第4-7話 春
アスタちゃんが城下町の人達に囲まれ、早30分が経過していた時に今回の任務対象『リッパー』の情報が飛び込んできた。
「そうそうアスタちゃん知ってる?通り魔の事件、アスタちゃんは強いから問題ないかも知れないけど…やっぱりおばさん心配だわ~」
「おばちゃん!リッパーの事知ってるの?」
2人でその女性に「是非」と、寄り詰めると少し困った顔をしたが、スラスラと最近有った事件の事等を教えてくれた。
「狙われるのは『若いカップル』って話ね、憲兵隊の話しじゃ嫉妬かも知れない、みたいな話しが飛び交ってるけど、本当の所はわからないわねぇ。何より襲われたカップルは、例外無く死んじゃってるのも。おちおち夜に出歩くことすら出来ないわ。」
皆揃ってこの様な事を口にし、僕達にも注意するよう言うと、それぞれ店や家に帰っていく。
「若いカップル…」
ちょっと待てよ…若いカップルって事は、僕とアスタちゃんでその役をしろって事ですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
嫌なわけではない、どちらかと言うと嬉しい方なのではあるのは間違いないのだが、そのなんて言うのだろう…恥ずかしい…。
「ねーねージン君」
道にうずくまり色んな事を考えていると、彼女は無邪気な声で僕の肩を叩き、一声を掛けてきた。
「なっ何?」
「『カップル』って何?」
「えーと…凄い仲良しな男の人と女の人…かな?」
彼女はピンと来ていないらしいが、うんうんと頷くと直ぐに太陽の様な笑顔をこっちに向け、今度は同じ様に横にしゃがみこんで目線を合わせてくれる。
「ジン君は物知りだね!…てことは、アスタとジン君はカップル?」
「えっ!あぁっ!?えーと違うと言うような、なんというか…」
「むっ!ジン君とアスタは仲良しじゃないの?」
可愛らしく頬を膨らませ、いつもの様に僕を困らせる彼女は、機嫌を悪くしたかと思うとすぐに、僕の手を引いて近くの屋台へと走っていく。
「ジン君!これねイーニャって言うんだよ。食べたことある?」
「うっううん、無いよ」
彼女は屋台の親父へと注文すると、やはり顔見知りの様で本来なら果実が3つ4つしか入っていない、一番安い物を注文したのに色とりどりの宝石を生地で包んだ、クレープの様な物を受け取った。
「おっおじさん、僕等の注文した奴じゃないですよ?」
「いいんだ!食ってくれ。アスタちゃんの師匠『最強』さんも良く贔屓にしてくれてんだ、お陰で商売繁盛よ!その御礼みたいなもんだからよ」
そう言うと2人で屋台の横にある、木目の目立つ小奇麗なベンチに座り、イーニャというクレープによくに似た物を食していく。
「お兄ちゃん…デートは良いけど通り魔には気をつけろよ~」
おじさんはそっと僕に耳打ちすると、ガハハと笑いながら屋台の方へと戻っていく、言葉の意味を完全に理解した僕は全身の血という血が沸騰し、耳まで真っ赤に染め夕日にも負けない位紅潮していた。
「ジン君顔真っ赤だよ?へんなのー」
そういった彼女から顔をそむけてしまう、顔を見られるのが恥ずかしくてたまらない。
そんな僕はお構い無しかのように、アスタちゃんは沈んでいく夕日を見ながらイーニャを頬張り、自分の頬についたクリームを右手の人指し指ですくい上げ口に運んでいく。
「ジン君…」
彼女から声を掛けられ、ふいにそちらを見つめると彼女のエメラルドの瞳は夕日を帯び、長く愛らしいまつ毛がフワリと揺れている。
「今夜は頑張ろうね」
そういった彼女はいつも通り、フラリとその細く白い絹の様な肌を纏った2本の足で歩いていく。
僕もイーニャを口に詰め込むと、彼女を追うようにベンチから走る。
横に並ぶと彼女の匂いか、甘い匂いが鼻を刺し嫌でも彼女が女性という事を意識させられてしまう。
揺れる互いの手と手の甲が触れると、彼女は無邪気にキュッと握りしめて来た。彼女にとっては仲の良い友達なら、自然にする行為なのだろうか。…そう考えると、胸の奥が少し締め付けられる。
To Be Continued




