第4-36話 防衛戦
イーリア国城門前にて、リューコ&ルナの二人で軽く見積もっても30体は居る不死身の集団、衛兵達からすれば元々イーリア国で実績を上げていたミア、赤岩家所属のジュン・ギリアムのツートップからすれば格段に見劣りし、あまり功績の話も聞かない。
それにもう一人は最近入ったばかりの新人、一般兵どころか長年勤めた兵士長すら、この大群を二人で捌き切るのは不可能だと誰しも思っていた。
「アンタ達はこの門の中で、いつも通り仕事してりゃいいのよ。こういう化物の相手はアタシ達の専売特許なの」
「しっしかしリューコ殿、お言葉ですがあの数にして、噂通りの不死性なら…」
「バカッスねぇ~、別に一緒に戦っても良いッスけど…『巻き込まれる』ッスよ?」
そう彼女が言った瞬間に、化物集団の足元が沈下し釜の様に奴らを包み込む。
「あの馬鹿コンビみたいに、直接戦うのは出来なくても、アタシ達にはアタシ達の戦い方があんのよ!ルナちゃんお願いね」
「アイアイサーっ!さぁてさぁて、怪物さん達はどれがお好みッスかねぇ」
彼女のポーチから取り出されたフラスコは、空中で爆ぜると水滴の一粒一粒が雨のように降り注ぎ、地面・草木・岩等をも無差別に溶解させていく。
化物の阿鼻叫喚は、静寂に沈んだ夜にこだまする。
「リューコ姉さん!ビシッと決めちゃってくださいッス!」
手に持った鉄製の杖を地面に突き刺し、上空へと魔法陣を描いていく。赤色に発光すると、陣から炎の槍が幾千にも振り下ろされる。
熱と溶解液で体が溶け、ドロドロになった化物達は、傷を修復しながらもゆっくりと地面をよじ登り、数体這い上がってきた。
ルナは無言でポーチから革製のリストバンドを取り出し、それを右手に装着すると、小さな鉄製の機材から針を突出させる。
「さぁてさて、姉さんが動きやすい様にルナは漏れたやつの処理に行きますか」
毒を全身で浴びた化物は、体に免疫が出来たのか肉片に毒を宿し、それをルナに向け浴びせる様に投げつける。
それを華麗に回避し、喉元から下顎を撃ち抜くようにアッパーカット。
化物はニタァと笑い彼女を捉えるべく、両手で抱きつく様に迫るもその瞬間、体は爆発四散し血と肉の雨を降らせる。
「最強様や、ギリアムの兄さんみたいなハイパーパワーは持って無いッスけど、これ位は出来るっすよ」
血中の鉄分に反応し、その体積を何倍にも膨れ上がらせる薬品と、その反応時に発生する熱を利用した発火性を持つ液体を合成し、それを武器に運用する彼女。
「えっぐい攻撃するわねぇ…」
爆発四散し下半身のみ残った死体の上で、彼女は踊る様に足を広げ回転し、迫り寄る怪物をなぎ倒していく。
だがその時一体が踏みとどまり、ルナの足首を掴んだ。男性型の怪物はニタリと微笑み、ズボンに隠れたその柔肌に噛み付こうと、その大きくいびつに変形した口を広げる。
「…何、触ってるッスか…このゴミ屑野郎が…」
掴まれた右足とは逆の、左ブーツのヒールの先から一本の筒が勢い良く飛び出し、足を掴んだ怪物のこめかみを貫く。
「…消えろ…キモいんだよ…」
ズボンに隠された鉄製のレバーを引き、その筒を通り怪物の脳へ直接薬品をねじ込んだ。
怪物の体から、奇妙な植物が急激に伸び、怪物の体を苗床に成長していく。そこへ彼女はポーチから油を取り出し、魔術により炎の燃え盛る地獄の釜へ蹴り落とした。
ルナが前に出て化物達の目を引き、リューコは後ろで援護をする。二人で出来る完璧な布陣だった、だがリューコの足元から急に手が這い上がってきた。
それも赤子の手だ。
赤子といえど化物となった今、リューコよりも遥かに力は上だ。恐ろしい程の握力で、リューコの右足首を握り折ってしまう。
「マ”、マ”、ァ”ァ”ァ”ァ”」
その時の恐怖や痛みが混じり合い、彼女は魔術の発動に必要な集中力を欠いてしまう。
鈍い玉のような汗を幾つもこぼしながらも、自分の体を徐々に這い上がってくる、化物の子を見つめ冷静さを取り戻せずにいた。
「(地中からなんで!?それにこの力、この間合はまずい、私の魔術じゃ自分まで巻き添えに…)」
いくら対策を考えど、赤子は胸の上を登り、その小さな手をリューコの首に掛けた。
完全に器官を捉え、呼吸が完全に遮断される。
「ここの神経と筋肉を切断すれば大丈夫ッスよ、生きてるッスか姉さん?」
落ちる間一髪の所、ルナが赤子をナイフで背中から刺し、手を動かすのに必要な神経や筋肉を、まるで豚や牛を解体するが如く淡々とこなしていく。
「あっありがとう…でも、なんでそんなに…淡々と出来るの…」
「…私の性質だから…ッス。さぁ姉さん、足治したら反撃するッスよ。なんかアイツら回復力落ちてますし」
煉獄にその身を焼かれた化物は、幾度とない再生と破壊をその身で繰り返し、再生力も底を突き始めていた。
傷が完全に癒えてない個体、活動を完全に停止した個体や様々だが、ダメージは着実に蓄積している。
ヒールの筒から飛び出した薬品、というよりも薬品に漬けられた一種の種子は、地面に蒔かれ急激に成長を始め太いそのツルで怪物を締め上げていく。
「天におわします我が神よ、この悪しき者達に一度の罰と、恒久なる安らぎを。卑しき魂は父の一撃により浄化され、汝らを肉体の檻から開放せん。受けなさい神の雷槌!ドナ・ゴッツ・オータイル!」
激しい轟音と共に空中から激しい雷槌が、ルナの急速成長させた植物に感電し、植物もろとも化物共を灰燼に帰していく。
炭となった化け物たちは、魔核すら破壊され再生すら叶わなくなり、全ての個体が生命活動を停止する。
「うひゃ~、姉さんも結構やるっすね~」
その惨状を見張り台から見ていた兵士は語る、彼女たちも例外なく赤岩家のメンバーを名乗るに恥じない実力の持ち主、メンバーの一人一人が人智を超えた実力の持ち主だと。
防衛戦・ルナ&リューコ ペアの勝利
~~~約束の平原・決戦地点~~~
「うおぁぁぁぁぁ!!」
「シャァァァァァッ!!」
互いに一歩も譲らない攻撃は、重なり合う度に深く重たい波動を撒き散らし、周囲の地面がえぐれ始めている。
「庄司!何故君は関係のない人まで巻き込む!それに…それに!」
「言いたいことはハッキリ言いやがれこのカス!それに家畜をどうしようが、俺の勝手だテメェなんぞに説教される覚えはねぇ!」
振り下ろした庄司の一撃は、何よりも重く仁は受け止めるのに手一杯だ。
「それに!君みたいな悪人が居るから!涙を流す人は減らないんだ!お前みたいなのが居るからぁぁぁぁ!」
怒りと気合いに任せた勢いは、庄司の一撃を振り払う為の力を更に増幅させる。
「じゃあテメェは何だ!正義?善意?そんな犬の糞にも劣る価値観振りかざして、なまっちょろい覚悟で俺の前に立つんじゃねぇ!!!」
胸を蹴られ後方に仁は吹き飛び、折れた大木に激突した。蹴られた衝撃により肋骨は折れ、激しい痛みが体を駆け巡る。
「どいつもこいつも、ガチャガチャうるせぇよな。やれ「他人を尊重しろ」やれ「皆仲良く」だ。俺からすりゃ、弱いもんは玩具であり、俺の糧なんだよ。俺と同列に扱って、俺と同じ目線なのが腹立たしい!俺だけが特別なんだよぉっ!」
彼の怒りの理由とは、彼の化物を放った理由とは?
To Be Continued




