第3ー20話 狂いだした運命の歯車
サブロー対ロザミア
ジン&アスタ対ショージ
この二組の戦闘は、先よりも苛烈を増している。
「仁…俺は今猛烈にお前の血が吸いたい。寄越せよ」
距離を取り静観する仁だが、銃を握る手は震え背中にはグッショリと汗を掻き、目の前の庄司の変貌ぶりに恐怖した。
頬肉は割れその割れ目からは、赤い鮮血が中で鼓動を打つように脈打ち、額には奇っ怪な文字が1文字浮かび、真っ赤に点滅している。
頭髪の生え際にも、血液が渡っているのか赤黒い印象だ、とても魔人とは思えない…『魔族』にしか見えない…。
雄叫びを上げ突進をする庄司、軌道は直線状なのだが問題は、先ほどとは一線を画す速度。牽制をしようとする仁は銃口を彼に向けるが、間に合わず首を捕まれそのまま小石の敷き詰められた、地面へと激突させられる。
「(痛っぅ!!…、肋骨が…2本か…3本、逝った!)」
痛みで自分が骨折したと、瞬時に理解した仁は、呼吸が乱れとてもじゃないが痛みで立ち上がれる様な状態では無い…
庄司はそのまま右足で、仁の胸を踏みつけ固定すると、爪を鋭利な刃物の様に伸ばし仁の右二の腕を貫く。
「てめぇは俺に土を付け、逆らい、侮辱したクソ野郎だ。痛みを与えじっくりと吸血し殺してやる!!!」
一方その頃サブローは、激戦の末にロザミアとの間合いを詰め、斬りかかろうとした時、彼女はノーモーションで突風を作り上げサブローを吹き飛ばす。
激しい風にサブローは耐えきれずに、そのまま壁にめり込むよう激突してしまう。
頭や体の至る箇所から出血し、僅かに動く着物の隙間から見える胸筋で、呼吸はしているのが解るも、意識は朦朧とし何より多量の出血をしている。
彼の唯一使用出来る魔術【守護の陣・狐火】という、火柱の防御結界も姿を消し、完全に意識は消失する。
「あらあら…結局貴方も同じだったのね。まぁまだ死んでないだけ、骨が合ったと思うわ。…ふぁ~あ…ショージ私は美容の為、早く帰って睡眠を取りたいのだけど」
ロザミアは退屈そうに目を擦り、眠気を庄司にアピールしている。
「あぁ?もう少しゆっくり食事させろよ。こいつだけは時間を掛けて食いたいんだよ」
庄司は仁の胸を踏みつけ、グリグリと足を動かし仁を痛めつけるのを楽しむように、ゆっくりと吸血を爪から行っている。
これには反撃する手立てが無く、仁は意識が飛んでいきそうになったその時、月を背景に此方に向かう白いコートの青年が一人。
指をパチンと弾いたと思うと、突然ロザミアを覆うように氷壁が現れ、空から庄司の方へ向かい氷柱が幾つも発射される。
回避をせざるを得なくなった庄司は、爪と足を仁から離し直ぐ様左手の大剣を、利き手である右手に持ち替え警戒する。
この窮地に駆けつけたのは、そう『ギリアム・ツェッペリン』だ。
その逞しい2本の腕で、瀕死の仁を抱え上げタバコを咥えたままアスタの所へ運んでいく。
「ギ…ギリアム…さん。来て…くれた…んですね」
「あぁ…それと、喋んな」
ギリアムの腕には、必死に堪え職務を全うしようとし、傷ついた後輩の姿。仁の事をアスタに任せ薬の入った袋を渡すと、2人の周りに分厚い氷壁を作り上げ、庄司の方へ視線を向ける。
「お前…あん時のクソガキか…それに、3年前殺したはずのアバズレまで居るとは。ヘタレもつくづく不幸なもんだな」
タバコの煙を口から吹き出し、腰を落とし右手を前に突き出す、そして左手を引きまるで正拳突きでも放つかのような構えで、右手をクイッと動かし庄司を挑発する。
「ギリアムとか言ったか?てめぇにはあん時の借りが有ったよなぁっ!!もっと先かと思ったが、幸運だぜ。今ここでぶっ殺せるなんてな!!」
大剣で空を切り、ギリアムと切り合いを開始しようとする庄司だが、ギリアムの瞳には最初から庄司等映ってはいない、映っているのは氷の中で不気味に微笑むロザミアただ一人。
縦に切りかかった庄司は、ギリアムの振り上げた右足で見事に顔を撃ち抜かれ、そのまま鳩尾ちへ向け掌底を叩き込まれる。あまりの衝撃に庄司は、内臓が破裂し口から多量の血液を吐き出す、そして接触している掌から巨大な氷柱が作り出され、一気に壁へ激突させられてしまう。
「あらあら…流石は処刑人と言った所かしら、ショージをこうもあっさり退けるなんて。人間にしては少し素敵よ」
ロザミアを覆っていた氷塊は、内部から発生した突風によりいとも簡単に吹き飛ばされ、中から妖艶な笑みを浮かべクスクスと笑っている。
「アバズレ…死んだやつがネチネチと鬱陶しいぞ。」
ロザミアは屋根から降り、ギリアムとの3年ぶりの再開をするも、ギリアムは肌で感じていた「3年前とは段違いで強くなっている」と。
威圧感・不気味さ・そして空気を漂う邪悪な魔力、どれをとっても3年前とは比較にならない、だが成長したのはギリアムもジュンも同じだ。
「ショージは貴方と相性が悪いみたいだし、私は貴方の相手をするの面倒くさいし…どうしましょう?」
彼女は「いつでもお前を殺せるぞ」と、言わんばかりにギリアムを凝視している。そして両手をパンッと叩き、何かを閃いた様に闇の中を漁りだす。
「良いこと思いついたわ。この狐に相手をしてもらいましょう、私は眠いから帰るわ。」
気絶するサブローの元へ歩んでいき、口を開けさせると何やら植物の種の様な物を口に入れた。
その種は深い紫に染まり、種と同じ様な煙を纏っていたので、普通の種ではないとギリアムは警戒する。
飲み込んだサブローの体は、電気ショックを受けた様にビクンと跳ね、それ以降動かなかった。
「私からのプレゼントよ、楽しんでね処刑人さん」
そう言うとロザミアは、自分はまだ戦えると血反吐を吐きながら騒ぐ庄司を闇の中へ放り込み、自身もその闇に入り行方を暗ます。
そうして2人は去ったが、不気味な気配が庭全体を包み込んでいる、その正体の方へ目を向けたギリアムが見たのは、体から紫の瘴気を上げ瞳の白い部分が黒に変色したサブローの姿だった。
「お前…あの狐…か?」
姿形は同じなのだが、前に見た気配とは全く違う。
「…お前…達…が、館に入った…輩…か?」
妙に詰まった言葉で話すサブローは、ギリアムを見つけると即座に切りかかった、以前とも違う段違いの速度にギリアムは驚き、氷壁を作り出し危機一髪で防御に成功した。
宝物蔵守護者 サブロー VS 氷鬼の処刑人 ギリアム・ツェッペリン
今始まる
To Be Continued




