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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第4章 裏切り者をぶっ飛ばせ! 編
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第4-6話 秘め事

 徒歩で約五時間という、歩くにしては辛い距離だが僕達は今『イーリア国・城下町』へとやって来た。辺りには夕日が降り、家に帰る人やこれから一杯引っ掛ける人で溢れかえっている。

「あら!アスタちゃん。今日は最強ザ・ワン様や戦乙女ヴァルキリー様と一緒じゃないのかい?」

 2人で歩いていると、アスタちゃんに向け一人のおばさんが声を掛けてきた、アスタちゃんは屈託のない笑顔で話しを進めていく。

「ジン君!この人はね八百屋のおばちゃんだよ!ミアちゃんと買い物する時いっつもおしゃべりするんだ~」


 アスタちゃんの紹介で八百屋のおばさんと二言三言、言葉を交わすと周りにはそれぞれの店の店主や女将がアスタちゃんの周りへ集まってきた、皆彼女と知り合いの様でそれぞれアスタちゃんに喋りかけている。

「おー!アスタちゃん!久し振りじゃねぇか!いい魚が入ったからって戦乙女ヴァルキリー様に伝えててくれや!」

「アスタちゃん、この間はありがとうね。お陰で肩コリがマシになったよ」

 老若男女問わず彼女は慕われ、色んな話しを聞いている。皆と会話し振りまく彼女の笑顔はとても眩しく、…魅力的だ。

 何故この様に、城下町で人に囲まれているかという経緯は、少し時間を遡っていこう。


~~~時は少し戻り、赤岩家屋敷~~~


「ヘタレ・チビ、俺はそろそろ亜人国家へ向かう。お前達もそろそろ用意して城下に行って来い」

「もう解ってるよ!ギリアムはうるさいなぁっ!」

 用意をしていると、ギリアムさんも出発のようで布袋に色々荷物を詰め込み、それを肩から下げ手袋をつけ直している。

「言われるのが嫌ならさっさと行動しろ」

 それだけを言い残すと彼は屋敷を後にし、歩き去っていく。


「そうだ!リューコさんにジキルとハイド返してもらわなきゃ!」

そう言ってリューコさんの私室兼研究所に、向うため一度アスタちゃんと別れ走り出した。



「リューコさん、そろそろ出発したいんでジキルとハイド持っていってもいいですか?」

 ノックをし扉の前で彼女に尋ねるが、一向に返事が無いので少し扉を開け、中の様子を伺ってみるとそこには、何やら特殊な椅子に腰掛け頭には異様な器具を取り付けた赤岩さん、それに真剣そのもので周囲の機材を調整しているリューコさんが居た。

「…ジュンちょっとそのままじっとしててね」

「あいよ…リューコ、誰か来たみたいだぞ」


 赤岩さんは僕の気配に気付き、リューコさんを促すとやっと部屋に入った僕に気付いた。

「どうしたの?ジン君、今はジュンの検査中だから近寄ると危ないよ?」

「すっすみません、でもそろそろ出発だからジキルとハイドを取りに来たんです…」

 椅子の上で佇む赤岩さんを見ていると、何やら少し不安な気持ちになった、顔色も良いし何より先程も手合わせをし、彼が健康そのものというのは僕でも解りきっていることだ。

 なのに何故胸の奥がざわつくのだ、何故彼を見ていると不安な気持ちになるのだ。

 そんな事を考えていると、リューコさんからジキルとハイドは机の上に置いてあるから、自由に持っていっても良いと言われ僕は銃をホルダーに指すと、直ぐ様部屋を飛び出したんだ。


「仁君に気取られたか?」

「さぁ?でも今のあんたの状態を見たら、やっぱり異常だと思わざるを得ないんじゃない?」

「……そう…か。」

 頭に装着された鉄製の兜の様な検査機の内側で、赤岩順は少し切なげな表情で顔をしかめると、脱力したように深く椅子に腰掛け、リューコに再度問いかけをする。


「リューコ…俺が魔族だった場合さ……皆、どう思うかな?やっぱさ怖いとか、気持ち悪いとか、思うかな?」

 そう言った彼の声は、いつになく弱気で消え入りそうな声だった、自分達の敵と同じ種族が人間に味方する等とても思えないからだ。

 正義の味方を演じ、人々に付け入り結局は魔族に鞍替えし、今度は人間達を滅ぼす側に立つのでは無いかと思われる。魔族の凶悪さ・狡猾さ・そして何より…強さは、人間からすれば多大なる畏怖の対象となりえるからだ。

 心配の種は未然に摘む、それが例え…人を愛した『最強ザ・ワンの処刑』という形になろうと、人々は実行するであろう。

 赤岩順の脳裏には唯一つ、たった一つのシンプルな考えが有った『人間として生きたい』、ただそれだけだった。


「馬鹿ね…あんたが魔族だろうと、過去にあんたがした事は変わんないし、そんな事でミアちゃんや、あたしが嫌いになると思ってるの?…本当に馬鹿な男ね、そんな事あるわけ無いじゃない。」

 検査機から発せられる、魔術信号を逐一メモを取るリューコは、本心から口にする。

 順を安心させるためではない、リューコの本心そのものだからだ。

 ミアのことを底が無いほど愛している、暇な時は何か変なものを作って遊んでいる、食にはうるさいがどれだけ不味くても出されたものは食べきる、楽しい時は心の底から子供の様に笑う。

 そんな彼の事を3年以上も見ているから、そんな彼の事を信用しているから、リューコは本心から口にできる。


「ジュン…検査結果出たわよ。あくまで借りのだけど」

「結果は?」

「魔族の特徴が56%・人間としての特徴が44%、半分魔族で半分人間…って所よ」

 順の体は魔族と人間のハーフ【デミ・ヒューマン】と名付けられ、彼の強さの秘密が少し明らかとなった。


「(赤岩さんが…魔族?)」

 部屋の前でこの会話を聞いていた仁、胸のざわめきを確認する為に扉の前で待機していたが、この衝撃とも言える事実は仁の心に少し陰を落とした。

「(赤岩さんも…あのロザミアって人や…庄司君の様に…)」

 彼はその身で魔族の恐ろしさを痛感し、ましてやあの赤岩順が魔族だったらと考えると、やはり少し怖いと思ってしまう。

 部屋の中にいる2人に気取られぬ様、抜き足差し足で廊下を歩きアスタと合流した。


「どうしたのジン君?」

 浮かない表情をした僕を、彼女は心配するように声を掛けてくれる。彼女にこの事を言うのは…やはり気が引ける。

「なんでもないよ!ほらアスタちゃん!早く出発しないと夜になっちゃうよ!」

 無理やり自分を元気づける様に、アスタちゃんの背中を押して2人で屋敷を後にした。


「(行ってきます…赤岩さん)」

 そう僕は心の中で言い、2人で屋敷の敷地外を歩き去っていく、その足取りは軽いはずもなかった。





 仁は彼の秘密を知った、だが彼の正義の意志はしっかりと仁に受け継がれている。

 彼らは無事にリッパーを倒し、屋敷へと帰れるのであろうか?


To Be Continued

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