第3-21話 運命の1分間
縦からの斬撃『唐竹』という、切り方のひとつなのだが、サブローの体は魔人化しており、単純な数値上でも通常時の筋力の3倍は有る、それを真っ向から受け止めたギリアムは、珍しく頬に汗を伝わせ表情が強張っている。
ギリアムVSサブロー 開戦
アスタは氷壁内で、瀕死になっている仁へ液体状で緑色に濁った薬を飲ませている、それをゴクリと飲み込んだ仁は、痛みが完璧に引かないにしろ立ち上がり、なんとか意識を保てるまでには回復した。
「ア…アスタちゃん…ありがとう…」
「ううん…でも、今はサブローさんがなんか変なの!」
彼女の指差す方向を見ると、そこには氷剣で応戦するギリアムに、容赦など一切無い攻撃に、紫の煙を体から放つサブローが映る。
「チビ!ヘタレはどうなった!?」
サブローと切り合いながらも、アスタに仁の安否を質問するギリアム。
「大丈夫!今起きたよ!」
「ならチビ!街に行け!アカイワに知らせろ!俺でもこいつを抑えきれるかわからねぇ!!」
そうギリアムが告げると、仁とアスタの背後にある氷壁の一部が溶け通るスペースが出来ていた、アスタは仁にそこで待つよう言い直ぐ様街へ向かい走っていく。
アスタを追うように、サブローは向かうがギリアムが盾となり、アスタの進路を確保していく。
叩きあうお互いの剣は、本来火花が散るのであろうが、ギリアムの氷剣が削れ火花ではなく、氷の粒子がぶつかり合う度に飛び散っている。
互いの剣が混じり合い、鍔迫り合いとなるがサブローは氷剣の上に自身の剣を滑らせる様に走らせ、ギリアムの首をはねようとするが、ギリアムはがら空きになっている胴へ蹴りを入れ一時距離を取っていく。
サブローの剣が振り下ろされた衝撃により、辺の小石は飛沫の様に飛び散りギリアムの体に打ち付けられていく、そうしてギリアムの体制が崩れたのを見計らい、サブローは即座に『左薙』という、左側からの一直線の斬撃。
これをギリアムは、即座に氷剣を形態変化させ氷盾を作り上げガードし、右手を地面に付きまるでブレイクダンスをするかの如く、踵でサブローの頬を撃ち抜く。
口の中が切れ中に貯まった血を吐き出したサブロー、顔色が悪く汗もただならぬ量を掻いているギリアム。互いに睨む形で膠着するが、先に音を発したのはサブローだ。
剣を腰に携える鞘に収納し、腰を深く深く落とし『抜刀』の体制を取る。伊達にも神速の剣と言われる、彼の抜刀は威力も速度も通常の魔人など比較にならない、破壊力を生み出すのは明白。
剣が抜かれその鋼の刀身が月夜に照らされ、姿を表した時には既に遅かった。ギリアムが切られる、左横腹から右肩に掛けての『逆袈裟』という斬撃が来る。
「(チッ…俺は…ここでリタイアか…)」
激しい怒りを瞳に宿し、サブローを見つめていたギリアム。その瞬間サブローの体は、何かの衝撃を浴びゴロゴロと転がっていく、彼は脇腹を押さえ出血している箇所をかばうが、その表情は一切の無反応だ。
「ギリアムさん…大丈夫…ですか?」
右手から構えるジキルの銃口からは、魔力の残り香が硝煙の様に漂っており、彼が発砲したものと言うのは明白だ。
「ヘタレ…何故、傷の手当をしていない。馬鹿かお前は!!」
自分よりも怪我の具合が酷い、仁へ対して彼は激情するがギリアムも戸惑った、自分を助けた人物があの弱虫で、何かあれば泣きそうな顔をしていた「ヘタレ」ではなく、決意を決め何処かアカイワジュンと似た雰囲気を醸し出す少年に。
「…ギリアムさん…僕も…戦います。ギリアムさんにはまだ教えて欲しい事が…いっぱいありますから」
「ふんっ…馬鹿が…ヘタレ!足だけは引っ張んじゃねぇぞ!タイムリミットは1分だ!1分もあればアカイワのクソッタレが来る!それまでなんとしてもあの狐を止める!」
「はいっ!」
そうして互いに覚悟を決め、タバコに火をつけるギリアム、銃口をサブローに構える仁。
「また…賊が…一人…増えたで…ござる…か」
やはりサブローの顔を見ると、あの楽しかった稽古や、彼と共に食した塩だけの握り飯、九尾も交えて笑いあった庭での日々…、それが仁の脳内で巡って居るも目の前のサブローは、一切のためらいを許さない。
ギリアムは吸っているタバコの効果により、少し魔力が回復し再びサブローへと前進していく、それに応じるかの如くサブローも剣を構えギリアムと切り合いに入る、そして2人の距離が離れると、サブローの着地に合わせ仁が魔弾を後方から発射し一切の静止を許さない追撃。
そうして、打ち合いが続いた頃に、聞き覚えの有る少女の声が聞こえてきた。
「なにを仲間割れをしてるか!!お主ら!!」
後方に有る宝物蔵から、九尾の声が聞こえる、とても怒ったトーンで普段の彼女からは想像出来ない剣幕。
「九尾様!危ないです!下がって!」
「九…尾?」
九尾という言葉に反応した、サブローは一旦その場で動きを静止させる。そして宝物蔵の前に立つ一人の少女を凝視する、その真っ黒に染まった瞳で。
「ふざけるな…賊め等!!!九尾様はまだ4つの幼子!!九尾様の名を語る愚か者め!!!!」
サブローは目にも留まらぬ、神速の脚さばきで九尾の背後を取り、その青白く月に照らされる鋼の剣が九尾に振り下ろされるその寸前。
仁は走り出しており、九尾に抱きつくよう庇うとその凶刃は仁の背中をいとも容易く切り裂いた。
大量に溢れ出る鮮血、切り裂かれた箇所はパックリと開いており、重症なのは誰の目でも解る。だが彼はその背中を九尾に向け、顔は凶刃を振り下げたサブローを見つめていた。
「サブローさん…何が有ったか解らないけど…何故こんな事をするんですか!!!」
滴る血など気にせず、激痛に耐え大声を張り上げる仁、だがその声はサブローには届かない。
「ジ…仁!!お主…背中が…」
九尾は青い顔をし、仁の傷口をまじまじと見て、怯えにも似たような表情だった。
「九尾様…ぐはっ…け…怪我は?」
「馬鹿者!人の心配をしている場合か!!」
にっこりと笑い、微笑みを九尾に向ける仁。
その場を壊さんとばかりに振り下ろされる、一撃を仁は2丁の拳銃をクロスししっかりと受け止める、仁は自分の体だけ重力が増えたのかと錯覚する程の重圧を防ぐ。
背中の傷口からは、多量の血が先よりも増し地面に滴っているも、仁はその守る力を緩めない。
アカイワジュンが到着するまで、残り30秒。
彼らは生き残ることが出来るか。
To Be Continued




