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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第4章 裏切り者をぶっ飛ばせ! 編
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第4-41話 お疲れ様、仁君


 ギリアムが帰宅し、仁やアスタの傷も完全に癒えたある日。



 ~~~イーリア国の赤岩家~~~


「みんなぁぁぁぁ準備は出来たかーーーーー!今日はパーティーじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 当主・赤岩順のテンションは、最高潮に達していたのである。

 何故かと言うと、今日は仁・ルナ・ユキ3名の新人歓迎会なのである。

 場所はイーリア城の宴会場で、貴族やら国王やらが出席する立食パーティー形式で行われるのだ。


「赤岩さん、どうでしょう?僕ちゃんと着れてますか?」

「うんバッチシ!仁君もいっちょ前に似合うようになったなぁ」

 仁は正装として、順から渡された赤い貴族服に袖を通し、間違いや気崩れている所が無いかをチェックして貰っていたところだ。

「おいヘタレ、ブラウスが少し出てるぞ。アカイワも見たんなら指摘しろ」

「すまんすまん」

 ギリアムも混ざって、身だしなみを整えていき、髪のセットをギリアムに教えてもらい鏡を見ながら、ワックスで整えていく。



 仁がだいたい準備を終えると、ロビーにはそれぞれメイクアップ・ドレスアップを済ませた、ミアやリューコを筆頭に女性陣が到着していた。

「おまたせしました!」

「ジン君かっこいいね~」

 アスタと仁はロビーで会話し、それぞれ皆も出発を前に会話を楽しんでいる。

「ジュンさん卸したお洋服はどうですか?」

「丁度いいよ。丈の長さもいい感じで、色も俺の指定した通りOK」


「めっずらしい~ギリアムがお洒落してる~」

「うるせぇ!……それより、リィナは?」

「リィナちゃんは、後から来るって。今カーチャさんが、ドレス調整してくれてるから」

「そうか」


 それぞれが会話をしていると、玄関先に馬車が3台程到着し各々が乗り込んでいく。


~~~イーリア城・舞踏会場~~~


 貴族などの社会的地位の有る人物や、民間だが社会的に権力を持っている企業のトップなどが顔を合わせ、始まるまで会談を楽しんでいる。

「き……緊張してきた……」

「ユキもです……」

「二人共、固くなりすぎッスよ~。ジュンさんも言ってたじゃないッスか「気楽でいいよー」って」


 舞台袖に三人は固まりながら、緊張が取れずに表情がこわばっている。

「………って事でね、今から皆さんにうちの新しい子達を紹介するんで、出てきたら拍手してやって下さい!」

 ジュンが一通り挨拶し終えると、彼からの指名制でそれぞれ一人一人登場していく、という流れで先ずはルナが指名された。


「こんばんわッス!「ルナ」と申しますッス!担当させてもらう仕事は、主に薬品の取扱とかの担当でーす!よろしくッス!」

 ルナが挨拶を済まし、拍手が沸き起こる。ジュンが次に指名したのは、ユキの方だった。


「えっえっと……ユキです。えーっとえとえと……よろしくおねがいします!」

 耳まで真っ赤に染め、簡単な挨拶だけをして駆け足で舞台袖に帰っていった。


「さぁ皆さんお待ちかね!最後はうちの期待の新人!務め初めて1ヶ月で、魔人の撃退!そしてこの間は初めての任務遂行と、輝かしい実績を残してくれたこの子!岡野 仁君でーーーすっ!」

 ジュンはすでに酔いが若干回っているのか、仁の事を大々的に持ち上げ会場が沸いたことを確認して、袖裏に居る仁へ手招きし横へ呼ぶ。


「えっと……どうも!岡野仁と言います!よろしくお願いしま……オボロロロロロロロロロッ」

「だぁぁぁぁぁ!仁君が吐いたーーーー!ミアミアーーー!洗面器とタオルーーー!!!」

 緊張がマックスに達し、喋っている途中で壇上の上で盛大に嘔吐をしてしまう。

 見ていた会場の皆は、驚いてはいたがあまりの事に爆笑をしていた。

「大丈夫ですかジンさん?」

「うぅ……すみません……」

 ミアに背中を擦られながら、舞台袖でかなりグロッキーな状態でいた。


 一通り落ち着きを見せた頃には、皆もうそれぞれで会談を再開したり、お酒を楽しんだりしている。

「いやぁどうもアカイワ殿、おひさしぶりです」

「あぁどうも、お久しぶりです」

「この間送った試供品どうでした?」

「あーあれ!良かったですよ、ウチじゃ特にミアが気に入ってて」

 色んな商人や貴族と会話をしているジュンは、楽しそうに喋っている最中、その横でアスタはちょろちょろと走り回り、色んな食べ物や飲み物をあさっている。



「ししょーーーーー!こんな飴あったーーー!」

「こらアスタちゃん!走るんじゃありません!ちょっと!待ちなさい!」

 長く棒状に伸びた飴を振り回し、ジュンの元へ急ぎ足で駆け寄る彼女だが、話に夢中なジュンはアスタに気付いていない。

 すると着慣れてないドレスで走っているアスタは、裾を踏んでしまい盛大に転倒してしまう。


「あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁ!ケツがぁぁぁぁぁ!」

 ジュンの尻には、先程までアスタが手に持っていたカラフルな飴が突き刺さり、手に握ったままのアスタの体重が掛けられていた。

「ししょーごめん!今抜くからぁぁぁぁ!」

「コラ馬鹿!無理に動かすんじゃねぇ!あ痛だだだだだだだだだ!折れる折れるぅ!!」

 その姿を見た他の人達は、いつもの光景かと言わんばかりに、止めるよう気配もなくただ皆笑っている。


 

 二時間もすれば、皆お酒もまわり出来上がっている人が多数だ。

「ミアちゃーん……アスタ眠い……」

「ほらほら、ここで寝ないでくださいね~」

 目がトロンとなり今にも寝そうなアスタは、ミアに抱きかかえ上げられ膝の上で丸くなる。


 ギリアムやリューコもそれなりに酒を楽しんでおり、二人共それなりに出来上がっている状態だ。

「でよ……!おいアカイワがマイク持ちやがったぞ……見とけよ~」

「え?あっはい!」

 マイクを持ち、かなりの泥酔状態のジュンを見つけたが、ギリアムはヘラヘラと笑い煽りを入れて楽しんでいる。



「新人歓迎会にお越しの皆様!元気ですかー!元気が有れば何でも出来る!いくぞー!1!2!3!ダーーーーッ!」

「いや!アンタは何処のプロレスラーですか!」

 そんな事を突っ込みながら、仁は暴れるギリアムを横目に、ジュンの泥酔状態を眺めていた。会場に居る皆は、いつもの様に悪乗りに拍車を掛け、掛け声に合わせて叫んでいる。

 あまりの人混みと熱気に当てられ、仁は一時ミアとアスタの居る場所へ戻り、水を一杯飲んでいた。

「ミアさん……止めなくて良いんですか?」

「まぁ……時期がくれば止めますが、今は良いんじゃないでしょうか?」

 若干疲れた表情のミアは、膝の上で眠ったアスタを撫でながら、いつもの事と笑っている。



「てめぇらぁぁぁぁぁ!俺は一つ聞きたいことが有る!メイドとは何だ!そこのおっさん!答えてみろ!」

「メイド、えーと屋敷の維持をしてくれる、働き手………」

「ブッブー!違いますー!」

「(上司といえども、あの煽り顔は腹立つなぁ)」

「いいか~よく聞け!メイドってのはなぁ、皆のママなんだよ!一日の飯は誰が用意してくれている!お前らが履いたクッせぇ靴下を誰が洗ってくれてる!失敗した時・良いことが有った時、誰に愚痴ったり報告したくなる!そう……全てしてくれるのは、小さな頃は皆母親だったはず!だが年を取るにつれ、それもできなくなる!でもなぁ!もし!優しく全てを母性で包み込んでくれたり、してくれる人といえばメイドなんだ!」

 支離滅裂で酔いに任せた演説は、よくわからない方へどんどんヒートアップしていく。


「その点うちのミアを見てみろ!もう最っっっっっ高だろ!美人で可愛い!さらに飯も上手くて、掃除も上手い!気立ても良いし、いつもニコニコ笑ってくれている最高の女だ!!!俺はミアと結婚して良かった!愛してる!お前の為なら世界だって滅べちゃう!」

「あははははは!アカイワ殿、あんたが言うと冗談に聞こえねーぞ!」

「でもそうだろ!でさでさ!皆も知ってると思うけど、アスタはまだまだ幼いちびっ子だ!それをあやせる母性も天下一品だ!もうね俺、女神と結婚しちゃったって思ったよ!んでな家でやりたくもねぇ書類業してるとさー、丁度いいタイミングでミルクと砂糖の入った甘めのコーヒーを入れてくれんだよ!」

 もうここまで喋りだすと、笑い声は有れども誰も止める気配など微塵もない。

「見た目・性格・技術、何に置いても全てが最高なのは、ウチの嫁ミアなんだ!そして溢れ出る母性は、もう第二のママなんだよ!お前ら」


 後ろの扉が開いたと思うと、国王とガルムにリィナも加えた三人が入ってきたのだ。

「あらジンさん、楽しんでますか?」

「はい!……でも赤岩さんが、あんな調子で」

「あらあら、でもミアさんも羨ましいですよ~。あそこまで思ってくれる殿方と結ばれるなんて」

「ジュンの奴、いつもより元気じゃねぇか」


 ガルムと国王はあの様を見ると、大きく笑い飛ばし来客にそれぞれ挨拶のため、それぞれ何処かへ歩いていった。

「ってことで話をまとめると、メイドと言う職業は母親と同意、ミアは女神ということだ!」

「おいアカイワ…そろそろ…」

 ここでギリアムが止めに入るのかと、壇上に登りジュンの持っているマイクに手を掛ける。


「俺にもリィナの事喋らせろ。確かに戦乙女ヴァルキリーはお前からすりゃ、いい女代表かもしれん……でもな!真の女神ってのはリィナの事を言うんだよ!」

 訂正……ギリアムも、全力で妹愛を語るつもりで、壇上に登ったのだ。

「あっ!てめーミアの事、馬鹿にしやがったな!いくらお前でも許さねぇ!ってかマイクから手を離せ!まだ語りたい事全部言ってねぇぇぇぇ!!」

「いいや十分だ!次は俺だぁぁぁぁぁ!!」

 まるで子供のようにマイクを取り合う二人は、殴り合いの喧嘩に発展するのでは無いのかと、本当に心配になるほどだ。


 ミアはアスタの髪に顔を埋め、耳まで真っ赤にしている顔を隠してる。

 その反面リィナは、酔った兄とジュンのやり取りを見て、ニコニコと笑っている始末。


 ルナとユキは、その場で親しくなった同年代の女性や、リューコ達と楽しそうに笑っているのが見えた。


 この世界に来て毎日が目まぐるしく変わって、辛いこともこの短い間に沢山あった。でも辛いだけじゃなく、今日みたいに楽しい日も同じくらい有ったんだ。








 この世界に来て、本当に良かった。


To Be Continued

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