第3ー13話 大人組ちびっこ組
~~~九尾の間~~~
九尾とも少し打ち解けれたジュンは、フルグラの引き起こした事件から死亡までの流れと、庄司に出くわした件をギリアムから聞いていた。
「ここまでが、俺の見た現状だ…それにお前との話しを括り付けると、やはり「魔族・ロザミア」の復活は確定的だな」
「そうだな」
「奴単体の戦力自体も恐ろしいが、それと同等の奴が他に一人、それからショージというガキ、戦えば3年前以上の被害が生まれる。どうするんだ…アカイワ」
手を組み首を捻りながら天井を見つめ、うなだれるジュンは怯える九尾の横に座るナナに向け口を開いた。
「ナナさん…ちょっぴり九尾ちゃんに席を外してもらうことは可能かな?」
「…何故でしょうか」
「…こっから先は血生臭い話だ。うちの大人組、それにナナさんは良いとしても、アスタや仁君、九尾ちゃんにはとても聞かせられない。話し内容やこれからの事を考えるとね…」
ナナは頷くと九尾にいつぞやの様に、アスタ・仁を連れ外で気晴らしして来るように伝えると、九尾は周りの気配を察したのか黙って部屋の外に2人を探しに行った。
「ナナさん…すまないね無茶言って」
「いえ…それに九尾様はまだ子供、今は私や年寄りを中心にやっていますが、いつか遠くない将来この大陸を治め、平和の一旦を担う方…。あの子達には出来るだけ危険には触れてほしくありませんから」
「はい…俺もその気持ちです。だから今からの計画…奴らの手の者が何処で聞いてるか解らない、計画を知っていれば必ず標的にされる。」
これからジュン達が話し、動いていく為の計画。世界全土を巻き込む可能性の孕んだ戦、計画を知らないのは酷ではあるかも知らないが、知っているなら弱い子供達が真っ先に狙われるのは必然、生き残る可能性が高いならそちらに賭ける。ジュンやナナの様に大人達は、その方針で固まっていた。
人の気配がこの部屋の周囲に無い事を確認すると、ジュンは話しを開始していった。
~~~国主館・庭~~~
仁は庭の階段にて、ジュンからの土産を開きアスタやサブローと一緒に食べていた。
「ん~非番と言っても…何をすれば良いんでしょう」
「今日は拙者も稽古はするなと、ナナ殿から釘を刺されているでござるからな…すまぬ仁殿」
「いっ良いですよサブローさん!」
サブローは昨日の夜の内にナナから、仁との稽古を明日は控える様にと言われ、サブロー自身も蔵の警護以外にする事は無く、正直暇だったのだ。
「ジン君!ししょーのお土産おいしーね」
口の周りにあんこを付け、饅頭を頬張っているアスタは、仁にも一つと差し出している。
茶が切れたので、取りに行こうとサブローが立ち上がると、廊下をパタパタと駆け寄ってくる小さな足音。
「おぉジンにアスタ、ここにおったか!」
すっかり元気を取り戻した彼女、着物も普段の夕日色のきらびやかな物で無く、町人が着ている様な質素なものに変えており、金髪の綺麗な髪も短く結んでいた。
「おや?九尾様…その服はどうしたので?」
「ふふん…我は今から仁やアスタと共に街に行くのじゃ!良いじゃろ!」
「はぁ…ナナ殿から許可は出ているのでござるか?」
サブローは少し呆れたように、九尾に質問をするも彼女はその薄い胸を張り、自慢げに「許可は貰った」と誇らしげに言っている。
「ほぉ、あのお硬いナナ殿がよく許してくれたでござるな」
「何か大人だけで話す事が有ると言っていたな、それにジンやアスタを連れて行っても良いとアカイワから言われておるのじゃ!」
眼の前で話す九尾に、サブローは膝を曲げ九尾の自慢話に目線を合わせ、うんうんと話しを聞いている。
「なっ…なんなら、サブローお主も、いっ一緒に行かんか?」
「…すみませぬ九尾様…拙者は蔵の警備がございますので」
少し悲しみの篭った瞳で、彼は九尾の誘いを断ってしまう。
「べ…別に良いじゃろ今日くらい!…」
着物の裾を握りしめ、少し泣き出しそうな顔をうつむいて隠そうと、九尾は言葉を続けようとしていたがサブローが遮る。
「申し訳ございません九尾様…、この蔵警護の任は、拙者の先代…父上から受け継いだ誇りある任、父上から譲り受けたこの仕事…いかな理由であっても離れたくないのでござる」
その言葉を彼から聞いた九尾は、もう何も話すことは無いと駆け足でアスタと仁の手を引き、急ぎ足で走り去っていく。その彼女の瞳には、少しの涙を孕んでいる様に見えた。
~~~華和省・中央商業通り~~~
3人は一軒の団子屋に腰掛け、二串一皿になった三色団子を九尾は乱暴に頬張っている、食べながらサブローに対し愚痴をいくつも零していた。
「まったく!…あやつはナナにも負けん堅物じゃ!!アホ!バカ!偏屈者!!」
この愚痴に付き合いながら、茶をすすっている仁の元に注文した「みたらし団子」が到着したが、そのみたらし団子も怒りに任せた九尾に強奪されてしまう。
「僕の…みたらし団子…」
「ふん!」
「ねぇ九尾ちゃん…」
仁がショックを受けている横で、アスタは口に自分の髪色と似たような色の、よもぎが練り込まれたヨモギ団子を頬張りながら九尾に声を掛けた。
「九尾ちゃんって、サブローさんの事大好きなんだね!」
悪意など全く皆無の、純粋な笑顔で彼女に声を掛けると、さっきまで怒っていた表情は困惑し、茹でたタコの様に顔から耳先まで真っ赤になり、尻尾は天を向き爆発したように広がっている。
「な!ななな何を言うか、アスタ!わっ我が、あっあんな偏屈者の事なにょ!」
焦りのあまりに、高速で動かす舌を噛んだ九尾は口の激痛に悶え、バタバタと悶える彼女を見ると、アスタはキョトンとした顔で「違うの?」と再度追い打ちをかけた。
「(あー…アスタちゃんの言ってる、「好き」は多分loveじゃなくてlikeだろうなー…)」
先程までパタパタと慌てていた、九尾はついに観念したのかその場に静かに佇み、両手を膝の上に置き「好きだ」と言葉にした。
「そっか~九尾ちゃんもアスタと一緒だ!アスタもししょーやミアちゃんの事大好きだし、リューコの事も大好き!…でもギリアムはちょっと嫌いかも…」
九尾は一緒にするなと、アスタに言うがアスタはその言葉の意味を理解していないのか、いつもと同じ無垢な笑顔で笑っている。
「そっそそれなら!アスタはどうなのじゃ!?アスタは恋をしたことは無いのか!そっその…特別な…好きっていうのを…」
どうにか一矢報いると言わんばかりに、九尾がアスタに質問をするが、彼女は言っている自分が恥ずかしくなったのか、言葉の最後が徐々に小さくなりモゴモゴと言っていた。
「ん?特別な好き?うーん…アスタは無いかな?」
暫く唸って考えた彼女だが、おそらく経験した事ないのだろう、ピンと来ない彼女は無いと答えた。
そうして仁達は、恋に関しての話しをしたり、色んな店に顔を出し見て回っていた。
~~~国主館・庭~~~
「サブローさん…、どうか俺達に力を貸してくれないだろうか」
庭にて素振りをし、何かを取り払う様に没頭するサブローに、ジュンは頭を下げ助力を頼んでいたが、サブローは肩から掛けた手拭いで顔の汗を拭きながら答えを返した。
「…すまぬ。拙者にはこの蔵を守る仕事がありますので、貴殿と共に戦場に立つことは出来ぬでござる。誠に申し訳ない…」
「…それなら仕方ないですね、わかりました」
ジュンが庭から立ち去ろうとした時、サブローは声を掛けた。
「アカイワ殿、貴殿は何故…何故そんなにもお強いのに、拙者の力を求めたのでござるか。話しを聞く限り拙者には、ロザミアという女子以外に貴殿が苦戦するとは到底思えんが…」
「…俺はな「俺を殺せる」可能性を持った奴に協力して欲しいんだ…、いつ何処で何が起こるか俺にも解らない。それに奴らが宣戦布告してきた以上、俺を倒す算段は付いている。それがサブローさんに声を掛けた理由さ」
男二人で静かに、何者の邪魔無く会話を進めていく。
「自身を殺す可能性を持った者…、アカイワ殿死ぬつもりか…」
「いいや…死ぬ気は毛頭ないよ。俺には妻も仲間も居る、死んでる暇なんか無いよ。でも…俺も不死じゃない、それに戦場に身を置く以上俺を超える奴がいつ現れてもおかしくない、そいつが悪だった場合俺の代わりに世界を守ってくれる奴を、こうして頭下げて探してんのよ」
サブローは爽やかに笑うと、ジュンの覚悟を感じ取ったのかもうそれ以上言葉は発さなかった。
To Be Continued




