第4-23話 交渉 END
集会所内のとある一室、そこには質素な木製の机と椅子、それに戸棚だけが設置されており、他の家具などは一切ないただの空室。
ジュンはデレクに通された通り、椅子に深く腰掛け脇にはミアを待機させている。そしてその向かいには、デレクが腰掛けマリードが横で待機する、ジュンは二人をじっくりと見定め茶を一口すする。
「俺が来た理由…なにかわかるか?」
「いえ…」
デレクは毅然とした態度で、言葉を返す様子を見てジュンは心底満足した様子で、再度言葉を続ける。
「いやぁ~良かった良かった、あんたが俺の読み通りプライドを持った人間で」
「…そうですか。ですが世間話をする為に、この場を設けた訳ではありませんので手早くお願いしたい。」
「んじゃ本題から行きますか。お願いをしたくてここに越させてもらった、もちろん断る権利はあるし、断った事であんたらに不利益がある話しじゃねぇ。一口乗っちゃくれねぇか?」
デレクは顎に手を置き、薄ら笑いを浮かべるジュンを見つめる。その時横から待機させていた、マリードは小さくデレクへ耳打ちをする。
「(先生…お言葉ですが、奴は信用出来ません。目的が読めなさすぎます。)」
「(確かにその通り。だが物事を早合点するのはお前の悪い癖だ、そこは治しなさい)」
その言葉を聞いたマリードは、少し落ち込んだように元の立ち位置へ戻り、腕を後ろで組み直す。
「もう話し直して大丈夫か?」
「はい、お時間を取らせて申し訳ない」
「頼みってのは、うちの若い子。仁君の事だ。」
その後にジュンは、ミアから手渡された葉巻を口に加え、魔術で指先に灯した火種で火を付け、肺の奥まで煙を吸い込み深く吐き出す。
マリードは戸棚から取り出した灰皿を、ジュンの前へ差し出し元の位置へと戻っていく。
「あの少年の事ですか。だが我らは敵と味方で別れている、その敵に対してのあの少年に関しての頼み事とは、またおかしな話ですね」
「そうだろ。んでその『お願い』の内容なんだけどね、あの子を殺して欲しい」
ジュンは確かに言った、彼らに『岡野 仁を殺してくれ』と。それを聞いた二人は驚きが隠せない、目をしかめ頬を強張らせている。
「…それは一体何故、あの少年は貴方の部下でしょう。」
デレクが言葉を発した後、しばらく互いに沈黙が続きジュンの煙を吐く音しか部屋に響かない。ジュンはその質問には、ヘラヘラと笑った表情で煙を吸って吐いてを繰り返す。
葉巻の一本が吸い終わり、灰皿へ火のついた部分が押し付けられ、煙を少し上げ火は完全に消える。
「あの子はな性格はどうあれ、持ってるんだよ戦いにおける『天賦の才能』を、俺すら凌駕し得る才能をな。あんたならわかるだろ、自分の地位を脅かす邪魔者の鬱陶しさが」
ジュンはそうニヤついた表情で、机に片膝を付き体重を預け、少し身を乗り出しデレクに賛同を求める。
「俺はな、この三年間で最強という地位を築き上げた、でもなそれがポッと出のあの子に抜かれるなんざ、俺のプライドが許さねぇ。危険な芽は早めに摘む、これに限る」
「…何を…言いたい」
「白々しい人だなぁ~、ミアあれ出してくれ」
ミアは先程の会話を聞いたにも関わらず、涼しい表情をしたままバックから、一枚の羊皮紙を取り出しデレクとマリードへ向け差し出す。
「これはあんたらが、受けてくれた上で成功した時の報酬だ。あんたらに不利益は無いと思うがねぇ」
デレクが目を通した、羊皮紙には以下の内容で書かれていた。
岡野 仁 殺害依頼書
・成功報酬
金貨30枚・貴殿の村へ対するイーリア国不可侵権利・戦争状況下における最強の無償助力
・期間
契約を結んで7日間、手段は問わない
と、だけ書かれており最後には、デレクのサインをする所が空欄だけが残されている。
「ふざけるな!!!私は不当に差別や迫害を受けた人を救うべく、この村を立ち上げた!利益や不利益ではない!自分の地位可愛さに、敵に部下を殺させる等、恥を知れ!!!」
デレクは机を強く叩き、羊皮紙を投げ捨て立ち上がり、肩で呼吸をし憤りをあらわにする。だがデレクの胸ぐらを掴み、自分の顔へと近づけ静かに、確かな殺意を載せたジュンの眼。
「テメェこそふざけた事ぬかしてんじゃねぇぞ、自分が後から来たガルムに負けて、あいつを殺そうとしていた。俺達同じ穴のムジナなんだよ。テメェの事を棚に上げて綺麗事抜かすなボケ」
ジュンは投げ捨てる様に、デレクを椅子に座らせると隣のマリードへと視線を向ける。
「君…良い殺意してんな、この偽善者とは大違いだ。俺にその殺意向けれる、その勇気に免じて今日は帰る。返事は後日送り返してくれや」
手をヒラヒラと振り、ジュンは個室から扉をくぐり集会所を後にしてく。
「先生…何故あんな条件を…蹴ったのですか…人格はどうあれ、あの男の戦闘力は味方に付ける事が出来るなら…」
「良いんだマリード…、俺が何故この村を作ったか…お前は知ってるよな…」
「はい、魔核が小さく差別の対象とされてきた者、社会的地位が弱く迫害されていた者、貧困や疫病などで苦しむ者、それらを救うべく楽園のような村を目指していたからです」
「あぁそうだ…それにはまず国王に認められ、土地を正規に獲得する必要があった。だが…それは突如現れたガルムによって遮られ、俺達は反乱旗を掲げざるを得なかった。俺はその時とても恨めしかった」
とても憔悴した状態で、デレクは自身の過ちを語る様に、マリードに聞かせていく。
「俺は当初の目的を忘れ、非道の道を選んだ。…貫き通す筈だった」
「…はい、私もそれに賛同し、今日まで付いてきました」
「だが俺は今…自分の過ちに気付いた…。マリード…今この場で俺は…いや俺達はやり方を変える必要がある、付いてこれるか?」
「先生が行く道が、私の歩む道。付いて行きますとも。それがこの命を救ってもらった先生に出来る、精一杯のご恩返しです」
デレクは立ち上がり、窓から外を見ながら、自分に付いてきてくれる彼へと言葉を紡ぐ。
「俺達はあの外道から、あの少年を守る。」
~~~集会所・屋外~~~
「うふふ、ジュンさんも随分演技が上手くなりましたね~」
「だろ?あんな正義と外道の間で揺れてる様な奴には、自分以上の外道を見せる必要があるんだよ」
ズボンのポケットに手を入れ、ヘラヘラと今までの険しい表情が消えたジュンは、ミアと二人で自宅へと戻る足取りを進めていく。
「(仁君、こっからが山場だぜ。君が見た物を自分で判断し、君が本当に行きたい道を見つけなよ)」
To Be Continued




