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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第3章 獣人国・宝物蔵の守護者編
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第3-23話 イーリアへ

 あの夜大怪我を負った仁とギリアムは、サブローが逝ってから目を覚ましたのは2日後の事だった。

「あっ!ジン君!…良かった、目を覚ましたんだね。本当に良かったよ」

 声を掛けてくれたのはもはや、僕達の専属医師みたいになっているリューコさんだった、背中の氷を溶かし傷口を縫合してから治療魔法を掛ける。

 そこいらの医者なんかよりも腕は良く、大抵の傷なら跡も残さず治療出来るらしい。

「ジン君…背中の傷なんだけど、時間経過しすぎたのと、凍傷が酷くてさ結構キツく跡残っちゃった…ごめんね。」

 深々と頭を下げる彼女、直ぐ様助けてくれたお礼と、気にすることは無いと声を掛けるべきなのだろうが、背中の傷が痛すぎて声が詰まった。


 国主館にはまたお世話になっていたようで、寝室で2日眠ったままの僕に合わせ、皆この獣人国に残ってくれていた様だ。

「ジン君、ジュンから伝言よ「起きて動けるなら、参加して欲しい事がある」だってさ。」

「はっはい…ギリアムさんは?」

「あんのバカは「ただ魔力を使いすぎて倒れただけだ!傷なんかほっといても治る!」とか言って維持張ってんだから…本当にバカよ。まぁ縛り付けて治療してけどさ」


 まぁギリアムさんが、大人しく治療を受けるという絵面は想像し難いのは事実なのだが、やはり彼も重症人な事には違いない。

「おい魔女!!この計画書…って、ヘタレ起きたか。傷はどうだ?」

 相当な剣幕で怒鳴り込んだギリアムさんだったが、仁が布団の上に座りリューコと談笑しているのを見ると、傷の具合を訪ねてきた。

「大丈夫です、ギリアムさんはどうですか?」

「心配する程の…うぐっ…」

 座ろうとし体制を変えた彼は、顔を青ざめ胸のあたりを抑えている、意地っ張りにも程がある…

「ほら!言ったじゃない!あんたも絶対安静の怪我人なのよ!このバカ!!!」

 と、座ったギリアムさんの肩をゲシゲシと蹴り続けるリューコさん、あれ?怪我人じゃなかったっけ?。


 リューコさんの肩を借り、松葉杖を付き廊下を歩いていると、赤岩さんとアスタちゃんにミアさんも居た。

「仁君…もう動けるのかい?」

「はい…赤岩さん参加して欲しい事って何ですか?」

「サブローさんの墓参りだ…どうしても全員揃ってからにしたかったんだよ」



~~~霊孤山・郊外墓地~~~

 遺骨が入っている訳では無いが、サブローの母は立派に役目を果たした息子をここに眠らせたいと言う事で、彼の私物の一つを遺骨の代わりに入れてるのだという。

「赤岩事務所計6名、宝物蔵の守護者サブローに向け、黙祷!」

 彼の合図で皆目を閉じ、手を合わせ誰も言葉を発さず彼に安らかに眠るよう、冥福を祈り短い期間と言えど、剣の道を説き人としての勉強をさせてもらった、彼に精一杯の感謝を伝える。

「(サブローさん…ありがとうございました。僕…もっと強くなります)」

「達者でな…」


 祈った後にサブローさんの声が聞こえ、辺をキョロキョロと見渡してしまう。

「どうした仁君?」

「いっいえ…サブローさんの声が聞こえた気がして」

 そう言うと赤岩さんは、微笑み頭にポンと手を置き国主館に戻ろうと提案した、皆それを拒否するはずもなく歩き出した彼の背中を追うように、ゆっくりと足を向けていく。


「(さようなら…サブローさん。ありがとう)」

 それだけを再度告げ、彼の墓前を後にする。



~~~国主館・九尾の間~~~


「そうか…サブローの墓に行ってたか。こちらも今回のお主らの報奨の準備が整った所じゃ。」

 九尾様は赤岩さんを前にしても、以前とは異なる凛とした立ち振舞で、ナナさんに合図を出す。すると一つの小袋を、こちらに持ってきて赤岩さんの前で開いた。

「赤岩様、今回の報酬金貨計50枚・銀貨78枚でございます。お収めください」

「ありがとうございます。確かに頂戴致します。ミア」

 彼は礼を言うと共に、ミアさんの名前を言うと彼女は手を付き、深々と感謝の意を表すとその小袋を手元に下げる。

「…ジン…アスタ、一つ言いたいことが有るのじゃが」


 九尾様はこちらに視線を向け、年頃の少女らしい可愛らしい笑みで言葉を告げた。

「今度は遊びに来い!我はいつでも歓迎するからの!」

 彼女は別れを惜しむ事は無かった、なぜなら次会う為の別れなのだから、サブローの事もあり憔悴しているのかと思ったが、僕が眠っている2日の内に何か有ったのか、定かではないが少し安心した。


 返事を返した僕とアスタちゃんの後に、九尾様は赤岩さんに向け言葉を発した、少女とは思えない威圧感と貫禄で。

「アカイワ…今回の事は致し方ないとは言え、一人の人間としてそなたを完全に許す事は出来ん。」

「…承知の上です。」

「貴殿にはサブローの件で一つ咎を背負ってもらう。サブローを殺した罪として、厄災を振りまくあの魔族達を討ち滅ぼせ!…我はサブローだけでなく、もう大切な者を失うのは嫌じゃ。我も出来る助力はしよう、だから…勝てよアカイワ」

 泣き出しそうな声を抑え、彼女はサブローをただ殺したとは思ってはいない、だが最愛の男が死んだ現場には居合わせていたのだから、サブローが死んだ原因『魔族』を打倒することを、アカイワさんに誓わせる。

 赤岩さんその事をサブローさんを手に掛けた時から、既に覚悟して居たらしく魔族を倒すと言う事は、言われるまでも無かったそうだ。だが彼女と共有することにより、その覚悟がより一層形を成し、助力を得れた事は何よりも代え難いものになった。


 そうして僕等は国主館を九尾様とナナさんに見送られ、犬車に乗り込み船着き場へと向かっていった、長いようで短かった獣人国に分かれる為。


~~~船上~~~


「仁君、傷の具合はどうだい?」

「リューコさんの治療魔法で大丈夫です!…痛た」

 無事なのをアピールしたが、やっぱり背中の傷は少し痛む。

「獣人国に仁君を送って、正解だったな。俺が思っていたよりも駆け足で成長してくれて嬉しいよ。」

「そっそうですかね?」

 えへへと言わんばかりに、憧れの人から称賛を受け頬が緩むが、すぐ後頭部を叩かれ表情を締め直す。


「何が成長したんだよ、ヘタレはヘタレのままだ。まだ鍛え方が足りん」

 叩いたのはギリアムさんだった、彼も会話に参加してきた様で、僕を挟む形で赤岩さんと口論を始める。

「またお前はそう言ってんのか?」

「ふんっ、事実を言ったまでだ。あそこで俺が来なかったらチビもこいつも死んでたんだからな、ショージとか言うクソガキすら倒せないなら、まだまだ鍛錬の必要があると言ったまでだ。」


 そう彼らの口論を聞いていると、後ろからパタパタとこちらに走る少女が、緑髪の白い猫耳と尻尾を携えたアスタちゃんだ。

「ジン君、はいこれ!」

 船の販売所で売っていたという、白いアイスクリームをこちらに一つ差し出し、一緒に食べようと甲板の端にある椅子を指差し手を引いてくれる。


「ジューン…ちょっと荷物持ってよー…」

「うるせぇなぁ…そんな後先も考えずバカバカ買いもんするからだろ!」

 大量の荷物を抱えたリューコさんに、赤岩さんは文句を言いつつも彼は1番大きなリュックサックをひょいと持ち上げ、仕方ないと言わんばかりに手を貸す。

 リューコさんと一緒に来たミアさんも、その光景にはクスクスと笑っておりとても幸せそうだ。

「なぁリューコ、仁君とアスタあんな仲良かったっけ?」

「さぁ?でも獣人国で色々有ったからね~、少なくともアスタちゃんはジン君がお気に入りなんじゃない?」

 


 甲板の柵にもたれ掛かり、こちらを見る4人は何やらクスクスと笑っている、あのギリアムさんすら少し頬が緩んでいた。

「なっなんだろ?何か変な事しちゃったのかな?」

 僕はその原因はわからず、隣のアスタちゃんと一緒にアイスをゆっくりと食べていく。

「ん?ししょーはいっつもニヤニヤしてるよ?」

 僕の独り言を拾ったのか、アスタちゃんは大人達の表情を見ると、赤岩さんはいつもあの表情だと言っている。

 そこからアスタちゃんとアイスを食べると、松葉杖を付きながらも彼女と一緒に船の中を散策していく。痛みも無理な体制にならなければ、あんまり気にならない。



 これから僕達は、イーリア国に有る屋敷に戻るんだ、今は悲しんでいる場合じゃない、これからに備えしっかりと鍛えなければいけないのだ。


~~~???・研究所の様な施設~~~


「フェミリア、ショージが壊れたから治してくれるかしら?」

 ロザミアはズタボロの、小汚い雑巾の様になった庄司をフェミリアの元へ投げ捨て、彼女は眠いと言い寝室に戻っていく。

「…何をすればこんなにも、壊れるのかねぇ…、ショージ意識は有るか?」

「うるせぇ…ギリアム!!あの野郎いつかぜってぇぶっ殺してやる!!」

 自分が敗北した、ギリアムへの憎悪を激しく募らせる庄司は、フェミリアの使役する骸骨達にベットへと運ばれていく。

「いくら魔族の体で、再生力が凄まじいと言ってもね、君の体は吸い取った血液を攻撃や回復に回す、魔力切れでは吸うことも戦うことも出来ない、それはわかってるだろ?」


 フェミリアは困った様子で、庄司の体にメスを入れていく、ロボットを修理する様に庄司の体を手術していく。

 メスを入れられているのに、全く痛みの様子や叫びを上げたりしない庄司は、痛みを感じないのか、ただマッサージを受けている様におとなしい。

「おいおっさん、治るのに後何日かかる!?俺は早く血を吸ってあのギリアムとか言う奴をぶっ殺さなきゃならねぇ!!」

「まぁ落ち着きたまえ、傷の具合も酷いし吸血器官にも少し手を加えなければいけない、それに所々光魔法が混ざっている、これを完全に除去するまでは、戦ったとしても君はまた敗北する事は必須。今は体を治す事に専念しなさい」

「…ちっ」


 苦虫を潰したように、庄司は安静を受け入れる、それに光魔法の粒子を取り除かなければ次に浴びた時、体が崩壊する原因にもなりかねない。

 世界最強のアカイワジュンと、その部下である光魔法のジンも今回の衝突で、魔族達からすれば強敵となり得る要素を持った少年という事を知り、一筋縄でいかない事を予見する彼ら。




 それぞれの悪と善の衝突、勝利の女神はどちらに微笑み、世界は人か魔族どちらの手に渡る。

 




 次回から新章突入。To Be Continued

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