第4-20話 交渉①
ギリアムが亜人大陸で敗北し、仁もまだ目を覚まさない。
そんな中で草花生い茂る草原を、傍らに妻を連れ象徴とも言える、黒一色のコートを翻す頂点。
「さぁ~て、仁君がまだ起きねぇし、俺も先輩らしい事たまにはするか」
「ジュンさん…あまり無茶しないでくださいよ?」
わかってると言わんばかりに、彼は手を空中でヒラヒラと動かし笑ってみせる。
今彼の眼前に写っているは、マリード及びデレクの逃げ帰った集落のような小さな村だ。
だがただの村や集落にしては、大きすぎる木製の砦。丸太が何本も天に向けて打ち込まれ、いくつも見える見張り櫓。
「敵襲ーーー!最強目視で確認!迎撃体制に入れーーっ!」
見張り櫓から一人の監視兵が、ただ一人の男を確認すると直ぐ様鐘を鳴らし、村中に警戒を呼びかける。
その鐘の音が聞こえると、男達は武器を持ち、女達は老人や子供を一番大きな村長宅へと避難させた、統率者が居ないはずなのにこの迅速な動きは訓練の賜物ということか。
「列を整えろ!弓兵隊間合いに入り次第牽制!騎馬隊は追撃の準備を!魔術隊は【魔術大筒】の準備を急げ!なんとしても最強の足を止めさせろ!」
ひっきりなしに人が入れ替わり立ち替わり、戦闘準備に入っていく、まるで大規模な戦闘があるかのような準備だ。
「デレクさんが起きるまで、なんとしてもこの村を守り切るぞ!あの人の居場所は俺たちが守るんだ!」
炭で自国紋章に大きな十字を書いた旗を掲げ、自分達の指導者となったデレクの為、たった一人の男の居場所を守るために村は立ち上がった。
整列が済むや否や同時タイミングで矢が射られる、1度上空に向かい一気にジュンの頭上へと雨のように降り注ぐ無数の矢。
ジュンはほくそ笑みながら、妻であるミアを後退させると、小雨の中を傘を差さず歩くように矢の雨を横切っている。
「左弓兵隊弾幕薄いぞ!何やってる!ありったけだ!あるだけ矢を打ち込め!」
ただの矢など彼からすれば、頬を撫でる柔らかな風と同意、いくら浴びようとも傷一つ付かない。
雨が止むと即座に騎馬隊が馬を駆り、ジュンに向かい突進を仕掛ける、二人の騎馬兵は互いに鎖の両端を握り合い、彼の首へと鎖を掛ける。
そうして彼の体は引っ張られる様に、馬に引きずられ地面に大きな擦り跡を残していく。
だがある所を境目に、騎馬兵の体は宙に投げ出された。
ジュンは踵を地面へと食い込ませ、時速にすると70㎞は出ているであろう衝撃を、いとも容易く止めてみせた。
「ったく…せっかくの一張羅が泥で台無しだよ…こりゃあまたミアに叱られるなぁ…」
服に付着した土や泥を払い、そのまま鎖を振りほどかずに歩き出す。
悠々と雄大に歩く彼は、足を止めずにただゆっくりと目的地へと歩みを進める。
「奴は…化物か!」
兵たちは皆力を合わせ、鎖を引きジュンの歩みを阻もうとするも、彼は止まらない。
兵の数は10から20へ、20から30へと増えるも何一つ状況は変わらない。
やがて彼の歩みが止まったと思うと、そこはもう集落前にある門の前だ。
「さーてと…お宅らの偉いさんと会わしてくれるか?話がしたい」
堅牢に閉ざされた木製の大きな門、それをジュンは両手で押し開こうとした瞬間、鎖を引いていた兵は皆、蜘蛛の子を散らしたように退散していく。
一種の不気味さに振り向いたジュンだったが、少々遅かった…
大筒の口は、ジュンが開いた門の隙間から顔をのぞかせ、目と鼻の先で発射準備が完了していた。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!化物がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ジュンが目を見開き大筒の中を覗き込む、その時には大筒からレーザー状に、超高圧で圧縮された魔力の塊が打ち出された。
レーザーはジュンの体を押し返し、彼を遥か彼方へと吹き飛ばす。そしてミアの待機している辺りへと落下し、頭から腰まで地面に埋まっている。
「ジュンさーん、生きてますかー」
足をバタつかせ生きている事を証明するジュン、ブリッジする様に下半身を仰け反らせ足で踏ん張るが、体制が悪いのかなかなか出てこない。
その状態を察したのか、ミアは腰辺に腕を回しジュンの体を引っ張ると、容易く彼の体は地面から引き抜かれた、だがあまりにも簡単に外れた為、勢いを殺しきれずジュンはそのままバックドロップ。
「ジュッジュンさん!すみません!大丈夫ですか?」
ミアは申し訳なさそうに、体制を整えジュンを心配するが、鼻血を出しなんとも格好が付かない彼の顔に、少し笑ってしまう。
「ったく…こっちは喧嘩なんざする気は微塵もねぇのによぉ…」
鼻にテッシュのような、小さな白い布を詰めながら、ジュンは座りながらブツクサ文句を言っている。
ジュンの目的とは、敵の本拠地とも言える場所に乗り込み、彼は一体何をする。
To Be Continued




