第5-1話 新主人公?! デューク・エル・ヴァンパイアここに!
イーリア国は今日も平和で、小鳥がさえずり朝日が眩しく入り込む。
城下町に有る一軒の町宿『狛猫亭』から、今回の物語は始まる。
「デューク!こらデューク!起きんさい!今日こそ溜まった宿賃払ってもらうからね!いつまで寝てんだい!朝だよ!」
208号室の戸を強く叩き、中の人物に声を掛ける中年の女将は、毎度の如くと言わんばかりに呆れ返っている。
「うわヤッベ……おばちゃん来ちゃったよ……バレない内に窓から~……」
中に居た人物『デューク・エル・ヴァンパイア』、特徴的な背中の中頃まで伸びた白金の髪に藍色の瞳、着込んだ緋色の着物につけている腰紐には、2本の居合刀が刺さっており、一本は脇差の様に短い。
下駄を持ちベットの上から、音を立てずにゆ~っくりと抜き足差し足で窓に向かうが、その時女将は合鍵を使い扉を開け、デュークの姿を捉えた。
「こぉぉぉぉぉぉぉらぁぁぁっ!アンタはまたそうやって逃げるのかい!このボンクラがぁぁぁ!」
「痛い痛い!あだだだだだ!おばちゃんギブ!ギブ!」
ベットから引きずり降ろされた彼は、女将に卍固めの様な関節技を決められ、もがいたすえに窓枠へ飛び移ることに成功するデューク。
「大丈夫だっておばちゃん!今日こそはちゃんと払うって!」
「あんたは……まーたそんな適当なこと言って!」
「大丈夫大丈夫!ほら!これギルドから貰ってきた依頼書!行ってきまーーーーす!」
女将は頭を抑えながら、窓から飛び降り出ていった男を見て、ため息混じりにぼやきをつぶやく。
「その金だけじゃ………足りないんだけどねぇ……」
プラプラと街を歩きながら、市場を見ながら依頼者の元へ向かうデューク。
「今日も……平和だ~こんな日はお茶でも啜りたいもんだねぇ」
懐から出した懐中時計片手に時間を確認すると、女将から追い出されたのもあり時間を持て余したデュークは、近くにたまたまあった喫茶店へ足を運んでいった。
~~~喫茶『アメジスト』~~~
いざ店に入ってみると5人組の客以外おらず、とても賑わっている様子も無ければ、別段廃れているという雰囲気もない味の有るいい店という印象が取れる。
「あー…おっちゃん、コーヒーを一杯」
仏頂面のマスターに軽く注文を通し、出入り口近くにある本棚から一冊の雑誌を取り、カウンター席に付きそれを読み耽る。
「おっあったあった『100人に聞いてみた!シシリアル・風俗嬢ベスト5』ギルドの待合室にも有るけど、やっぱあそこでは読めねぇしなぁ」
一つの記事に鼻の下を伸ばし、コーヒーが提供されるのをじっくり待っているが、他の客の会話もやはり小耳に入ってくる。
「だーかーら!アタシもうら若き乙女よ!恋の一つや二つしてみたいってわけなの!」
「いや……そうゆう相談はミアか、カーチャさんに相談しろや。朝っぱらから……ふぁ~あ…眠い」
「不愉快だが、こいつの言う通りだ。時間を損した気分だ」
二十歳になりたての子だろうか、男二人組みに何やら真剣な相談をしているようだが、男二人は全く真面目に聞く気配がないのだ。
「まっまぁ赤岩さん、ギリアムさん。もう少し真剣に聞いてあげましょうよ」
「ねーねー!リューコ、アスタこれ食べたい!」
少年はやる気の無い男二人を説得し、彼女の話を聞くように促しているがそれでも二人の態度は相変わらず。
傍らでは絵本のようにメニューを読みふけっていた少女が、相談をしていた女性に向かいメニューを押し付けているが、頼んでもいいという合図が有ると、パタパタとカウンターに走りマスターに注文を通していく。
「マスターさん!アスタねコレとコレとコレ食べたい!」
椅子に乗り上げた少女はメニューを指さしながら、幸せそうな笑顔で料理を提供されるのを待ち焦がれている。そのときにふと少女と目が会い、少女はこちらの顔を見て大きく驚いた。
「あーーー!おっちゃんだ!ししょー!ししょー!この人が前にアスタを助けてくれた人!」
椅子から引きずり落とされる形で、問答無用に師匠と呼ばれた男の前へ連れて行かれた。
「あぁ!ウチのアスタが失礼を……アスタ!はしゃぐのは良いけど、もうちょい落ち着け!まーたミアに叱られんぞ!」
青年の様に見えるが、この少女の保護者だろうか此方も立ち上がり少しかしこまってしまう。
「失敬、先日酔っぱらいにこの子が絡まれている時、助けていただいたみたいで有難う御座います。私、この子達の保護者兼、赤岩探偵事務所を経営してます、アカイワ ジュンと申します」
随分丁寧な挨拶を交わし、互いに握手を交わすと彼の手から伝わってくるのは、青年実業家や貴族などから感じられるものではなく、一流の武術家の気配が濃く感じられた。
常識にかなり疎く、今まで彼の名をきちんと聞くまで一致しなかったが、世界最強の男『最強』と握手をした瞬間理解できた。
「で、こっちが『ギリアム』と『仁』君です」
「おぉ少年!少年とはあの時一緒だったんで、覚えてますよ」
ギリアムと言う青年は、此方を見ると視線をまた戻しタバコを吹かしている。その半面、少年ジンはその時の礼と挨拶を交わしてくれ、彼とも握手を交わす。
あの時はただの少年に見えたが、握手をしてキッチリ理解出来た。彼もまた一流に匹敵する才能を持ち、刻一刻と成長しているという様が。
「で、最後になったけど、これが『リューコ』」
「これって何よ!……失礼しました、魔女『リューコ』です。以後お見知りおきを」
「よろしく。お嬢さんも良いモノをお持ちで」
ついとっさにこの言葉が出てしまった、でもそれは仕方のない事なんだ。男としては当然なのだ、目の前に一つの動作ごとに「ポヨンポヨン」と震える、小高く整った形の山が二つも有るものだから。
無言のまま握手をすると、視線に気付いた彼女は赤面すると、握手を振り払い山を両手で覆い隠してしまう。だが両手で隠しても、はみ出た少し押しつぶされた形もたまらない。
「ちょっちょっと……この人目線がやらしいんだけど」
「いやいや!そんな事無いって!よろしく『おっぱい』ちゃん」
しまった……間違えた
気がつくと振りかぶった彼女の鉄拳が、鼻頭を捉ええぐるように殴り抜けた。
「リューーーーコーーーー!お前何してんだ初対面で!いや確かに今のはこの人も悪いけど!」
「魔女……」
ギリアムはリューコに険しい顔で寄っていくと、彼女は怒れる獣の様な視線を彼に飛ばしている。
「ナイスパンチ。威力も角度も速度も申し分ない」
「ギリアム!おめぇも何言ってんだ!」
ジュンはジタバタと暴れる彼女を抑え、ジンはというと鼻血が若干出ている此方の介抱に来てくれていた。
この物語は20年の月日を経た、友情に終止符を打つべく紡がれる話。
あの日誓った約束を今ここに
To Be Continued




