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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第4章 裏切り者をぶっ飛ばせ! 編
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第4-22 交渉③

 自分達の渾身の一撃さえ、アカイワジュンという男には通じない。

 そしてその男は太陽を背に、今デレクの戻った先である集落の前で立ち止まっていた、怯え戦意喪失する者、自分の命と引き換えでもデレクの居場所を守る為奮起する者。

 最初は皆ジュンの接近にバラバラだったが、今では皆纏まりを戻し、ジュンの前で何十人も同じ体勢で佇んでいる。


 そう…正座させられているのだ。


「ったくよぉ、俺は交渉に来ただけだっつうのにいきなり大砲ぶっ放す奴があるか!」

 全員下を向き、ジュンの怒号を聞きながら彼の主張に嫌々耳を傾けている、叱られている兵達は「はい」「すみません」と、何度も何度も同じ言葉で謝罪を繰り返している。

「(なぁおい…最強ザ・ワンもうかれこれ1時間半もキレてるよ、俺そろそろ足痛くなってきたんだけど…)」

「(言うな!俺だって足は痛いさ、だがこのまま説教が終わるのを待つしかないだろ…悪いのはある意味俺たち何だから)」

 若い兵二人は自分達が後方だからと、少し小声で愚痴らしき言葉を漏らしているが、もちろんジュンには全て丸聞こえなのだ。

「おいコラ!27番と28番!人が注意してんのに喋るなんざいい度胸しんてんなぁっ!なんだ!?俺の話は校長先生の全校集会と同じレベルかゴルァ!!!」

 ジュンは27番・28番と呼ばれた男二人の前まで行き、正座で痺れている太ももを踏みつけられ、涙を浮かべているのは言うまでもない。

「(あれは君たちが悪い)」

「(うわぁ…痛そう…)」

 等と悲しい目で二人は見つめられ、その視線の中ジュンは元居た場所、正座している兵の前へと戻っていく。



 怒りもある程度熱が冷めた彼は、周囲をキョロキョロと見渡し何かを探している、正座している一人の中年は手を上げジュンに発言の許可をもらう。

「あっあの~…最強ザワン様、貴方には敵意…というか、私達を粛清しようという考えが無いのは理解出来ました。でも何故ここへ?」

「ん?あぁ、デレクって奴の側近にマリードって奴が居るだろ、あの子と話がしたいと思ってね。あとデレクにこんな無謀とも言える戦争を、仕掛けようとしていたかも含めてな。」

「はっはぁ…あと何をお探しで?」

「ミア」



 それだけを答えると、見渡す所には居ないと確信すると、先程まで会話していた中年にミアがどこへ行ったかと訪ね、中年は女子供や老人達が避難したという集会所を指差した。

 ジュンは迷うこと無く集会所に早足で向かう、そして兵達も皆痺れる足を引きずりながら、ジュンがなにかやらかさないか心配なのか、後ろをゾンビの様についていってる。


~~~集落・集会所~~~


「お~いミア~」

 集会所の扉を開けると、先程まで表で戦闘が合ったのを忘れさせるほど、笑い声や談笑の声で溢れかえっている。

 その中央にミアと、名もわからぬ主婦達と談笑し、楽しそうに笑っている姿が目に入った。

「そーなんですよ、ジュンさんも酔って帰ってきた日は、玄関で寝るわ、靴下は片方ないわ、で大変なんですよ!」

「あははは、亭主が酔って帰りゃどこも一緒かい。戦乙女ヴァルキリー様も苦労してんだねぇ」

「うふふ、他にもうちで住み込みで働いてる方が居るから毎日洗濯物とか料理が大変で」

「若いのに大変だね~、それに育ちざかりの子が2人も居るんだろ?メニュー考えるのも一苦労さね」

「そうなんです!ジュンさんにメニュー聞くといっつも「肉!」だけですし」


 愚痴なのか同じ主婦という性なのか、プライベートな内容まで包み隠さず妻に暴露されているジュンは、耳まで真っ赤に染め額に手を当て顔を隠している。

 その後ろから物凄い悲しそうな目をした、中年兵達がジュンの肩に手を置き慰める様な、慈愛に満ちた目に変わっていった。

「やめろぉぉぉぉ!俺をそんな目で見るなぁぁぁぁぁ!!!」

 先程まで争っていた、という出来事さえ皆忘れたかのように、集会場で騒ぎ声や談笑に包まれ一種の宴会の様になっている。

 それはジュンの持つの才なのか、きっかけを作ってくれたミアのおかげなのか、子供も男も女も年寄りも関係なく皆、ジュンやミアと会話し笑顔に包まれていた。


「なんだこの騒ぎは!宴会でもしているのか!…最強ザ・ワンなっ何故貴様がここに!!!」

「いやお前とちょっと交渉しようと思ってよ。でもこいつらが急に襲ってきてさ」

「その節は本当に申し訳ない」

「おっちゃん!もっと遊べよー!」

「うっせぇクソガキ!俺はまだおっちゃんなんて年じゃねぇ!お兄さんと呼べ!」

 デレクは傷にまみれ、包帯だらけの体を引きずりながらも集会所に足を運び、騒ぎを嗅ぎつけたらそこにジュンが居たのだ。

 目の敵にしている男の一人が、自分の知らない間に仲間たちと打ち解けているのだ、驚かないはずがない。


「…ということが、ありまして」

「もういい…もう説明してくれなくていい、これ以上聞くと俺の中の大事な何かが折れそうだ…」

 ガルムとの戦いで負傷したのか、それともジュンの間抜けした顔に嫌気が指したのか、頭痛が酷くなったようで頭を抑えている。

「先生ー!せんせー!何処ですかー」

 集会所の外から若い青年の声が聞こえ、おばちゃん集団はぞろぞろと、外に出ていき声の主を連行してくる。

「ほれマリードちゃん、あんたと先生様にお客さんだよ!」



 マリードは睨みつけるようにジュンを視るが、デレクの傍らに心配するよう寄り添り、彼の傷口に手を当て開いていないかを確かめ、一安心すると再びジュンの方へ向きかえる。

「何の様ですか…」

「君たち二人に頼みたいことがあってね」



 不敵な笑みを浮かべ、マリード及びデレクを見つめるジュン、彼らの交渉は今から始まる。

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