第4-17話 名刀・ナマクラ
タバコに火を付け、一服を始めたギリアムは普段の彼からは到底想像の出来ない、とても満足げな表情をしている。
そして先程まで怯えていたユキだったが、父の作品の事を互いに熱く語り合い、ユキ自身も満足げな表情だ。
「ふむ…これだけ語れる奴はそうは居ない、いやぁ…今日は来て良かった。実に満足だ」
「あうぅ…ギリアムさんすごいです…、パパはあの流動的な表現を刃でどうするかものすごく悩んで、作り上げたのに感動してくれるなんて」
ほっこりとした二人、茶を啜りながらユキはある提案をする。
「パパが生前作りかけだった作品が、蔵にあるんですが…その…よければ見ていかれます?」
「それは本当か?!ぜひ頼む!世に放たれていない作品も有ったというのか…流石ヨーデル、侮れん」
少年の様に目を輝かせ、ユキの父が失敗作や作成中とした作品の保管されている、保管蔵へと二人は向かっていく。
~~~ユキ自宅・保管蔵~~~
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!これは!!!華風二式!!!こんな所で実物を見れるとは…感動だ…」
刀身が淡い桜色の刀を持ち上げ、ギリアムは子供のようにはしゃぐ。
「それは二式じゃないんですよぉ~…、二式の失敗作でパパが蔵入りさせちゃった、壱式改なのですよ!」
「そうなのか!…?何だこの剣は?ヨーデル全521種の作品全てを網羅している俺でも知らん刀だな…」
ギリアムが気に掛けたのは、一振りの居合刀だった、シャラリと音を立て鞘から引き抜くと、ある種の違和感を見つけた。
「これは…刃が無いな…それに刀身も紫と言ったヨーデルがあまり好まない色…、鍔は無い。…おいこれは何だ?ヨーデルの未完にした作品か?」
そこに整理をしているユキがパタパタと駆けてくると、目を大きく開くとしょんぼりと視線を下げる。
「それは…ユキの打った刀なのです…パパみたいに上手く打てなかったですよね…」
「名前は?」
「へっ?」
ユキは突然掛けられた言葉に、驚きを隠しきれず、ギリアムに再度質問を投げ返す。
「名前はと聞いた、この刀の作品名だ」
「えっ?!えーと…考えてませんでした…」
「じゃぁ俺が付けてやろう」
ギリアムはそう言うと、右手一本でその一振りの無銘剣をかざし名を付ける。
「名刀【生業】だ!」
「なま…くら?」
名刀とは真逆の意味を付けた彼、その意味を理解できないユキは困惑を隠せない、だが彼は説明を続ける。
「芸術品としてはヨーデルと同格…いやそれ以上の可能性も秘めている、だが剣としては役に立たない。」
「…うぅ」
ショックを受けた様に、彼女はポタポタと涙を落とし、床に染みを一つ、また一つと作っていく。
「ありがとうございますぅぅぅぅ…ギリアムしゃぁぁぁぁぁん!!!」
突然ギリアムの足にしがみつき、滝のような涙を流す。鼻水まで垂らしている。
「…!だぁぁぁぁぁぁ!離せ!ズボンが汚れんだろ!!!!」
足を必死に動かすが、全く離れようとしないユキ。
「だって!だってだって!ユキの打った剣褒めてくれたの、パパ以外に初めてなんですもーーーーん!それに名前まで!」
全くもって変なのに、懐かれてしまった…、いや変な者にしか最近好かれていない気がしてきた。
と、一人げんなりするギリアムであった。
To Be Continued




