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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第4章 裏切り者をぶっ飛ばせ! 編
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第4-40話 決着は一瞬で

 ユキの家から、西に2時間程してから荒れた道を進んでいた。

 道は激しく波打ち、長い間人の往来が無いのは一目瞭然。


 道中野生の動物や魔物の類と遭遇したが、怪我をしているとはいえギリアムの敵ではなく、あっさりと撃破していく。

「今俺が居るのがこの辺なら、あともう少し程か」

 地図を確認しながら、周辺を確認し突き進んでいく。地図に従いながら進んでいると、奴が居ると証明するかのように糸がちらほら見え始めてきた。


 やがて辺を包んでいた夕日は姿を消し、代わりに夜の帳が世界を包み、静かさがだけとなっていた。

 入り組んだ地形を超えると、景色が急に開けパチパチと篝火が燃え盛り、採掘場跡が大国のコロシアムにも負けない広さと、丁寧に舗装された地面は踏みしめるにしても、走るにしても丁度よい硬さで、長い間人が来る事はなかったのに手入れされている事から、ベルードが居ることの証明となった。


 ギリアムが到着し、その時が来たことを待ちわびていたベルードは、先日の格好と同じ黒の執事服で、丁寧にギリアムへと一礼をする。

「お待ちしておりました先輩、私の伝言は伝わりましたかね?」

 待ちわびていた来客を迎え、もてなす彼は心底嬉しそうにギリアムに話しかける。


「悪いなベルード、俺は昔の俺に戻るつもりはない。リィナの為、良いお兄ちゃんを続けねぇといけねぇんでな」

 その言葉を聞いたベルードは心底ガッカリし、不愉快だという気持ちは見ているだけでも十分伝わる。

「……予想はしておりましたが、では仕方ない手荒く行くとしましょうか」


 彼は指を弾き、コロシアムに軽い音が鳴り響いたと思うと、本来は採掘員の足場や行き交う通路になっていた場所が、新しく火が着火され観客席へと早変わりした。

 観客席には荒くれ者がひしめき、二人の戦いを今か今かと心待ちにしていた。


 二人はコロシアム中央に寄り、互いに手を接触させ呼吸を探り合う。

「野郎共!!!準備は出来たか!!!こっから先はベルード様と、憎き赤岩ファミリーのギリアムによる、ルール不要・時間無制限・どちらかが死ぬまで続く、デスマッチの開幕だーーーッ!!!」

 司会とも思える男は、マイクを手にし荒くれ者達を煽り、会場に熱気を持たしていく。

 だがギリアムやベルードにしてみれば、関係がない話だ。今からぶつかり合うのは、二人の武闘家でも無ければ、誇り高き騎士の果たし合いでもない。


 2匹の雄が命を削り合う、戦闘本能むき出しで行われるデスマッチだ。

「なんだベルード……このやかましいエテ公共は」

「先輩が私の協力者になる所の見届人として、呼んだつもりだったのですが、どうやらこの殺し合いの見届人にもなってくれるみたいですね」

 二人が呼吸を図り合い、会場の揺れる熱気や吹き抜ける夜風を感じ、仕掛けるタイミングを図りあっている。


 そして銅鐸が鳴り響いた瞬間、互いの拳が頬を捉えた。肉と肉がぶつかり合い、骨が軋む音が鳴り響く。

 互いの一撃がぶつかりあうと、歓声が湧き熱気が会場を包む。

「先輩、貴方本当に怪我人ですか?前よりも動きが良いのですが」

「あん?俺がそんな事知るかよ」



 ベルードはギリアムの顔目掛け突きを放つが、それを読み切りカウンターとして頭部目掛け、ハイキックを放つ。

 放たれたキックは、頭部を捉えるもまだ浅かった。足に糸が巻き付き、威力を半減させられたのだ。巻き付いた糸を利用し、ギリアムを客席まで投げ飛ばす。

 空中から追撃として、岩石や煉瓦などが降り注ぐが近くにいる荒くれ者を盾に、ギリアムは瓦礫の雨をやり過ごす。


 観客席から飛び出し、再度近接戦に持ち込み迫る糸は氷で迎撃していく。糸と魔法・拳と拳がぶつかり合うコロシアムは、更に熱気を帯び始めていた。



 10分も殴り合った頃か、互いに疲弊が見え始めているが、それでもギリアムは勢いを落とさない。

「わりぃな……これ以上俺も時間かけていられんのでな」

 ベルードの隙を突き拳は顔目掛け進むが、ここで初めて戦った日の様に体全体を拘束される。

「先輩……貴方の体のことは知っていました。だからこそ貴方がここで勝負を決めに来ると、僕は確信できました。一度死んで下さい」


 ベルードが糸を力一杯引き、ギリアムの五体はそれぞれバラバラに崩れ落ちる。ギリアムの死体に近づき手を伸ばした時、氷で作られたツルがベルードの体を拘束した。

「どこ見て俺が死んだって?寝言は寝て言えこのボンクラが!!!」


 背後からギリアムの拳が、ベルードに振り下ろされ、背骨を引きちぎり心臓を突き破り、胸から飛び出たギリアムの右手は、真っ赤な血に濡れトドメを指したことを表した。

「なっなんで……!」

「よく見てみろ、それは氷像アイスゴーレムだ」


 ギリアムに完全に擬態していた氷像は、形を崩し始め水となり地面に吸収されていく。

 そのようすを見たベルードは、とても恨めしそうに、ギリアムを睨みながら絶命した。


 一瞬の決まりに観客は静かになり、その静寂の中ギリアムはタバコを咥え、悠然とユキの居る場所へ帰っていく。



 その後ユキ宅についたギリアムは、休憩を挟みながらユキを護衛しながら、イーリアの仁や順の居る赤岩家へと戻っていく。




~~~????・????~~~


「やぁ……目が覚めたようだね」

 眼の前に映るのは全身白骨化した骸骨達に、一人異質な科学者のような姿をした骸骨。

「ベルード・ランペリオン君だったかな、君は一度ギリアム・ツェッペリンに殺された。君の記憶と合致しているかね?」

 この男は書類に目を通しながら、自分の素性を読み上げていき、私の体に施した改造手術及び、蘇生術式の説明をすると体に以上は無いか聞いてきた。


「痛みも感覚がズレるということも無ければ、まぁ八割成功と言ったところか。ランペリオン君、何故私達が君を蘇生したと思う?」

 しばらく間をおいた後彼は、骸骨となっても解る微笑みを作り、私を仲間として迎え入れたいと言ってきた。

「まぁスグに返答しろとは言わないさ、だが君は絶対私達に協力するだろう」

 そう言い彼は、病室と研究所が混ざったこの部屋を後にした。


 魔人 ベルード・ランペリオン 誕生


To Be Continued

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