第4-9話 反逆の旗
~~~イーリア国・王城~~~
僕達はガルムさんの好意もあり、王城の中にある兵士の詰所内でベットを使わせてもらい、あれから眠りこけていたようだ。
横でアスタちゃんが寝息を立てており、彼女が無事だったのを再確認すると横の一室からガルムさんと、何やら男性の会話が聞こえてきた。
「ガルム指揮長、貴方は今回の件どう責任を取るおつもりですか。通り魔の死亡に加え、貴方の独断で協力を仰いだ彼らにも怪我を負わせて」
声から想像するに、ガルムさんに今詰め寄っているのは30代程の男だろうか、怒りは伝わってくるが声色は冷静そのもの、大きく荒げることも無く落ち着いた様子だ。
「デレナ…確かに完全に俺の落ち度だ。それに相手は【魔封具】を所持して、俺達は手も足も出なかった。言い訳はするつもりはない、どんな処分も受けよう」
あの夜に何が起こったのか、扉越しに聞いてると徐々に全貌が見えてきた。
僕たが謎の白銀の騎士と相対して居る時に聞こえた悲鳴は、その場にいた4名の巡回兵が出したもの、それに相手は組織だって動いている様で口封じのためにリッパーは殺された様な話しぶりだ。
それに初めて聞く道具【魔封具】という物の影響で、僕達は立つことすら出来ずあの騎士に殺される所だったのは紛れもない事実。
2人の会話が終了すると、その部屋から木の扉を開きデレナと呼ばれた、顎に少し髭を携え頬は痩せこけ、赤茶色の髪はオールバックに纏められ、彫刻のように深く掘られた皺が印象的な男とすれ違う。
彼は僕の方を見ると「ふん」と言い払い、少しにらみを効かせ何処かに歩き去っていく。青銅であしらえた鎧は、歩く度に鉄の擦れる音を鳴らし音が反響する廊下へと姿を消していく。
「…ジン君か、嫌な所見せちまったな。」
「いっいえ…ガルムさんはその…なんともありませんか?」
「俺は大丈夫だぜ。だが部下も数人死なせたし、犯人の確保も最後まで全う出来なかったからなぁ、まぁでも何らかの処分は下るだろうさ。」
あの時伏兵に気付いていれば、という事を考えていたのだがガルムさんはコップに冷水を入れ僕の前に差し出し言葉を放った。
「ジン君よぉ、今「あの時自分が先に気付いていたら」とか考えてたろ」
「…はい」
「気付いてたら良いに越したことは無いけどよ、通り魔が組織だって動いているなんざ、誰も考えてなかったしその目的も不明瞭だ、そして俺達の前に現れたアイツは中々の手練、気づけと言う方が無茶な話だ」
自分の分の水を持ち、椅子に腰掛けた彼はその水を少し飲み込んでから話してく。
「あんまり自分を責めるなよ、そんな自分が不利になる生き方してても辛いだけだぜ。起こってしまったもんは仕方ねぇ、それを次にどう活かすかが大事なんじゃねぇの?…ってジュンなら言うだろうよ」
赤岩さんの言葉を借りたように、彼はそう言うと豪快に笑って見せる。自身も辛いはずなのに、彼も赤岩さんと同じタイプの、心から優しい人ということが接し会話し初めて理解できる。
「ガルムさん、あの白銀の騎士は最後に『コノウラミハラサデオクベキカ』と言ってましたが、なにか心当たりとかは?」
「ん~あるような、無いような…」
僕の質問に対し彼から帰ってきたのは、あまりにも歯切れが悪く、腕を組み少し悩んでいる。
「ジュンから聞いた話だけどよ、俺達憲兵の仕事はさ地球で言う『ケーサツ』と似たようなもんなんだ、だからその確保した犯人達の中の誰かが逆恨みしてるとかも、考えるとやっぱ心当たりが多いんだよな。でも俺自身人に恨みを買うようなことはした覚えがねぇのよ」
確かに逆恨み等も考えると、犯人を絞るのは不可能だろう、何より証拠のようなハッキリとした物も無いのだから。
「もしよかったら…ガルムさん、僕にもこの件お手伝いさせてくれませんか?」
そう言うと彼は、今までの様子とは打って変わって鋭い目つきで、僕を見つめながら「何故」と聞き返してくる。
「多分…赤岩さんならこうしてた、と思ったからです。…それに、真っ先にアスタちゃんが狙われたのが…気になって」
僕が言うと彼は先の通り、優しい微笑みを見せまた笑っている。
「ジン君よぉ、地球の男ってのは皆そんな奴ばっかりなのか?…アスタちゃんも幸せだねぇ。こんなに思ってくれる男が居て、まるで昔のジュンとミアさんを見てるみたいだ」
笑いながら立ち上がった彼は、僕の肩に手を置き部屋を後にすると、入れ違いでアスタちゃんは寝ぼけたままこちらに歩み寄ってくる。
「ジン君おはよ~…」
倒れ込むようにこちらに抱きつき、彼女はまた僕の腕の中で眠ってしまった。
赤岩さんから少し聞いたことがある、アスタちゃんは加速状態で戦うと異常な疲労と空腹に襲われると。それに彼女自身の性格上稽古や組手等の競技としては好きなのだが、やはり戦闘自体はあまり好ましくないみたいで、無意識のうちに体がストレスを感じ疲労を蓄積させてしまうらしい。
腕の中で眠っている彼女を見つめると、再度心臓の横…というか、胸の底が「キュッ」っと締め付けられる、それと同時に彼女を守らなくてはという気持ちも芽生え始めていた。
彼女の頭を撫でると、少しくすぐったそうに悶えるが安心したような表情で僕の掌を受け入れてくれる、撫でる度に白い猫耳はピコピコと動き見ていて飽きない。
~~~イーリア国・某所~~~
「あの赤岩探偵事務所から派遣された、少年と少女…今回の我らの作戦に邪魔になるな…」
白銀の鎧を着込み、右手の甲にある宝石を撫でながら、何やら部下のような男達に言葉を続けている。
「先生…私共の見た限りでは、あの少女の方が幾分厄介かと…」
片膝を付き彼を先生と呼ぶ青年、彼の顔には過去に有った迫害の証だろうか…、顔の左半分は焼け爛れ左の瞳は白く濁っており視力が宿っていない。
「あぁそうだな。だが少年の方も中々厄介だ、あの結界の中で立ち上がったからな。」
男は兜の中でニヤリと笑うと、自身の座る背後には若草が円を作りその中心に聖女が居るという構図の旗、そのイーリア国の国旗には大きく炭で十字を斜めに描き、国を否定した反逆の旗を掲げ立ち上がった。
「さぁ私に続きし親愛なる反逆者達よ、最初は手始めに全体指揮長ガルムを地獄に落とした後、『天才達』に、報復をしてまわろうじゃないか。俺から全て奪った連中へ、そしてお前達に迫害を許した社会へな」
白銀の鎧の男は、兜越しでも解るほどの憎悪を瞳に宿らせ、天井を見つめながら反逆旗をかざし、仲間のを奮い立たせてゆく。
To Be Continued




