第4-1話 帰ってきた赤岩ファミリー
~~~イーリア国・赤岩探偵事務所~~~
船に揺られたのが3日、馬車を乗り継いで帰ってこれた屋敷、とても久し振りのような感覚で青みのかかった屋根と、白いレンガ調で組まれた壁には、所々傷や崩れたりしている部分もあるのが、太陽に日で陰影が出来ている様が目に入った。
屋敷のドアを開くと、黒髪ロングの赤い瞳をし、外に出たことのないのかと思わせる色の白い女性、モップで一生懸命床を拭き掃除をしているが、全く進んでいない。
細い腕で一生懸命しているさまは伝わるのだが、腰が入っていないというか、モップの勢いに体が負けている。
「ただいま、あれ今日は体の調子はいいの?」
淡い白雪のようなスカートと服が一緒になった、ワンピースの様な服を来ている彼女に、赤岩さんは話しかけている。
「はい、今日は何だか調子が良いので、カーチャさんにお願いするだけじゃなく、私自身でやってみようと!」
そう言い胸を張る彼女だが、綺麗になっているのは自分が歩いた所と、モップの届く半径1m程だ。
赤岩さんが彼女と談笑をしていると、突然遥か彼方まで突き飛ばされ壁にめり込んでいた。
「リィナ!本当に大丈夫なのか?兄さんは心配だ、もしバケツの水がひっくり返ってお前が風邪でも引いたりしたら…」
そう何を隠そう、赤岩さんを突き飛ばし眼の前の彼女に歩み寄ったのは、彼女の実兄であるギリアムさんだ。心配のあまりか、既に半分涙目で無事か?怪我は無いか?等を連呼している。
「もう、お兄様は心配性ですね。私ももう小さい子供じゃないんですから」
少し困ったような顔で、ギリアムを落ち着かせる彼女は『リィナ・ツェッペリン』だ、仁は会うのが初めてということで、互いに深々と挨拶を交わす。
見たことのない爽やかな笑みで、ギリアムさんは僕の肩を叩き少し離れた所まで連れてくる。
「おいヘタレ!リィナに変な事したり考えたりしたらぶっ殺すからな?」
あっ…いつものギリアムさんだ。彼の妹の前での変貌ぶりは、度肝を抜かれた。
「ただ今戻りましたリィナさん、すみませんね留守をおまかせして」
「いえ!大丈夫ですよ!家事はカーチャさんが教えてくれますし、普段休んでいるばかりでも、出来ることはしませんと!」
ミアさんは彼女に礼を告げ、そこから女性組で談笑をしている、今回の旅の話しを聞かせて欲しいや、行った先での美味しいものは何が合ったや、何の他愛もない話しをし、4人はとても楽しそうに話している。
「あらミア、お帰りなさい。今戻ってきたのですか?」
片眼鏡を掛けミアさんとは違う、正統派のメイド服を着た壮年の女性が彼女に声を掛ける。
「はい。いつもすみませんお城の事も有るのに、こっちにも来てもらって。」
「大丈夫よ、今は若い子達がしっかりしてくれてますし、何よりこっちに来るのは国王様の勅命だから」
そう言うと皆は少し早い昼食にする為、食堂にぞろぞろと向かっている、それを後ろから付いていく様に僕も歩み始めるが、なにか忘れている気がした。
「ん~獣人国には、何も忘れ物はしてないし…何だっけ?」
辺を見回すと壁にめり込んだままの、赤岩さんが居たのだ。顔が壁に埋まっており表情は見えないが、なんだろうシクシクと泣いている様だった。
彼を引っ張り出すと、何だか拗ねたような表情で皆食堂に向かったことを伝える。
「だっ大丈夫ですか?」
「うん…でも皆ひでぇよ。忘れたままなんてさ…」
完全無欠の彼でも、こういう子供っぽい所があったりするのだと、また新たな一面を見れたのはとても可笑しかった。
~~~屋敷・食堂~~~
木製のテーブルにシルクのテーブルクロスが敷かれ、その上には色んな種類の料理が並んでいる、種類的には地球のフレンチに非常に似通っている。
赤岩さんと僕が食堂に入ると、真っ先にアスタちゃんとリューコさん達と目が合った、アスタちゃんに促されるまま隣に座り、リューコさんはと言うと半笑いで赤岩さんから目をプイッとそむける。
「皆さぁー…俺放ったらかしで飯かよ…」
しょげる赤岩さんは、またギャイギャイとリューコさんと口論を始めるが、キッチンの方からミアさんとカーチャさんという方が出てきた。
「なぁ?ミア…俺の事お前は忘れたりしねぇよな?」
もう既に半泣きの赤岩さん、詰め寄られたミアさんはプッと笑うと、リューコさんと同じ様に目を逸らす。
「おいおいおい、まさかミアまで俺の事忘れてたのか?」
頬を両手の親指と人指し指で、引き伸ばされるミアさんは痛いと言いつつも、笑顔のまま赤岩さんとじゃれている。
全員が席に着くと、皆で「いただきます」と声を合わせ各々料理を食していく。
「ねージン君!ご飯食べたらミアちゃんが馬の乗り方教えてくれるって!一緒にやらない?」
「うっうん。でも荷物整理してからでも良いかな?」
食事中も談笑や、笑顔が絶えず僕も例外なく隣のアスタちゃんと会話をしている時、赤岩さんから声を掛けられた。
「あっそうそう仁君、今日これ食べて一段落したら一緒に来て欲しい所有るから、予定開けててくれよ。悪いなアスタちょっと仁君借りるわ」
その小さな頬をプクッと膨らせ、文句は言わないにしろ不機嫌を主張する、アスタちゃんに「ごめん」と相槌を打ち赤岩さんの言葉に耳を貸す。
「はっはい。予定とは?」
「ギリアムの書類を王城に提出しに行くついでに、仁君に国王と顔合わせしてもらおうと思ってな。」
彼は普通の事を言った、という表情で何気なく言うが、一国の王といきなりの事に飲んでいた水を鼻から吹き出す。
「そっ…それって。ついでで済むんですか」
「うん大丈夫、まぁあのおやっさん結構適当な所あるからな」
「はっ…はぁ」
その後赤岩さんは、ギリアムさんに書類を持ってくるよう言うと「ん」と短く返事をしたギリアムさんだった。
あれから食事を済ませ、自室のホコリなんかを一通り払ってすると、赤岩さんが部屋まで呼びに来てくれた。
「おーい仁君、そろそろ行くぞー」
そう言った彼の合図で、二人一緒に庭に来るといつしか見たバイクに2人で跨る。
「ジュンさん今日は夕食どうしますか?向こうで食べてきます?」
「いや夕食までには全部済ませて帰れるようにするよ、それにカシオさんの所にも行くから。ちょっとだけ遅れるかも」
それだけ言うと2人でミアさんに挨拶し、赤岩さんはバイクを発進させる。
「仁君こっちの生活はどうだ?」
「楽しいです。辛いこともあったけど…何ていうんですか、地球に居た頃よりも充実してる気がします」
「そっか…それは良かった。」
バイクで駆ける彼と会話をし、そんな彼の背中に身を預け風の中を走り去っていく。
~~~イーリア国・王城~~~
激しい人混みの城下町を抜け、堅牢な門に閉ざされ自分の身長の何倍も有る城壁を抜けた先には、ブロックで組まれた大きな城、地球に居た頃に写真で見た中世の城そのものだった。
黄色がかったブロックに、鉄であしらえた窓枠や扉等が瞳に突き刺さる、見とれていると赤岩さんに中に入るよう促され、守衛2人に挨拶をし中に入っていく。
中に入ると大理石の床は光り輝き、壁には所々大きな傷跡が見える、中には学者や兵士等が行ったり来たりし、城下町とは違う人混みに似た感覚が合った。
そうして2人で王城を歩いていると、背中は真っ黒な体毛に覆われ、胸や腹は真っ白な隻眼の獣人が居た。
多種多様な人種の人がいる中、彼の存在感はある意味異質だった、純粋な人間種『純人』の中に混ざって、一人筋肉質な狼の様な見た目で、背中には大きな槍を背負っている。
その人物に気付くと、赤岩さんは走り寄っていった。
「おーいガルム!!久し振り!!」
「…!おっジュンじゃねーか!久し振りだなぁっ!」
男二人は久しい再会を祝福するように、拳をゴンッと合わせ談笑を始める。近況報告やあの頃はどうだった等、地球や異世界でも再会した際にする話は決まっているみたいだ。
「ったく…お前がイーリアから居なくなると小悪党の悪戯の件数が上がるんだ、ずっとイーリアに居ろよ」
「知らねぇよ。小悪党が増えるのは俺のせいじゃないだろ」
会話をする度にガハガハと笑う2人を眺め、初めての城という事に緊張のあまりに目を回しそうな僕を、赤岩さんはこっちに来るよう促した。
「この子は仁君、ウチの新しい従業員だ。んで仁君、こいつは俺が異世界に来てから初めて出来た友達のガルムだ」
赤岩さんの紹介を挟み、僕は目の前に居る少々強面の狼男の男性『ガルム』さんに挨拶をすると、ガルムさんも挨拶を返してくれ握手を交わす。
「俺はガルム、この城で全体指揮長をやってる。困ったことがあったら言ってくれ。よろしくなジン!」
「はい、ありがとうございます。ガルムさん」
彼の手には強面の顔とは似合わず、真っ黒に染まっているがぷにぷにとした感触の肉球が付いており、握手の時その感触を少し楽しんでいた。
赤岩さんの方から僕が、転生者で赤岩さんとある種似た境遇ということを説明すると、彼は「そうか」と頷き仕事がまだ残ってたと言い立ち去っていく。
「…んじゃ俺らも国王に会いに行くか!多分この時間なら国王は中庭でトレーニング中だろうし」
そういった彼の背中を追いかけ、階段を一段一段登っていく、ふと気まぐれで振り向いただけなのだが、歩いていくガルムさんを見つめる騎士の男が目に入った。
顎に少し髭を蓄え頬は少しこけているが、彫刻の様に彫り込まれた皺に、鋭い眼光は少し見ている僕に恐怖を与えた。
新章開幕「裏切り者をぶっ飛ばせ!」編
To Be Continued




