1赤子。化物とお爺さんに出会う
「ばぶ、ばーぶ」
(ーーはい。わけわかんなーい)
「ガァー!」
(何が分からんのだ?)
「ばーぶぅ〜」
(いやーーこの状況が! ですけど......)
黒髪の少年に殺されたーーもともと死んでいるのに殺されたと言うのはおかしな話だが。真っ白な空間で意識を失った後、目がさめると私は薄暗い洞窟でーー巨大トカゲの上にいた。
正直。私自身、今のこの状況を理解できていないがーー
(えっと......私。貴方に食べられるの?)
トカゲに対して質問する。
(そんなわけないだろ......お前はウロボロス様の生まれ変わり。俺にとっては主人も同然ーーそんなお前を食べるわけがない)
急にウロボロスの生まれ変わりって言われても、意味がわからない......ウロボロスって確かあの塒巻いてる蛇のことだよね? と考えつつ、今の状況を整理しようとするが、わけがわからなすぎて、やはり状況を整理できない。
今わかることといえば、私が全裸姿で小さな男の子供になってしまっていることだ。
なぜ、男だってわかるのか? それはついているからだーー股間に、今まではなかった男性のそれが......
(ーーえっと、トカゲさん。とりあえず私はこれからどうすればいいんですかね?)
(その事なら安心していい。お前を託すに値する強者がーー今私を殺すため。この洞窟を破壊しようとしている)
もしかして、その人がある人物なのかもと思いーーなにか聞き逃してはいけないことを聞き逃していることに気づく。
(この洞窟を破壊って、それ私死なない?)
(死ぬな)
(おいおいーーって、 あれ。なんだろ......)
(どうした?)
冷静なトカゲに対して「こんな短期間の間になぜ何度も命の危険に晒されなきゃならんのだ」と愚痴を漏らそうとした突然ーー抵抗することができないほどの、謎の疲れと睡魔に襲われ。
(ーーっあ、私赤ちゃんだった......)
1日の大半を寝て過ごす赤子であったことを思い出し、危機的状況下の元ーー深い眠りについてしまった。
ーーーーーーーーーー
「ほう。その赤子が、お前の主人というのか?」
(ーーそうだ。だからこいつを貴様の子としろ。そうするのならば、お前の命令を聞こう)
ゆっくりと目を覚ますと、先ほど同様。
私はトカゲの上にいてーートカゲは下にいる白髪で、長い髪をした老人と話しをしていた。
「いいだろう。その代わりお前は死ね」
(あぁ、いいぞ。その代わりこの方を貴様の命尽きるまで守りきれーーさもなければ、同族が貴様の国を滅ぼす)
(ちょ、何物騒なこと言ってるの!?)
トカゲの物騒な発言に驚き声を上げる。
(おう! 起きていたのかーーそれなら行け!)
(ーーちょっ?!)
私が目覚めたことに気づくとーートカゲは背中にいた私を、下に立っていたお爺さんに向かって放り投げた。
トカゲの背中の上からお爺さんが立つ場所まで恐らく高さは5m以上あり、落ちたら間違いなく今の私は死んでしまう。
(ーー危ないでしょ!!)
お爺さんに華麗に受け止められ、心の中で「ナイスキャッチ!」と思いつつ、トカゲに向かって怒りを叫ぶ。
(さぁ、やるといい。フェル・バルレッチ。十六位天に殺されるのは名誉なことだ)
トカゲの化物は大きな雄叫びをあげる。
「お前の意図や、この赤子が何なのかはきになるが、お前のような存在をこうも簡単に殺せるなら構わないーーバジリスクの王よ、死ね」
私を抱えたまま、お爺さんはトカゲにそう言い。
(ーーっえ? 嘘......)
自分の腕を無表情で切り落としーーその腕をトカゲに向かって投げる。
トカゲはお爺さんのその腕を口で受けとるとーー
(別れの感動は余りないが、我が主人よ。いい今世を生きてくれ。さらばだ......)
そう言いって、お爺さんの腕を飲み込み。
次の瞬間、全身が灰に変わりーー瞬く間に姿を消した。
(何が起きてるの......)
その光景に、一体何が起きているのか状況が理解できなかったが、ただ一つだけ分かることがある。それはこのお爺さんがどうやったかは分からないが、それでもトカゲの化物を殺してしまったと言う事実だ。
「ばぁぶーー!!」
(お爺さん何であの無抵抗なトカゲを殺したんですか!!)
「どうした急にこの赤子?」
先ほどあのトカゲーーと言うかあれは間違いなく化物だが、無抵抗だったトカゲを殺してしまったお爺さんに対して、どうしても怒りを抑えることができず声で叫ぶ。
だが、先ほどのトカゲのようには、私の言葉は伝わりはしなかった。
「お前もしかして......」
しかし、お爺さんは何かに気づいたようにそう言うと、私の額に手を置いてーー
「おい。言葉が理解できるか?」
再び喋りかけてくる。
(理解できるに決まってるでしょ!! 何であのトカゲを殺したんですかぁ!)
「ーーおまっ、はぁ〜......」
どうやらお爺さんは、私の言葉が理解できるようになったようだ。
「色々聞きたいことはあるが、まず一つ教えておいてやろう。さっきお前が背中に乗っていたのは、バジリスクの王。彼奴がこれまでに撒いた自分の子供によって数千万以上もの人の命が死んだ。言葉がわかるならこのぐらいの意味もわかるだろ?」
(私が聞いているのはそんなことじゃない! 私が聞いているのは、なんでお爺さんは何で無抵抗だったあのトカゲを殺したのかってこと!)
「はぁ〜......」
お爺さんは短くため息を吐き。
「儂は面倒なものを物を受け取ってしまったのかもしれんな......」
こっちを見ながら小さくそう呟いた。
(嘆く暇があるなら、理由を言えい!)
こういうところが、私の悪いところだと知ってはいる。
だが、子供の頃から言いたいことは言ってしまう性格なのだ。
もし今借りに、今このお爺さんを怒らせればーー何の抵抗もできずに、私は殺されてしまうだろう。
そういったことがわからないわけではないが、それでもいってしまうのが私と言う人間だ。
ーーというか、言わずにはいられなかった結果が、1度目の死の根本的な死の原因だったりもする......
「赤子よ、お前の言いたいことはわかった。だが、儂もこれが仕事。許せ......お前、名前を何と言う?」
もっと言ってやろうとも思ったが、このお爺さんの目を見ると、なぜか少しだけ悲しそうな顔をしていたので、これ以上言うのをやめ。お爺さんの質問に答えることにした。
(私は紀代子)
「キヨコか......それならお前さんはこれからエルと名乗れ」
(なんで、エル?)
「お前はこれから儂の子として生きてもらう。それが、バジリスクの王との約束だ。そして儂には残念なことに、子種がなく、実子がいないーー子種がなく、実子がいないんだ......だが、もし子ができた時、その子が男だったらエルと名付けるとーー前々から儂は決めておったんだ!」
(お爺さん......)
お爺さんにどう反応してあげればいいのか困りつつ。
私紀代子はーーエル・バルレッチとして、今日この世界で言う災暦1482年 5月 18 日に新たな生を授かった。
誤字脱字わからない表現があれば教えてください。
意見大歓迎です。ありがたく読ませてもらいます。
順次修正して行きます。