第4-19話 揺り籠の中の、断頭台
糸は鋼の剣の様に鋭く、そして絹の様に柔軟に動く。
彼の指先から発せられる合図で、ギリアムめがけ走らされる。
「チッ…ちょこまかと鬱陶しい」
迫りくる糸は、凍結させられその場で崩れ落ちる、だがその追撃は勢いを増しギリアムを森の方向へと追い立てる。
「先輩、あなたの居場所はこちらに筒抜け。どれだけ逃げようと捌こうと私の糸からは逃げられない」
一本の木を背もたれに、腰掛けベルードの出方を伺うギリアムは、辺を見渡すもその光景は来た時と何も変わらない、湿気が多いただの森だったのだ。
「(失敗した…視界の悪い森に入っちまった…、奴自身格闘家としても一流、そして何よりも厄介なのはあの糸…)」
コートの胸にある内ポケットからタバコを取り出し、ライターで火を付けた時に異常に気付いた。
火の光が反射し糸から光が反射しているのが見え、自分がすでにベルードの術中にハマっているという事を思い知らされた。
「見つけましたよ先輩…今の貴方じゃ私には勝てない…何故かわかりますか?」
「…俺じゃ勝てないだと…」
自身のプライドを傷つけられ、怒りをあらわにするギリアム、だが獣を繋いでおく鎖の様に首・腕・腰・足を拘束され、木につながれた彼にはどうすることもできない。
木陰からベルードが姿を表し、ギリアムの前へと座り目線を合わせる。
「そう今の貴方じゃね、人殺しを楽しみ、血を浴び、鬼神の如き力を振るっていた過去『氷鬼の処刑人』と言われていた時期の貴方なら勝てたでしょうに」
更に彼を煽るが如く、ベルードは彼の頭を踏みつける、べルートの顔は酷く歪んでおりまるで汚物を視るように「吐き気がする」と言わんばかりにギリアムを見下している。
「あの『最強』に出会ってから貴方は変わった!何が人を守る正義の味方だ!そんなぬるま湯に浸かり貴方から牙を奪ったアカイワ ジュン!私は断じて許さない!」
何度も、何度も、何度もギリアムの頭を踏みつけ、やがてギリアムの頭からは皮膚が破れたのか、血が滴り落ちている、だが彼の蹴りは止まない。
「貴方は処刑人だった頃のほうが、素晴らしかった!輝いていた!私の追い求めた先輩だったんだ!血の雨の中を歩き!死の道を歩く貴方こそ『ギリアム・ツェッペリン』だったんだ!!!」
気を病んでいるとしか思えない、彼の言動と狂気は彼の顔をどんどん醜く歪めていく。
「お前は…俺の何を知ってんだよ…ざけんなよこのクソ野郎!」
糸で拘束されたにもかかわらず、力を込めていくギリアムの体には糸がギリギリと食い込んでいく、そして食い込んだ傷口から血が滴り落ち地面を濡らしていく。
だが糸が負けたのか、1本1本と千切れやがて彼の体が自由を取り戻していく。
「何!」
ベルートは驚きを隠せず、その場から一歩退くも少し遅かった、彼の蹴りはベルートの鳩尾ちに深く食い込み、彼の体を吹き飛ばし大木に打ち付ける。
だがベルートは糸を匠操り、木の上の小枝へ乗り移り体制を立て直すが、それに追撃を加えるかのように、ギリアムは彼めがけ氷柱を何本も飛ばしていく。
「砕け散れ…」
その一言で氷柱は無残に砕け散ってしまい、空中で霧散していった。
氷の粒はツブテ状になり、ギリアムへと跳ね返り体へと突き刺さる。
「貴方の攻撃は私に決して届かない、そんなぬるい攻撃!私には断じて!!!!」
完全にペースを乱されたギリアムは、周囲に対する警戒を怠ってしまい、ほんの少し死角を作ってしまった。
「さぁ仕置の時間です【揺り籠の中の、断頭台】」
周囲から糸が盛り上がり、ギリアムを覆う籠へと形を変えた。体の関節を余すこと無く捉えられ膝を付かされたギリアム、その頭上には大きなギロチンの刃のような物体が作り上げられていた。
「殺しはしません、貴方には昔に戻って欲しいのでね」
ギロチンの刃には切れ味など無い、だがギリアムを留めるにしては十分な重量。
その刃はギリアムの後頭部に叩きつけられ、そのまま地面へと彼の頭を叩きつけてしまう。
そこで彼の意識は闇の中へと、深く深く落ちていく。
勝者 執事服の男 ベルート・ランペリオン
「女…彼が起きたら伝えなさい、次にあの時に戻っていなければ殺す、と」
ギリアムを心配して付いてきたのか、木陰で怯えているユキが姿を現し、ベルートに声を掛けられる。
「ギリアムさん!ギリアムさん!」
彼の体を必死に揺らすも、応答は無くただ力に任せ揺られているだけ。
意識が闇へと消えたギリアム、そして彼の後輩を名乗り、彼を退けたベルート。
To Be Continued




