第4-21話 交渉②
止血が終わったジュンは、先程打たれた大筒の方を見返し、次弾発射までのインターバルを考えた。
「(距離は約500~1000m、威力はさして注意するほどでもねぇか…、でもあのままじゃ話すって雰囲気にはならんな)」
ここでジュンは二択に出た、まずひとつはと言うと『ぶちのめす』という単純明快さ、だがこれでは後に遺恨を残しかねない。
もう一つの選択肢はと言うと、両手を上げ降伏の体制を取り穏便に事を運ばせるか、だがそれでは『最強』の敗北と言われては立つ瀬がない。
この称号を名乗り背負う以上、どんな形であれ一度の敗北は許されない。敗北は自分の死、すなわち最強が死ぬ時だけなのだ。
「ったく…しゃーねぇ。ミア、ちょいと離れててくれ。」
彼は両手を腰まで落とし横で構えた、そして深く深く深呼吸をし少し止める、これを何度も繰り返す。すると大気は徐々に微振動を繰り返していく、大地が怯える様に、空気が逃げ出す様に。
右足を引き地面がえぐられていく、まるで巨体を支えるスプリングの役割を果たすかのように、強くしなやかに。
一方その頃村はと言うと、魔術師達が7人掛かりで魔術大筒に次弾となる、魔力を注入し再度ジュンへ標準を向け構えた。
「この距離を攻撃出来る魔術は無し!いくら最強であろうとそれは変わらん!奴がこちらへ近づく前に仕留める!」
場を取り仕切っているであろう、中年の武装兵は剣を頭上から前方へ、そう…ジュンの方角へ向け発射合図を出した。
「魔力最大充填完了!魔術大筒発射!!!」
その合図と同時に、大筒の操縦席に乗り込んでいる操縦者は、手元のトリガーを力いっぱい握り、魔弾を発射する。
青白い魔力はレーザーとなり、地面をえぐり草花を焦がし、ジュンへと一直線に物量で破壊するかの如く突進する。
鼻先寸前でジュンは、迫り来る巨大な魔力を前にほくそ笑み、両目を見開いた。
「俺を殺すにゃ…全然足りねぇぇぇぇ!超越魔法発動!それは全男児の夢の象徴!大和の男子たる者が抱く魂の熱線!撃ち抜け!両眼高圧魔導砲」
瞳の前には、6重にもなる赤色の魔法陣が形成され、高圧に凝縮された魔力の塊が2本発射された。
魔術大筒の光が、青白く発光するのとは打って変わり、赤色の波を纏った黄金色のレーザーが打ち出された。
ジュンの目と鼻の先で着弾したにもかかわらず、魔術大筒のレーザーを軽く押し返している。その威力は一目瞭然、比べるのも馬鹿らしくなる…と言った具合か。
例えるのであれば魔術大筒は、やんちゃ坊主が使って遊ぶ『爆竹』とするなら、ジュンのアイズ・オブ・ブラストは第二次世界大戦で落とされた、日本を焦土へと変えた核に匹敵する威力なのだ。
誰が爆竹と核を比べるだろうか、いや…誰も比べやしない。
おもちゃと兵器、次元が違うという話し所ではないのだ。
彼は首を少々上空へ向け、周囲に多大な被害が出ないよう、互いのレーザーを上空で爆散させる。
降り落ちる魔力の粒子は火の粉の様に降り注ぎ、相手の最高の一撃を軽くあしらい、普段どおり飄々とした笑みを浮かべ、男は歩いてくる。
味方であれば、勝利を約束した戦いの武神
敵であれば、絶望そのもの
誰が強い、誰が弱い、どうすれば勝てる、戦局は、等と考える余地さえ与えない、絶対的な存在。
それが『最強』という生物だ。
「さぁ~て、お遊びはもう良いだろ。こっからはおしゃべりタイムだ、あと急に襲ってきた事に関してのお説教もな」
急に襲われた事に関して、若干の怒りを覚えているジュン。
その後ろには、無言で夫の人間離れしすぎた行動に、呆れを隠せないミア。
さて、彼の言うおしゃべりタイムとは…
To Be Continued




