第4-34話 吠えろ、少年
新しく手にしたこの自分専用のマシン、仁に呼応する様に速度を上げ、草原をひた走っていく。
約5分程飛ばした後か、見晴らしは良いが周囲に小高い丘しか無く、目印になるものはない。
ガルムから伝えられていた場所に到着すると、呼吸は荒く鎧の隙間から血を流し、魔封具と言われた宝石の取り付けられていた手甲が、右腕ごともぎ取られ、デレクは瀕死の重傷を負っていた。
「貴方は…デレクさん!」
アスタと共に、停車させたマシンから離れ、彼の体を寄せ上げていく。
「しょ…う…ねん、何故…敵で有る私を…」
「赤岩さんから学んだから、困っている人を助けるっていう、本当の強さを」
「…君も…あの、手紙を読んだろ…なのに…何故、あの男を信じれる…」
「…確かに最初は落ち込んだし、今までの事を否定しそうになりました。でもあの人の行い、それにあの人の正義を、僕が否定したら恩を仇で返しちゃいますから」
「……そうか。…あとそこのお嬢さんにも…謝っておかないとな…」
血に濡れた左手をアスタに差し出し、彼女の手を握りしめると、デレクはあの時の行いを謝罪した。
目的の為にとはいえ、本当に済まなかった、巻き込んで済まなかった。と
「……おっちゃん…」
「アスタちゃんが許しても…その事だけは、僕は絶対許しません」
彼女が優しい子だということは、仁も知っている、それ故彼女が許してしまっては、自分の気持ちが収まりがつかない。それが仁の答えだった。
「では…しょう…ねん、逃げろ。誰でも良い…あの化物を…倒せる奴を…」
デレクの言葉はここで途切れ、指さされた所を見ると草原の真ん中に、見覚えのある漆黒の鎧に、残忍な笑顔。
「庄司…君」
「よぉ、今日は保護者は一緒じゃねぇのか?」
クスクスと笑う奴は、仁とアスタでは役不足と言いたいのか、デレクから引きちぎった手をブラリと遊ばせ、指を鳴らす。
「なら、俺の出番は無ぇ。さぁ!雑兵共!一号!こいつ達を食い散らかしちまえ!」
地中からゾンビの様に這い上がり、唸り声を上げる元『人間』達。
「待てよ!待てよぉぉぉぉぉ!庄司ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
化物に囲まれながらも、自身の人生初めてとも思える様な、大きな地面を揺らす声。
仁の心の底からの怒りは、庄司の足を止めた。
「…お前、今俺の事を呼び捨てにしたか?」
その振り返った瞳には、明らかな怒りが浮かんでおり、ジッと仁を見つめる。
「随分と調子に乗ってデカく出たな!仁!じゃあコイツ達全員ぶっ殺して、俺に会いに来い!そんときゃ俺が直々にぶっ殺してやる!」
「あぁ!君のした事!全部僕が精算させてやる!」
庄司を指差し吠えた後、両手を上に構えるとマシンから射出された、ジキル&ハイドを両手で受け止め、アスタとデレクの方を包む群れを射殺していく。
「アスタちゃん…その人にはまだ償うべき罪がある…連れて逃げれる?」
「……うん。でも…ジン君は?」
「僕は…アイツをぶん殴りに行く!」
単身で敵を引き寄せるように、中央を位置取りアスタとデレクの退路を確保する仁は、今まで…それこそ、庄司が知っていた仁とは一線を画す強さで、化物の群れを撃破していく。
「ジン君…ごめん!」
アスタがデレクを抱え走り出した時、また新しい怪物が生み出された。
「これじゃあ…先に行けない…」
「……お嬢さん、私の剣を抜いてはくれないか」
左に装着された剣を、アスタは引き抜き隻腕となったデレクに手渡す、元のマント赤を塗りつぶすように、血液は垂れ、染みを作っていく。
「おじさん…血が」
「…コレは私が間違えた道を進んだ罰だ。…少年が作ってくれたチャンス!私達は逃す訳にはいかない!行くぞ!」
アスタの援護をする様に、デレクも辛い体を動かし、敵陣を駆け抜けていく。
「うおぉぉぉぉぉあ!!庄司ぃぃぃぃぃ!」
「んなに焦んなよ!カス!」
やっと庄司のもとにたどり着いた、だがその時に仁は足首を捕まれ、地面に叩きつけられ投げられた。
「ったく…襲えと命令したはずだが」
「すみませんショージ様、ですが彼の戦闘力を計算した所、ショージ様の付近で待機する方がその御身の安全を守れると判断させて頂きました」
地中から這い出し、姿を表したのはマリードだ、血を入れ替えられ庄司の傀儡と化した彼だ…。
「一合、あのカスを殺せ。不敬罪だ」
「かしこまりました」
土煙に向かい突進を始め、土煙に入った時マリードの顔に鈍痛が走ったと思うと、マリードは土煙の中から弾き飛ばされた。
「どうせなら、二人でかかってこいよ!庄司!腰抜けかよ!」
「てめぇ…舐めやがってぇ!」
To Be Continued




