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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第4章 裏切り者をぶっ飛ばせ! 編
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第4-32話 真意


 デレクは羊皮紙をガルムに投げ渡した後、騒ぎが大きくなってきた為に落ち着いて話す場所を設けると、今夜11時町外れに有る小高い丘を指定したきた。

「あっ!待て!ガルムさん、追わないんですか!」

 落ちかけた騎士を引き上げるた仁は、走り去るデレクを追跡しようとするが、ガルムに静止される。

「なぁ…ジン君、一つ聞いていいか…」

 上ずったような声で何か信じられない事があったのか、彼は羊皮紙を握りしめ仁へ一つの質問をぶつける。


「ジュンの事は好きか?」


 だった。


「はい!!…あっでも、その…恋的な方じゃなくって、憧れっていうか…」

「いや、知ってるからね」

 羊皮紙を持った手で、頭をガシガシとかきむしる彼は、この事を仁へ伝えるべきかどうか悩む。

 尊敬する師の様な人物が、自分の命を狙っている。

 その事を…


「(でも何故…あのジュンがこんな回りくどい手を…それにあんな破格な条件の提示…)」

 ガルムから見たジュンは、明朗快活の言葉が相応しいくらいの人物、戦略や情報戦では恐ろしく頭が切れる彼だが、私生活や人間関係は至って単純。

 気に入ったらとことん、嫌いなやつは嫌い、はっきりして身分の差や、地位・名誉などには目もくれないあの男がどうして。

 ひとまず仁と二人で話ができるよう、騎士達にはデレクの追跡を命じ、自身は仁を連れ詰め所へ向かう。


「あっちゃ~…ガルムにもバレたか。まぁそんときゃそん時だな」

 仁とガルムが城内に入る所を、ジュンは民家の上からしっかりと見物していた。

「ジュンさん、見物も良いですがそろそろロザミア達の動きを探らなくて良いんですか?」

「いいのいいの~、多分相手はまだ様子見だろうし、何より庄司って奴に経験を積ませようとしているのが目に見えてるからね。それならこっちも便乗して、仁君を育てるのに時間を費やす方が得策だと思うのよ」

 そばに佇み会話をするミアだが、一枚の黒い封筒を預かるとその場で開封し、じっくりと読み込んでいく。

「…これって、俺たちがこの間行ったデレクの集落だよな…」

「マリード君が魔人という事は把握していますが、他の住民は普通だったはず」

「だよな…で、集落全員が凶暴化及び、吸血行為による被害の拡大…ねぇ。ミア襲われた人の素性は?」

「はい。行商人が4名、それの警護にあたっていた傭兵が12名。それに旅人が6人。一晩でこの数です…」


 しばらく唸り腕組みしながらジュンは考え込むと、ミアへ王城に行き今回の件仁君達に全て説明し、屋敷にいるリューコに『ある物』の開発が終了しているのなら、それを持ってくるよう鳩を飛ばすようにと指示が下る。

 一礼した後、ミアは忍者の様に姿を消し、自分に下った司令を済ませるべく向かっていく。


「さぁて…俺はお手並み拝見と行くか」

 ジュンは凝った体を伸ばし、足に魔力を溜めた大跳躍により空へ姿を消す。




~~~集落周辺~~~


「う”う”う”ぅぅぅぅぅぅ!!!」

「あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁ!!!!」

 理性を失い完全に化物に成り、なんの目的があり行動をしているのかわからない集落の人物達は、道行く行商隊を今も襲い交戦状態に入っている。

「離せ化物ぉぉぉぉぉ!」

「なんだコイツ達は!頭を壊しても、腹を裂いても立ち上がってきやがる!!!」

「商品と私を守れぇぇ!何としてもだ!」


 雇われた傭兵は、依頼主のいる馬車を守りながら剣を持ち戦っているが、数も自身達の何倍も居る上不死身の怪物なのだ。

 徐々に追い詰められ、馬車周辺に固まり、全滅を覚悟した行商隊。

 その前にこの世界最強の男『最強ザ・ワン・アカイワ ジュン』が姿を表した。


 言葉を交わさずとも、ジュンは次々と怪物達を殲滅していく。

 だが背後から数体の化物に羽交い締めや、抱きつかれた時、一体がジュンの二の腕に噛み付こうと口を大きく広げた。

「気をつけろ!最強ザ・ワン!そいつらに噛まれると、奴らの仲間入りだぞ!!!」

 その時化物の歯は折れて砕け散る、ジュンの皮膚には全くの傷一つ無く、振り払った腕に勢いを付けそのまま肘で怪物の頭を切り裂く。


 鍛え抜いた武術家の手刀や、蹴りは打撃の域を超え、どんな名工が作った刀剣よりも鋭い刃となる。

「やっぱりな…済まないこんな手荒なやり方しかできなくて…仁君なら楽に送ってやれるんだが…」

 慈愛を込めた一撃は、怪物達に降り注がれ5分もした頃か、怪物達は動かなくなりその生命活動を停止させていく。



~~~王城・仁&ガルム~~~


「そ…そんな…赤岩さんが…」

 青い顔で自分がしてきた事や、思い描いていた彼の人物像がなくなり、自分の芯が崩れたような…、そんな感覚に襲われた。

「まぁ…ジン君…俺は外に出てるからさ…その…落ち着いたら声かけてくれや」

 扉を開け出ようとした所に、ミアが立っており頭を下げ、部屋に入っていく。

「ガルムさん、ジンさん失礼します。お話よろしいですか?」

「おっ…おう…、でもなんです突然?ミアさんが来るなんて珍しい」


 ガルムが引いた椅子に腰掛け、目の前の仁を見つめ話す準備を始めていく。

「ジンさん。今までの動き、ジュンさんはしっかりと影から見ていましたし。評価していましたよ。」

「で…でも…この手紙の文字って…赤岩さんの字…ですよね…僕を殺そうと…」

「えぇそうですよ。ですがその真意、ジンさんにわかりますか?」

「真…意?」


 ミアは少し微笑み、今にも泣き出しそうな少年へ語りかける。

「ジュンさんはですね、貴方に成長して欲しかったんですよ。私達やジュンさんのしている仕事は常に危険が伴います。それはジンさんもわかりますね?」

「………はい。」

「ですから守られるだけじゃなく、自分の命は勿論、自分の大切に思う人を守る力を身に付けてほしかったんですよ。…そんなやり方しか知らない、不器用な人なんですよ。あの人は」

「…少し…考え…させてください」


 部屋を後にし、一人どこかへ歩いていく仁を見つめ、ガルムとミアは部屋に残り会話を始めていく。

「…ジュンらしいやり方だな」

「全くですよ。こんな損な役回り、ホントはしなくてもいいのに」



To Be Continued

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