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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第4章 裏切り者をぶっ飛ばせ! 編
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第4-30話 恐怖とは何ぞや

 仁やガルム達の特訓が始まり、あれから3日程過ぎた頃か、あの男もイーリアの地へ降り立っていた。

「聞いたか?デレク様があの少年を引き込むって話」

「あぁ聞いたさ。何かこの間『最強ザ・ワン』が来てから、様子が変わったよな。昔のデレク様に戻った感じだな」

 夜の巡回をする武装した男二人は、村から少し離れた所で横に並び、立ち小便をしながら談笑に話をしている。

 一通り用を足し、巡回に戻ろうと振り向いたとき、彼らの瞳には奇っ怪な『化物』が写った。


 小高い丘の上に一人、骨で構成された馬の様な乗り物に跨がり、背中からはマントが風に揺れているのでは無く、真っ赤な液体が吹き出し赤黒く月の光を反射している。

 まるで血を着込んだ様な鎧、二人は恐怖した、遠目といえども感じる悪の気配に。


「なっなんだ…あの男は」

 その時一人の男が、悲鳴を上げ、畏怖に屈し、村に走り出した時、その恐怖の塊と目が合った。

 もう一人も逃げようと、後に続こうとするも、メドゥーサに睨まれ、体が石になったように動けない。


 その男は小高い丘から、骨の馬を駆り、男の方へ向き駆け出した。

 地面をえぐり、高笑いを上げ、目の合った男の方へ向かう男。


 5分もしない内に、彼は男の元へ到着し、男の元へ歩み寄る。

「ここか?デレクとか言う男が居る村は?」

「あ…あ…何なんだ…お前は」

 眼の前の男は自分と同じ程の大きさだが、恐怖によってか、遥かに強大に感じる。

 そして近づいて初めて気付いた、おびただしい血の匂いに、本能が告げている。


 逃げろ


 そう告げている、だが恐怖で足が動かない、言葉も拙い。

 眼の前の男は、右手で頭を掴んだ、指が頭部に沈み込んだ時、頷くように「ほう」「へぇ」と、何かに納得して居る。

「大体解った、ここで間違いねぇようだな」

 男が言葉を発すると、頭部を握り潰し引きちぎる。

 頭の無い亡骸は、膝から崩れ落ち、血液を撒き散らしながら、地面に突っ伏す。



 村の方角へ向け、歩き出した時に背後から短剣での斬撃が振り下ろされ、身を翻しその一撃を回避する。

最強ザ・ワンといい、最近厄介な来客が多いですね…、それにその身のこなし、只者じゃないですね」

 2本の短剣を携えた、顔の皮膚が焼け爛れた少年、マリードが到着した。

「あははははは!!!!確かお前は『マリード』だったよな!!!こりゃ幸先が良い!!カスと殺り合う前に、オメェみてぇな奴と殺れるなんてよ!!!」

 徒手空拳でただ暴風雨の様な荒々しい、乱撃を繰り出す男だが、マリードは筋肉の動きや、目線、それに魔人化した時に発現した『未来視』により、難なく回避している。


 一瞬の隙を狙い、飛び上がり上空からの突き下ろしは、男の心臓と喉仏を容易く貫いてしまう。

 ギュルんと黒目が上を向き、傷口から血液を噴出する彼は、不動のまま倒れない。

「…あっけないものですね、さて先生の後を追うとしますか……何っ!」

 その時彼の耳には、空を切りこちらに進む何かの音を拾っていた、飛び上がり空中に回避した彼の目に写ったのは、胸から腹が裂け、肋骨も飛び出している敵の亡骸だったはずのものが。

「あっっっっはぁ♡最っっっっ高…やっぱ殺し合いはこうでなくっちゃなぁ…射精の何千倍気持ちいぜ…」

 マリードは悦に浸り、恍惚の表情を浮かべる男に不気味さと、ほんの少し恐怖を覚えた。

 人として壊れている感性、それに即死の攻撃すら無かったことにするあの治癒能力、あの男は戦いを心の底から楽しんでいる。

 

 彼の傷口は徐々に修復を始め、10秒もしない内に完治し、マリードの元居た方向から一本の人一人よりも大きい、大剣が男の方向へと帰っている。

「さぁ…第2ラウンド開始だ!もう様子見も手加減も必要ねぇ!蹂躙し!嬲り!快楽の赴くままぶち殺してやる!!!!」

 大柄な獲物を持つ者とは思えない技の冴えは、着実にマリードを追い詰める、未来視の先を行く速度での斬撃の嵐は、太もも・腹・肩・腕・頬に細かい切り傷を作っていく。

「(避けてるハズ…なのに何故…それに早すぎる、未来視が追いつかない)」

 

 大剣の一撃を回避し、懐へ入り込んだマリードは、両足で回転も加えた蹴り上げで、男の顎を蹴り抜け、空中で体勢を変え、大剣を持つ右腕にしがみつき、体を回転させ男のバランスを崩し転倒させる。

 背中から地面に打ち付けられた男は、ただ邪悪な笑みを浮かべ、なすがままの体制を取っているのがマリードにはとても不気味で仕方なかった。

 男の体から、針の様な突起物が無数に伸び、マリードは致命傷にならないとしても、手痛い傷を負い、一時距離を取る。


「ククク…あはははははは!!!何だ!!!何だ何だ!!!てめぇも魔人かよ!!!」

 マリードの傷が治癒していくその様子を見るなり、男は歓喜し、顔に手を当てとても愉快そうに笑っている。

 男は走り出し、マリードの頭と腕を掴み、そのまま突進を続ける。

 魔人であるマリードですら振りほどけ無い剛力、近くで見れば見るほど不気味さをます、この男の笑み。


 振りほどこうとあがくマリード、だがもう捕まった時点で遅かった…。

 そのまま壁に激突するまで、突進は続き土煙を上げ、意識も遠のきそうになった時、男の背中から大剣が突き刺さり、マリードの腹から背中まで貫通する。

「グッ…何…何だ…お…前…は」

「俺の名は『山下 庄司』、てめぇみてぇな魔人や、全人類の頂点に立つ男。さぁお前の血液じんせいを俺に寄越せェェェ!!!」

 庄司はマリードの首筋に食らいつくと、美酒を味わうかの如く彼の血液を飲み干していく。




 全て飲み干され、空となったマリード。

「てめぇは面白い、それに素質も十分!俺の側近1号にしてやる」

 マリードの亡骸に、吸い取った血液とは別、庄司自身の血液をマリードの亡骸へと注入していく。

 すると彼の亡骸は立ち上がり、姿はそのままだが別の化物へと変貌してゆく。


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