第4-25話 お使い その1
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薄暗い闇の中歩く一人の白髪の女、ヒールが大理石を叩く音だけが反響し、陽の光等入ってきはしない闇に包まれた一つの屋敷。
階段を上がると、部屋の一室からは淫靡な香と女の嬌声が扉越しに聞こえ、廊下に転がるは年・体型・性別等全てバラバラの死体達。
「ショージ食事中良いかしら?貴方に少し頼みたい仕事があるの」
「あん?んだよ、面倒くせぇ」
薬物・暴力・恐怖に漬け込まれ、もはや声を上げる人形となった女の体を貪りながらも、庄司は扉に背を預け枝毛を探しながら言葉を発した女、ロザミアへと返答をするもその声には不快感があらわになっている。
「イーリアに行って、魔封具【アベリッシュ・レイド】という物を回収してきて欲しいのよ。」
庄司は気怠げに体を女から離し、服を着直すとロザミアに視線を向け、ベット横へ置かれた棚の上にあるタバコを口に運び、火を付け一服する。
「アベリッシュ・レイド?何だよそれ」
「わかりやすく言うと、生き物の魔力を乱す道具よ。こればかりは私も手が出せないの」
クスッと淫靡に笑う彼女は、その黄金の瞳を庄司に向け細める。そうすると庄司の体に電撃が内部から走り、力関係と言うものを彼に再確認させる。
「ね、体内の魔力を乱されるとこんなに痛かったり、酷いときは立つ事すら不可能な代物。私や魔王様にとっては今、何よりも注意すべきなのよ」
「テメェ…絶対いつか俺の養分にしてやるっ…」
恨めしそうにロザミアを見つめる庄司は、心臓の当たりを抑え玉のような汗を掻き、彼女に跪く形で痛みに耐えるしか無い。
「それにねショージ、貴方に朗報よ。今回アベリッシュ・レイドを持つ男と敵対しているのは、貴方が憎んで壊したくてたまらないあの少年よ、良かったわねこんなに早く再会出来るなんて」
その言葉を聞いた庄司は、胸や体に走る痛みの事を忘れ、邪悪な笑みを浮かべ立ち上がった。
「ショージ、貴方のその笑い方とてもキュートよ」
「調度いい。アイツをちょうど殺してぇと思ってた所だ。ロザミア迷宮を開け、今すぐ出る」
両手を上げ庄司のやる気が急に上がったことに、ロザミアは少々呆れ指先でベットの上に転がる女を指差す。
「やる気を出してくれたのは、私としては嬉しいけど食べ残しは関心しないわ、全部食べてから行きなさい」
庄司の右手が女の首を掴むと、艶のあった肌は老婆の様に枯れ果て、豊満だった乳房も水を抜いた水風船の様にしぼみ、10秒かからずミイラへと変貌し塵芥へと変貌した。
~~~イーリア国・城下町南街~~~
「じゃぁ私は屋敷に帰るからね。ガルム3人の事よろしくね」
ガルムのたくましい胸に拳を軽く当て、馬車に乗り込んだ事を確認すると運転手はゆっくりと馬車を発進させていく。
「んじゃジン君、俺達も行くか!」
「え?行くって、何処へ」
ガルムは笑顔を浮かべると、後ろに振り返り高くそびえ立つ王城を指差し、これからの予定も含め三人に説明する。
「まず俺は今回の件を報告する為に、国王様に謁見しようと思う。でも3人には少しお使いを頼みたいんだ」
ジン・アスタ・ルナは、彼のその言葉にキョトンとした表情で、人混み溢れる喧騒の中ガルムの言葉へと耳を傾ける。
「カシオ・ショールドという男を連れ、王城まで来てほしいんだ。ジン君達が来ることは俺が話を通しておくから、ゆっくりコミニュケーションでも取りながら後で合流しようぜ」
そう言うとガルムは、王城へ向かい一人で人混みの中へと消えていく。
「ささジン君!時間は有限ッス!早いとこ済ませるッスよ!」
ルナは意気込みながら、ジンの腕にくっつき腕を引いていく。女性との交流も殆ど無かった彼は、布越しだが腕に確かに感じる女性特有の柔らかな感触に戸惑い、火にかけたヤカンと同じ様に頭から湯気を発している。
普段ならあまり気にも留めず、自分もジンにくっつきたがるアスタだが、2歩3歩後ろで二人の様子を見ながら、自分の心がザワザワとざわめくのを感じむくれている。
「んー!んー!」
と、唸る様に言葉を使わずに、ジンにくっつくルナを両手で押し彼から引き剥がす。自分にもこの行動の真意は解らないし、何故かこの二人がくっついているのを見ると、よくわからないが少し不快なのだ。
「あはは、何すかアスタせんぱーい、あっもしかしてアスタ先輩もぎゅーっとして欲しくなったッスか?」
そうルナはからかうと、自分より身長の小さいアスタを妹を抱きしめる様に、ルナは彼女に道端で熱く抱擁する。
「ちーがーうー!!」
小さな手をパタパタと動かし、真っ赤な顔でルナから逃れようとするアスタの耳に、ルナの一言が迫る。
「大丈夫ッスよアスタ先輩、私年下は恋愛対象じゃ無いんで、安心して欲しいッス」
その言葉を完全に理解したアスタは、先程よりも真っ赤に顔を染め、とうとう彼女自身のキャパシティを超えルナの首へと思い切り噛み付く。
あまりに痛く、ルナは抱擁をやめるとアスタは直ぐ様ジンの後ろに隠れ、唸りながらルナへ威嚇している。
「いやぁ~アスタ先輩は可愛いッスね~。」
「ルナさん、あんまりアスタちゃんをからかったら駄目ですよ」
会話を交えながら、僕らは今居る南街から酒場等が幅を利かせる東街へ向かっていた。
歓楽街の門をくぐると、商店街とはまた違った賑わいを見せており、昼からだろうと酒を煽る人も居るのだ。
皆でカシオの居る酒場を目指し歩いている時、アスタが三人組の男の一人に衝突してしまう、男達は酒気を帯びている様だ。
「ってぇな~、何処に目を付けて歩いてんだクソガキ!!!」
「ごっごめんなさい」
アスタは男の恫喝に少し驚き、謝罪をするも酒気を帯びた男の恫喝は止まらず、衝突してきたというアスタに恫喝を繰り返している。
「ちょ!ちょっと!」
仁が気付き止めに入ろうとする時、緋色の着物を着込み腰には2本の太刀を携えた、白髪の中年男性がアスタと男の間に割って入った。
「おいおい、このおチビちゃんも謝ってんだし、その辺で良いんじゃないかとおっさんは思うね~」
「あん?んだテメェ、俺はこのクソガキに常識を学ばせてやってるだけだろ?」
あまりにもヘラヘラとした中年の男は、酔っぱらいの恫喝なぞ何処吹く風の様に聞き流し、懐から取り出した煙管に火を付け、気持ちよさそうに煙を吐いている。
酔っぱらいはそれが気に触ったのか、その逞しい右の拳を振り上げ中年の男に向け真っ直ぐ放つが、酔っぱらいの方が背中から地面へ激突し、目を見開き「信じられない」と言わんばかりに無言で驚いている。
「手ぇ出すのは良くねぇよな~、おっさんだったから良かったけど、その拳この子に振り上げてたらこんなんじゃすまねぇよ。」
しゃがみ込み酔っぱらいの顔へと、キセルに入っている火種を落とす。酔っぱらいはあまりの熱さに悶え、仲間を連れ一目散に逃げていく。
「すっ凄い…確か今のは合気道の小手返し…だったかな」
ジンはジュンが多用する合気道や空手、柔道や古武道の知識は基本的な頭に入れているが、ここまで流れる様な動きには感動を覚えてしまう。
「大丈夫かいお嬢ちゃん」
「うん!おっちゃんありがとうね!」
アスタの礼を受け取り、目の前の中年はにこやかに笑いアスタの頭を撫でる。微笑んだ口から覗く、異様に伸びた犬歯が印象的で地球の伝承に残る、吸血鬼のイメージと酷似している。
「アスタちゃんを助けてくださり、ありがとうございます!」
「あはは良いの良いの、困ったレディーを助けるのは紳士の努めでしょ。でもオタクも大切な彼女をキチンと守ってやりなよ~」
そう言いながら手をヒラヒラと振り、下駄を鳴らしながら中年の男は歩き去っていく。
「格好いいなぁ~…」
「The・いぶし銀って感じッスね!惚れ惚れしちゃうッス!」
「かっこいい!」
紳士的な態度と、ジュンやギリアムでは出ない大人の魅力、その魅力に三人は彼の後ろ姿を見つめていた。
「あっ!!!…くっそぉ~、犬の糞踏んじまった…」
「やっぱり気のせいかも…」
「全然いぶし銀じゃないッス…」
「かっこわるーい…」
To Be Continued




