとダメなのね......)

「............」

(ごめんなさいーー反省します)

「はぁー......その通りだ。それと第一条件として、水の魔術を使うのなら水の魔術適性と水の魔石が必要で、第二条件としては、それ相応の特訓が必要になると言うことだ」


 そう言い終えると、お父さんは少し呆れた様な顔になり。


「ただし、エル。お前の場合はおそらくだが、それほど特訓せんでも扱える様になると思うがな」

(それって前言ってた、ステータスの知力が高いから?)

「そうだ。それに器用さも高くーー全属性の魔術適性があるからな......一度やってみるか?」

(やってみる! どうやるの!?)

「人によって感覚はそれぞれだが、儂の場合は魔石に触れ多状態で、こうなって欲しいと想像すれば大抵のことは出来る。だが無茶苦茶なことは考えるなよ、自分の魔力でない以上自分自身も影響を受けるからな」

(わかったわ!)


 お父さんの手から魔石を受け取ろうと、手を伸ばし魔石に触れた瞬間。


(っあ、これ私持てない……重すぎる……)


 おそらく500gもないだろうが、今の私には持てないとすぐに判断して魔石に触れていた手を離した。


「流石にこのままでは無理か……」


 お父さんはそう言うと、魔石を強く握り「カチ! カチン!」と音を立てながら魔石を砕いた。


(すご……)


 素直に驚く。

 お父さんの体は別に筋肉質と言うわけでもなく。

 年相応にやせ細り、はためからは皮と骨だけのように見えるのだが、明らかに普通の石と同じほど硬いだろう魔石を片手で砕いてしまった。


「これなら持てるだろ?」

(うん。持てる……)


 砕いた魔石の小さな破片を渡される。


(ーーやっぱり、おじ……お父さんって凄いんだね)

「何がだ?」

(何でもない。想像すればいいんだよね?)

「儂の場合はだがな。それと水の魔石。水の魔術しか使えんぞ」

(了解です)


 両目を瞑り、水を想像する。

 水を思い浮かべ始めに頭に思い浮かべたのは、死ぬ直前に見たーーあの男の庭にあった綺麗な池の水。

 水の中には立派な錦鯉が優雅に泳ぎ、囚われているのにも関わらず、とても自由に見えた。

 あんな風に生きられたのならどれほど良かったことか、ただ好きな人とーーその間にできた愛する息子と、ともに生きられるだけでどれほど幸せだっただろうか。


「ーーエル、目を開けてみろ」

(すごい......)


 言われるがまま目を開けると、そこには大きな水の玉が空中に浮かび。水泡でできた錦鯉が、先ほど思い浮かべた池で泳ぐ錦鯉と同じように、水の中で優雅に泳いでいた。


「初めてでここまで出来るか……」


 お父さんは少し驚く様そう言ったが、今はそんなことより。

 ただ目の前に映る。

 この不思議な光景をゆっくり楽しみたいと思いながら、頭上で浮き続ける水の玉を見続けた。

 誤字脱字わからない表現があれば教えてください。

 意見大歓迎です。ありがたく読ませてもらいます。

 順次修正して行きます。

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