第4-24話 おはようジン君
あれから一体、どれほどの日数と時間が経ったのか。
僕はどれほど眠りに入っていたのか、何も解らないし、見たことの無い天井で、隣のベットでは隻眼の人狼が寝息を立てていた。
起き上がろうとすると、腹に急激な痛みが走り、胸には何か重みを感じそちらに目をやると、いつかと同じ様にアスタちゃんが眠っている。
「おっ!目が覚めたッスか?」
お盆に水を汲み、足で横開きの戸を乱暴に開けた彼女は、こちらの様子を見ると奥に居るであろう人物に声を掛け、急ぎ足で出ていく。
聞いたことのない陽気な少女の声、一つに結ばれた大きな三つ編みが特徴的で、水の様に透き通った水色の髪が綺麗だった。
「リューコ姉さーん!ジン君起きたッスよー!」
「ふぁ~…案外早かったのね。っていうかルナちゃん朝から元気ねぇ~…」
開けっ放しになった扉から、リューコさんに先程の初めて見る女性が入ってくる、寝癖が若干残る髪を指で髪をとかしながら、リューコさんは僕の左側へと腰掛ける。
「おっおはようございますリューコさん」
「おはようジン君、体起こせそう?」
痛みが残っている事を説明すると、彼女は僕の体を支えながら起き上がるのを手伝ってくれ、僕が眠ってからの事を説明してくれた。
「で、気絶したジン君を運んできたのが、横でバカみたいに寝てるガルムで、応急処置をしてくれてたのはこのルナちゃんって子よ」
「どもッス!『ルナ』ッスよ!新しく赤岩探偵事務所の情報系担当で働かせてもらう事になったッス!」
と、敬礼をする様に右手を額に当て、可愛らしく挨拶してみせる彼女。だが僕にはとてもじゃないが、直視は出来ない。
「ん?どうしたッスか?」
「えっ…あっ…いや…その」
しどろもどろで返事に困る僕に対し、リューコさんはニヤニヤと笑みを浮かべ、ただ無言で座っている。
その時寝心地が悪いのか、太ももの上でアスタちゃんはグズる様に、ゴソゴソと動き寝やすい場所を探し出す。
「アスタせんぱーい起きるッスよ~」
ルナさんが彼女の頬を人差し指で突くと、寝ぼけたアスタちゃんは母猫の乳を飲む子猫の様に、突いている指を口に含み吸い始める。
「~~~~!リューコ姉さんヤバイっす!この子超可愛いッス」
はしゃいでいるルナさんを尻目に、リューコさんは少し真剣な面持ちで、僕に言葉を掛けてくれた。
これからの渦に巻き込まれるであろう事に、備えてだろうか、はたまたそのまま赤岩さんの言葉を伝える為だけか。
「いい?よく聞いて、今回私はもうジン君達に力を貸してあげれない。回復してあげれるのも、今回はこれで最後。貴方が次にこうなったらどうなるか解る?」
手を握りリューコさんは、絞った目で言葉を続ける。この言葉の先は、僕にも十分と言っていい程理解している。
「『死』よ。あんたが次に獣人国や今回みたいな怪我をしたら、今度こそ死ぬわよ。ここで寝てるアスタちゃんや私はもちろん、家で帰りを待ってるミアちゃんや、あのバカコンビだって悲しむんだから。」
言い切った後に、リューコさんが掴む手は徐々に力を増していき、どれだけ心配掛けたのかやっぱり思い知らされてしまう。
「リューコ姉さん!ジン君達の怪我は、一緒に行動してる間はルナにお任せッスよ!」
どんっ!と胸を張るルナさん、どうやら彼女は薬品の扱いに長けており、材料さえあれば簡易的な薬品の調合や、薬草や毒草から始まりキノコ類を含めた500種類以上を選別出来る足しいのだ。
サバイバル技術にも精通しており、僕らのサポート係として赤岩さんが付けてくれたのだと、掻い摘んでリューコさんが説明してくれた。彼女がサキュバス…と言うことも含めて。
「サキュバスってそんな珍しいッスか?…確かにあんま人里に降りてない閉鎖的な種族ッスけど」
「えっあっいや、その、僕の居た地球の認識でサキュバスっていうのは…」
その言葉を聞いたリューコさんは、納得した様に手を叩き笑いながら喋りだす。
「あはははは!そう言えばそうだったね。ジュンから聞いた時は爆笑したわ。」
「えっ?サキュバスってそんな変な種族なんすか!?」
「違う違う、ジュンとジン君が居た地球ではね、男の生命エネルギーを吸う淫魔っていう空想上の生物だったのよ」
それを聞いたルナさんも、お腹を抑えその場で大笑いをし始める。
この世界のサキュバスというのは、ルーツ自体は吸血鬼の遠縁に当たる種族で、粘液の接触による対象の魔力を強奪する事も可能だが、吸血鬼と同じ様に吸血行為による魔力強奪も可能なのだ。
これが一番古いサキュバスと吸血鬼の始まりで、戦闘面において鬼の如き強さが由来で『吸血鬼』、サバイバル知識や薬草学の自然に適し、進化をしたのが『サキュバス』という分類になっている。
「まぁ直接的な戦闘なんかは苦手ッスけど、罠と薬剤関係ならバシバシお手伝いさせてもらうッスよ!
赤岩探偵事務所 新人 情報屋ルナ 加入
To Be Continued




